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不吉の前兆

更新しました。

楽しんでいただけると幸いです。

全快祝いが行われる前に暁妃は皆の見守る中、神聖な場所と崇められている4つの大きな柱が四方に建ち、天井はない、床は土そのままの場所で結界を張り直した。正直めんどうくさかったが、結界を張るのは通常このようにして執り行われていたらしい。暁妃は白い上と赤い袴を身につけさっさと結界を張り、馬鹿馬鹿しいことを考えるものよな、とぼんやり思った。


ひび割れた箇所を直し、薄くなった結界を元の強度に戻した。ものの10分もかからない作業を終え、神官だとか呼ばれていた者たちも民衆も、一緒にいた皇族の家族たちも暁妃の力に皆驚き、民衆や神官は暁妃の元に膝をついた。帝は暁妃は歴代最高の力を持っているやもしれんと考え、どうにかして力を奪うか、翠の協力者にさせれないかと考えた。

皇后は眉を顰めたが暁妃の力を目の当たりにし、ようやく暁妃に対し態度を改めなければならないことに気づき、桜花は表情を変えなかったが今までの自分への喝采をとられて心の中には憎悪が渦巻いていた。



暁妃は結界を張り終えた空を見て、こういう色なのだろうかと考えた。

暁妃は空の色をほとんど知らない。図書室で読んだ本の挿絵の色を参考に張ってみたが合っているのかが分からなかった。しかしまあどうでもいいかと考えた。



ーーーーー



結界を張り終えて数日、やけに召使や家臣の態度が悪く、着物や物を壊されるようになり暁妃は彼らの思考を読んだ。するとどうも桜花が暁妃を侍女に悪く言っては噂を流し味方を増やしているらしい。もう一度地下牢に戻せと。まったく分かっておらぬと暁妃は首を振った。


今の自分なら地下牢からでも城中の皆を操り殺し合わせることができるというのに。仕方ない、阿弓を使っていい加減終わらせるかと暁妃は杖をついて部屋に戻った。



「阿弓、帝に報告せい。桜花が侍女や家臣にあらぬ噂を流して妾をまた地下牢へ入れようとしておるとな。帝に疑われたら帝に桜花の思考と記憶を読めと言え。まったく迷惑でかなわぬ」

「かしこまりました」



阿弓は礼をし立ち上がり、帝へ報告へ行った。最近着物を切り裂かれたり貴金属や皇后からもらった化粧品まで壊されて困っていた。少しばかりお灸をすえるには丁度良い機会だと考えた。


阿弓が部屋を出ていく瞬間に暁妃は阿弓の思考を読み考えた。どうも七緒正嗣大尉から離縁を突き付けられたらしい。理由は不明とのことだが間違いなく力を失ったからであろうと暁妃は考えた。

そして良い事を思いついた。離縁することもなく力も多少は元に戻る七緒夫妻にとってはちょうどよいことである。ついでに言えば春風夫妻も。


暁妃は迷惑沙汰をさっさと解決しようと彩也子に七緒大尉と春風少佐をここに呼ぶように連絡をしてくれと命じた。



ーーーーー


阿弓から話を聞いた帝は驚き、即座に桜花を離れに入れ謹慎させよと命を下した。皇后は驚き、帝に言った。



「陛下、桜花がまさかそのような...暁妃が嘘を言っているのかもしれませぬ」

「神々に愛されている暁妃がか?人に嘘を吐く必要なぞないであろう?では阿弓といったな、実際に暁妃が壊された物を持ってまいれ」

「かしこまりました」



そう言って阿弓は立ち上がり礼をして去って行き、阿弓と彩也子も連れて2人で壊された物を持ってきて帝と皇后に見せた。皇后が贈った着物や普段使っている化粧品、それに翠にもらったティアラもあった。



「皇后陛下、失礼でございますが暁妃様は皇后陛下や翠様がくださった初めての贈り物をこのように無残に壊すでしょうか?」

「それは、しかし」

「もう1つございます。ここ数日必ず部屋に誰かが置いていく手紙でございます」



それを広げると帝は眉を顰めた。汚い字で『異邦人は牢からでるな』『気味の悪い化け物』『首を括ってしまえ』などなどが書かれていた。


「暁妃様は桜花様に自分のこの醜い行いの非を改めると暁妃様に言い、謝罪をし、そして自ら反省の為に離れに入るのならこのような行いをした者たちを突き止め罰を与えるのはやめる、と申しております。ーと、言うよりもこれらを見た帝釈天様と毘沙門天様がお怒りになり、『帝がなにもしないのであればこちらで対処する』と申しておりまして、暁妃様は彼らを止めるのに手いっぱいになってございます。陛下、どうぞご決断を」

