誕生会
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楽しんでいただけると幸いです。
全快祝いの日、暁妃は皇后からもらった絹の白と紫と薄紫色のストライプが後ろに段になって取り付けられているバッスルドレスを着て会場に行った。
ドレスはレースがふんだんに使われ、花柄の刺繍もあしらわれていた。髪は洋風に結い、花飾りをつけ、パンプスを履き、長手袋をつけ、首には緑がくれた晴天の色のような大粒の宝石がいくつも小さい透明に輝く宝石と銀の縁で豪華に形作られたネックレスをつけた。
後ろに毘沙門天と帝釈天、そして四獣をつけて杖をついて歩き扉が開かれると華族や軍の者、政界の者までもが招待されたのか皆は暁妃を見ると笑顔で迎えた。外の方には民衆もいる。
暁妃は挨拶をしながら、以前とは違う態度に思考を読むとどうも前回の誕生祝いの件と結界を張り直したことで人々の態度が変わったと理解した。百聞は一見に如かず。
実際に元に戻った結界を見て人々はやはり暁妃が結界を張っていたのだと理解し、もはや髪の色など関係なく失礼の無いように気をつけているようだった。
もう時期皇帝として見ている者もおり挨拶をしながら暁妃は内心苦笑した。音楽が鳴ると皆がダンスを申し込んだが、杖を使わねば歩けないために暁妃は丁重に断って、そっと外に出た。
そろそろ始まるころである。
少しして外が明るくなったと思うと、迦陵頻伽が降りてきて歌を唄い、花々が咲き乱れ、蛍が飛び、神々が降りてきた。
今回も盛大にやる気なのであろう神々は弁財天が琵琶を弾き、乾闥婆王も現れ楽団を率いて世にも美しい音楽を流し、星々が輝き、何事かと楽団が音楽を奏でるのを止め、皆が外に出ると、神々は酒を飲み楽しんでいた。
暁妃が18になったということもあり神々は喜んでいた。いつもよりも盛大に暁妃に美しい景色を見せ、歌と音楽を聴かせ、花々を渡した。暁妃は素直に礼を言い、馨しい香りの花々に喜び、久々に皆と話していた。
それを見ていた人々はあまりに幻想的な景色にホウと見惚れ、神々の祭典を見ていた。花冠をもらった暁妃は子どものように喜び、笑っていた。帝や皇后もそれを見、暁妃は神に愛されていると再確認した。
美しさに見惚れるのと同時に怖気立った。暁妃の17年間を神々は知っているのだ。神の怒りが来ぬように帝は祈った。
「暁妃嬢は彼らと昔からの友人なのかな?見たことがない笑顔だ」
愛染明王に抱き上げられて笑っている暁妃を見て、雪之丞は翠に囁いた。翠は「そうかもしれないね」と頷き、暁妃を見た。
暁妃は実に楽しそうである。たぶん毎年こうやって祝われていたのだろう。なるほど、格式張ったパーティーよりもああいう家族のような祝い方が暁妃は慣れているのかと翠は見て、位の高そうな神がこちらに目を向けたので翠と雪之丞は慌てて礼をし手を合わせた。
人に似ているが神である。失礼があってはならんと礼をしたが、その神は微笑み、暁妃の方へ向かっていった。どうやら失礼は無かったらしい。
翠と雪之丞が見ているとあの神に耳打ちされた暁妃が2人の元へやってきて「普賢菩薩が2人と話したいと申しておる」といい、慌てる2人を連れて普賢菩薩と呼ばれた神の元へ連れていった。性別は分からないがたぶん男であろう彼は暁妃の面倒をありがとうと言い、祭典に混ざるように言った。
曰く「暁妃の兄と暁妃の友人だから」ということらしい。
翠と雪之丞は緊張しながら大黒天から酒をもらい、飲み、この日ばかりはゆったりと過ごしている毘沙門天と帝釈天に話しかけ割合楽しい時を過ごした。
暁妃の方を見ると阿修羅王と踊っている。まあ彼は腕が多いしなと暁妃が杖がなくても踊れるかと納得し、神々の会話に戻った。
「舎脂様は元気ですか?妾の世話で夫を取ってしまって申し訳ないと伝えてくださいませ、阿修羅王」
「あれは伸び伸びと過ごしているよ。それにお前の世話をしてこいと蹴りだしたのは舎脂の方だ。安心しなさい」
帝釈天を蹴りだすとはさすがは阿修羅王の娘、と暁妃は「ホ、」と笑い、そのままダンスを続けた。
ダンスをしている2人を見、翠は「まあ綺麗だね」と雪之丞に言い、雪之丞は苦笑し、見ていた毘沙門天は少しばかり機嫌が悪くなった。
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変わってはいるが大変ご利益のある荘厳かつ幻想的なパーティーだったと客人たちは満足し、暁妃は元より翠も雪之丞も帝や皇后もそして神々も祭りが終るとそれぞれが家に帰って行った。
翠が暁妃と城に戻ろうとしたとき、芸能の神である摩多羅神が翠に呼びかけ言った。
「もう1人の妹に気をつけろ」
そう言って童子2人を連れて帰って行き、翠は首を捻った。桜花に何かあるのだろうか。翠は頭を掻いたが暁妃は真剣な顔で摩多羅神の方を見ていた。
彼がこのような助言をするのは珍しい。彼は芸能の神で有名だが、実際は障礙神であり荒神でもある。桜花が彼を怒らせねばいいがと暁妃は考えた。
暁妃よりも力の強い神は勿論いるのだ。喧嘩になれば暁妃は摩多羅神を止めることはできない。阿修羅王も然り。
宴が終り、神々は一度皆天界に戻ると暁妃に言い、帝釈天と毘沙門天も心配そうにこちらを見たが天に戻っていった。暁妃は杖をつき城に戻り、ドレスを脱がしてもらい、身体を拭ってもらって早々に寝ることにした。まだ全快した身体に慣れていない。
疲れがたまっているなと暁妃は考えた。阿弓と彩也子に部屋に戻るように言い、暁妃は1人で眠っていた。
離れにいる桜花が七緒大尉と春風少佐に話しかけていることには疲れすぎて気づかなかった。
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