毒
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楽しんでいただけると幸いです。
暁妃は困惑していた。ここ最近帝や皇后が自分にかまうことをやめ、我が子を見るような目で見てくることに。
ある日暁妃は庭の池の石橋を1つずつ片足で跳んで遊んでいた。その時にそれを見た帝がやってきて「暁妃、危ないぞ」とまるで父親のように言った。それに暁妃は怖気立った。
翠ならばわかる。彼は最初に出会った時から妾に優しかった。しかし急に態度を変えた帝と皇后は?
皇后には先日「我が家に代々伝わる宝飾品よ」と暁妃に大粒のトパーズが輝く指輪をくれた。理由を尋ねると皇后は笑って言った。
「だってあなたはもう婚約者がいるんでしょう?」と。
気味が悪くなり、暁妃は指輪は天界へ持っていけないと弁解して皇后が何か言っているのを無視して小走りで後宮をでた。気色が悪い。それが暁妃の感想だった。
そのような理由で暁妃はここ数日侍女も入れずに部屋で煙草を吸っていた。帝釈天と毘沙門天は顔を見合わせた。人間の心理は神には分からない。暁妃はまだ人間の肉体と心を持っている。まあ、どうしようもないと2人は諦めた。どうせ近々暁妃は肉体を棄てる。
暁妃はコン、と灰を灰皿に捨て、外を見ていたが、ふと阿弓が持ってきた菓子を見た。そして1つ手に取り桜色のその砂糖菓子を帝釈天たちが止めるのもかまわずに見て、口に入れ噛みしめ飲みこんだ。
阿弓が菓子皿を引き取りに廊下を歩いていると焦ったように壁からヌ、と出てきて頭に手をやった帝釈天が誰かを探していたので阿弓は尋ねた。
「帝釈天様、ご機嫌麗しく。いかがなさいました?」
「すぐに癒し手を呼んでくれ、暁妃が毒を食べた」
そうして騒動になり、以前暁妃を治療した癒し手たちが集まって暁妃の治療を始めた。毒は菓子に入っていたらしく、毘沙門天の手によって菓子を吐かされた暁妃は胃洗浄と解毒を受けた。毘沙門天は目に見えて狼狽えていた。阿弓たちは神でも狼狽えることがあるのかと暁妃の手当てをしつつ珍しそうに見ていた。
その時にやはり結界はビシリとヒビが入り、今度は少しずつヒビから隙間が広がりパラパラと結界の破片が落ちて来ていた。人々は空を見、不安のまま話し合った。
帝と皇后は驚いてなんとか隙間を閉じようと祈っていたが、暁妃ほどの力を持たない彼らでは現状維持が限界だった。
軍も驚きすぐに出動した。外から異物が入ってこられては困る。待機している間に暁妃が毒殺されかけ今は意識不明という情報が入り、春風少佐と七緒大尉は「クソ」と机を叩いた。
暁妃が死にかけるとこうなる、今更知った事実だった。
そのころ城では暁妃の治療と共に誰が毒殺しようとしたのかを探していた。帝釈天と毘沙門天も四獣を呼び城の人間を調べていた。
自殺をしたら暁妃は天界へ行けない。暁妃は知っていて毒を食べた。だから必死に探していた。
侍女や召使、家臣に庭師に料理番まで調べたが見つからず、頭を抱えていた。暁妃が自ら毒をあおったわけではないが、知っていて食べたのでは話が変わってくる。
暁妃は未だ意識不明である。翠も暁妃の手を握り呼びかけていたが、暁妃は起きることは無かった。
そのようにして1週間、2週間と経っていくとだんだんと軍にも皇后や帝にも無理が出てきた。少佐と大尉の力がだんだんと失われ、焦り、両陛下も結界の維持に無理が出てきた。
そしてそこでようやく翠が気づいた。そういえば桜花はなにをしている?
翠が護衛をつけ地下牢へ向かうと牢の扉は開いていてそこに桜花はいなかった。
翠は驚き「まさか」と城の者たち皆に桜花を探すように言ったが最早見つからず、召使の1人が「夜に男女が外に出るのを見ました。ただ召使の者かと思い込んでいて」と震えながら言い、翠は額に手をやり、国中に桜花の人相絵を飾るように言った。
そしてもう一度最初から調べなければならないと考えた。誰が暁妃の菓子に毒を盛ったのか、桜花はどうやって牢を出たのか、そしてーー桜花はなにをしようとしているのか。
翠は帝釈天と毘沙門天に暁妃を頼み、自室に戻った。
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「ね?やはりフンババの魔術は恐ろしいのですわ、ギルガメシュ様、雪之丞様」
かつらを被り、化粧を施した桜花は自分を牢から出してくれたギルガメシュと匿ってくれている雪之丞に言った。2人は頷き、外を見た。結界が裂け、黒い外が見えている。
「毒を混ぜましたけども、あの程度でフンババが倒せるとは思いませんわ。ギルガメシュ様、雪之丞様、早くあの魔物を倒さなければ」
「そうだな」
「そのとおりだね。あの女は父の力を奪った女だ。倒さなければ」
3人は外を見、笑い合った。
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