「分かった、まず桜花の申し開きを聞こう。朕は人の思考が読める。そのうえで判断する。下手人は即刻捕まえ罰を与えよう。ーー皇后、それでよいな?」

「.....はい」


皇后は溜息を吐き、頷いた。武神を怒らせて可愛い桜花を殺されてしまっては困る。


そして桜花は帝に呼ばれ、「わたくしではありません」と否定したが、思考を読んだ帝が即座に嘘を見抜き、桜花を離れに2か月謹慎させると言った。よく反省し、暁妃に心からの謝罪ができるようになるまで出てくるなと侍女もつけずに扉を閉め鍵をかけた。

暁妃はその様子を翠や皇后と共に見ていたが、睨みつけた桜花の顔を見て、なるほどと納得した。なんとなく感じていた違和感の正体が分かった。


帝釈天と毘沙門天は桜花の処遇については不服であったが、他の下手人は牢に入れられ罰を受けると聞かされなんとか昂奮を治めた。暁妃は2人に言った。


「結界を張る儀式が終った直後に桜花が死んだとあれば民衆がなにを言うかわからぬ。放っておいた方が身のためじゃ」


2人は仕方なく納得したが「天界には伝えておく」と暁妃に了承を取らせた。暁妃はそれよりも、と考えた。桜花の真の力を知りたい。暁妃はそうだと思いつき、軍に連絡を取るように彩也子に言った。




ーーーーー



七緒大尉と春風少佐は狐につままれたような顔で部屋を暁妃の部屋の隣から離れに移された桜花の部屋の前に立ち桜花が簡単に外に出れないように監視していた。


城に呼ばれた2人は暁妃の部屋に入った。暁妃はもう2人を見ても怯えることは無かった。2人に座るように言い、正座する2人に茶を勧め、自分も茶を啜り、口を開いた。



「能力をもう一度貸してやろうと言えばどうする?」

「は?」

「いらぬか?貴様らの地位を確立した能力が」

「その、暁妃様?」



七緒大尉と春風少佐は顔を見合わせ、なにかあるのではないかと疑いながら暁妃の方を見た。暁妃は笑って言った。



「最近妾の妹が妾に嫌がらせをしてきて迷惑をしておる。噂を流したり、自分の侍女や召使を使って妾の着物を裂いたり、貴金属を壊したりしておる。ーー中には兄上や母上からもらったものもあった。もう父上には伝えてあるが、甘い処罰では困る。例えば離れから出たあと、軽い謝罪であとは着物や貴金属を買い直して終わり、とかの。それに逃げられても困る。2か月あそこにいるはずじゃからの。皇后は特に桜花に甘い。なにをするかわからぬ。ゆえにその間貴様らに桜花が逃げぬか見張っていて欲しい。そのためには元の能力が必要じゃ。じゃからもう一度貸してやる」


「...その力は桜花様の監視が終ったらどうなるのです?」


「もちろん国を守るためにそのまま持っているとよい。妾にはあれらの能力は無数ある能力のうちの1つにすぎん。ただし、それで妾を攻撃すれば能力は自分に返ってくるからそれは気をつけよ」


「...かしこまりました」


「ではそういうことで。桜花はもう離れに移されておる。帝釈天と毘沙門天が激怒しての。帝と皇后はそれゆえ桜花を着の身着のままで閉じ込められているそうじゃ。まあ生活必需品はそのうち送られるじゃろう。では離れの監視を頼む。この任務が終わり次第元の役職に戻るがよい」

「ハッ」



2人は敬礼し暁妃の部屋を出て離れに向かった。そして監視を続けているが、中からは泣き声と恨み言が聞こえ、中にいるのは本当に桜花かと2人は疑った。しかし誰であれ能力は戻った。


これで軍から抜けることもないし、妻と離縁することもない。暁妃の部屋を出た後阿弓と彩也子に会った2人は離縁の撤回を申し出、心底安堵して任務に就いた。2か月の監視にしては破格の報酬だった。


離れの中で桜花は泣いていた。わたくしはただ少し姉の文句を侍女や召使に言っただけ。姉の私物を壊したのは彼らなのにどうしてわたくしがこのような目に遭うのか。

そういえば姉が地下牢から出て来てから歯車が狂った。愛されるのはわたくしだった。兄にとって一番もわたくしだった。お父様やお母様にとっての一番も。

それが今ではお姉様が一番になって自分は放っておかれている。


お姉様のような異邦人がこんなに愛されるのはおかしい、桜花はそう考えた。


外には軍人2人がこちらを見張っていて逃げられそうにもない。しかし、と桜花は考えた。彼らもまた姉が外に出ていることをおかしいと思っているに違いないと考えた。


だって異邦人は家の恥で死ぬまで家の中に閉じ込められるのが常なのだから。桜花は彼ら2人に協力してもらいこの異常な状況をお父様に訴えることはできないかと考えた。


お姉様のような醜い異邦人は目立つべきではないのだ。



桜花はそう考えこれはとても正当なことだと考えた。顔が歪み、髪色が変わりかけていることにも気づかずに。





読んでいただきありがとうございます。

続きは今日18時に更新します。

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