目が覚めて
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楽しんでいただけると幸いです。
暁妃が香の匂いがすると思い目を覚ますと、癒し手のほかに帝釈天と四天王、翠と阿弓と彩也子、そして珍しく帝と皇后がこちらを見つめていた。
癒し手の1人が年老いて皺だらけの手を暁妃の額に当て「熱は下がりました」というと皆はホ、と安堵した。暁妃が起き上がり気を失った後何が起きたかを問うと翠が答えた。
「桜花と名乗る魔物は地下牢に入れてある。猿ぐつわを噛ませて。そして春風少佐もーー」
「春風少佐は桜花に操られておった。牢から出してやれ」
「いいのか?」
「桜花は人の心を操る魔物よ。あやつには逆らう術が無かった。あの時は誰しもが桜花を姫と思っていたからの」
「ーーと、いうと?」
「帝釈天、桜花の魂はいくつあった?」
暁妃の質問に帝釈天が「陰陽あれど魂は1つ」と言った。暁妃はそれを聞き、「そうか、では桜花は元々ああいう性質の人間なんじゃな」と言って布団に横になった。
訳の分からない翠が「暁妃」と声をかけたが、暁妃は「寝かせてくれ」と目を開かなかった。翠と両陛下は顔を見合わせたが、まだ体調がよくないのだろうということで席を外すことにした。
そして春風少佐を牢から出し、桜花はこれからも地下牢で暮らすことになった。せめて暁妃が全快するまでは。両陛下は突然可愛い娘を失ったことに悲しんでいた。
愛らしい桜の妖精のような桜花がいなくなってしまった。緋色はポロポロと涙をこぼし、帝に慰められていた。
帝は考えた。このようになるならばお告げに逆らってでも双子共に育てればよかったと。暁妃は両親である両陛下をもちろん親だと思ってはいないし、感情も薄く笑顔を向けることもない。
氷のように固まった顔で言われたことに静かに答え、大した会話もなくさっさと部屋に戻っていく。
当たり前のことではあるが、このような態度をとられれば元々可愛いと育てていた桜花の方をより可愛いと思うことは必然であった。
その可愛い桜花の正体はこれであると暁妃はあばいた。帝は焦っていた。桜花の髪と肌の色を変え、心を操る力を桜の木を使い封印させたというのに。
暁妃はなにかを調べていると帝は考えた。そしてたぶん暁妃は朕こそが諸悪の根源であると考えていると察し弁明を考えた。
あの日暁妃を地下牢に閉じ込めた理由。虐待と暴行を見て見ぬふりをした理由。神の怒りが来る前に暁妃に弁明し許しを得ねばならない。帝は汗を拭い、自分の部屋でそっと祈っていた。
夜、月の光が差す中で暁妃はそっと起きだした。そしてポ、と空中に光を灯し帝釈天と毘沙門天に言った。
「帝は誰の話を信じて妾を地下牢に入れたか調べてくれ。妾は翠と皇后の中身を調べる。くれぐれも」
「分かっている、手を出すことは無い。ただしそれは暁妃、お前が傷つかなかった場合に限る」
「じゃろうな、ーーあとエンキドゥの言葉も気になる。妾が天界に行く前に暴くぞ」
「ああ、だが」
「心配はない。どうせ天界へは行く」
この世界は暁妃にとっては違和感ばかりだった。結界に色をつけて空に見せていること、人々に特殊能力があること、髪の色で差別を受けること、『なぜか大陸人の遺伝子を持っている者たちが前史時代のアジアの国そっくりの生活体系をとっていること』。暁妃には調べることが多いなとあくびをした。
「では明日から始めよう」
暁妃はそう言い、光を消した。帝釈天と毘沙門天も頷き消えた。
ーーーーー
帝釈天はそっと市井に出、春風少佐と七緒大尉の家を訪ねた。
そして2人の額に指をあてて、桜花の術を解いてやった。
2人ともが「なぜこのようなことを?」と帝釈天に問うたが彼は首を振り「誰にも言うな」と言って帰って行った。
春風少佐と七緒大尉はまたも狐につままれたような顔で首を傾げていた。
ーーーーー
こっそり調べるよりも聞いた方が早いと考えた暁妃は翌日、政界の者や家臣も集めて会議を行っている帝の元に向かった。
扉を念力で開け、赤と黒の生地に牡丹と蝶の刺繍がされた着物を優雅に風になびかせ驚いている周囲を無視し、暁妃は帝の前に立ち、言った。
「我が国の子どもが外国へ輸出されていることを知っているかえ?」
「なに?」
目を見開く帝に暁妃は顔の両側に降ろしている髪をサラリと手で流して続けた。
「主に異邦人の子どもじゃ。異邦人じゃから家族以外誰も知らぬ。中には金を貰って喜んで差し出す親もおるらしい。貿易船の奥の部屋を調べてみるがよい。まあ、このままで良いなら放っておくと良いがの。どうせ異邦人じゃ。特殊能力持ちのな」
「まて、暁妃。それは本当か?誰がーー」
「ここ最近で異邦人の治療を行うと言って施設を作った者がおるじゃろう?そやつよ。政界にも協力者がおったのう。そう、たとえば、ぬし」
そう言って踊るように身体を捻り政界の人間である男ーー小林雄一郎という男だった。に暁妃は手を伸ばした。彼は汗をかきながら「違う」と首を振った。
「私はそのようなことはなさいませぬ。帝、これはなにかの間違いーー」
「ぬしの息子もちゃんと外国人に渡したからの。異邦人じゃからのう」
「!」
暁妃の言葉に小林は青くなり「雄太!」と駆け出して行った。暁妃はケラケラ笑っていた。残された者たちは帝も含め暁妃が狂ったと青くなった。小林雄太といえば黒髪の美しい可愛い男の子であったはずだ。異邦人であるはずがない。それを読んだ暁妃は言った。
「ぬしらはどうして肌や髪や目の色を変えられる能力がないと思えるのかえ?あやつの息子は元は金の髪に碧い眼の子どもよ。自分の能力で色を変えているだけじゃ。でなければあの男はあそこまで焦って出ていくわけもあるまい?ーーさて帝」
暁妃は帝の方へ近づき、彼の前で屈んで尋ねた。
「妾を地下牢へ入れるように言った者は誰じゃ?本当のことを言わんと妾はそなたの記憶の底の底まで視なければならなくなる」
「ーー知らぬ、知らぬのだ」
「視なければならぬか?」
暁妃が笑うと帝は怯え、声を大きくして懇願した。
「視てもかまわん!朕は本当に分からぬ!覚えておらぬ!頼む、朕は良い、だから他の者ーーー」
「なんじゃ、本当に覚えておらぬのか」
帝が言い終わる前に暁妃は帝の額に指を当て記憶をすべて読んだ。すると預言者と名乗る者に言われたようだが、顔が真っ黒に塗りつぶされていて、誰かに記憶を改ざんされていることを知った。
暁妃は帝から手を離し、後ろに後ずさる帝を放って歩いて行った。
「暁妃、すまなんだ、本当にすまなかったーーー」
「ぬしら、仕事を続けよ」
「暁妃、子どもを使うのはやめろ、我が国の、」
「貴様は妾を使って軍や家臣に力を与えたじゃろう?お互い様じゃ。異邦人の密輸は自分でなんとかせい」
暁妃はなおも弁明を続ける帝の方を一瞥することもなく部屋を出ていった。
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