疑問
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楽しんでいただけると幸いです。
「ぬしは妾の身体をなぜ治す?」
「.....」
またやってきた栗色の髪の男は暁妃の内臓を治していた。暁妃は温かさと痛みが癒えていくのを感じながら男に尋ねたが男はなにも言わなかった。まあいいかと暁妃は眼を閉じた。
どうせ終われば男は勝手に消える。ここ最近数日おきにやってきては腹や胸に手を当て臓器を治していく男に暁妃はもう慣れていた。しかし目的はわからない。
「ぬしはどこの男じゃ?外国の男か?それとも家に閉じ込められている妾と同じような異邦人か?」
「ーー喋らぬか。まあいい。しかし治しても妾は今年中には天界へ向かうぞ」
「親切な男じゃの」
暁妃は囁くように独り言を話し、眠った。男は手をかざすのをやめると眠っている暁妃の頬に触れて撫で、そして去って行った。そして暗闇だけが残った。
翌朝家臣の1人が震えながら自分の手を見つめていた。能力が消えた。念力で物を壊す力が失われた。家臣は錯乱し、棚に手を入れ、薬を取り出し飲みこんだ。それは毒だった。
城では突然能力の高かった家臣が自殺をしたことで一時騒然となった。
同じころ春風少佐も戦闘能力が学生の頃ーーまだ瓦一枚割れない頃にまで戻っていることに気づき驚き、どうしようか考えていた。岩でも砕けるほどの力を持っていたのに。どうしようかと震える手で結界のヒビの下に作ったテントの中で珈琲を啜り落ち着こうとした。
今の自分は新兵よりも弱くなっている。ありえない事態に青みがかった黒髪を揺らし、橙色の瞳を揺らし、端正な顔は無表情のままでせめて平静を装った。
暁妃はある日皇后からと贈られてきた化粧品に困惑した。
紅や眉墨、白粉に頬紅、筆と椿油が入っていた。しかしこれらはもう暁妃は持っているしそもそも紅の色も頬紅のいろも自分の好まない色の物だった。
白粉は使う必要がないし、眉墨はそもそも使わない。式典用かと思ったがどうも普段使いのものらしい。
そこで暁妃は理解した。母であろう皇后は暁妃を娘として認めていないのだと。
暁妃は仕方なく箱に化粧品を押し込み、見なかったことにして化粧台の横に箱ごと置いた。
髪結いに相談したが渋い顔をしたのだから髪結いからみても合ってはいないのだろう。暁妃はめんどうくさいことになって溜息を吐いた。
あとで桜花にでもやってしまおう。桜花ならば似合うだろう。暁妃はこのいらない贈り物をさっさと処分することに決めた。
城に来た商人からいつもの化粧品を買い、皇后からもらった化粧品類は桜花に「皇后陛下からもらったがどうにも色が違う。おぬし宛てではないか」と疑われないように押し付け、暁妃はすっきりした気持ちで部屋に戻った。
しかし桜花が皇后に礼を言ったためにまた化粧品が届き暁妃は溜息を吐き、もうめんどうだと箱を放って煙草を吸った。あとで確認すればいい。ぼんやり窓の縁に腕をのせ煙草をくゆらして空を見た。暁妃は首を傾げた。
空というのはあのような青だっただろうか。
しかしついこの間まで地下牢で暮らしていたためあまり青空を知らない暁妃はこのようなものだろうと納得し煙草を吸うのに戻った。そのころ帝は焦っていた。
結界の強度が弱くなっている。結界が薄くなり今なにかがあれば結界が割れてしまうかもしれない危険があった。
帝は悩んでいた。最近血色もよい暁妃に結界を張らせるかどうか。しかし身体は全快に至っていない。無理をさせると死んでしまう可能性があった。帝は額に手をやり悩んでいた。
ーーーーー
「暁妃、母上があげたものをどうして身につけないんだ?失礼だよ」
翠が困ったように暁妃の部屋に来て言ったため、暁妃は皇后から頼まれたと察し仕方なく皇后からもらった着物を着、そして化粧をした。
翠はある日人々がくすくす笑っているのを見、何があったのかを確認するために笑っている原因のところにまで行った。そこにはおたふくのような顔で子どもが着るような薄桃色に淡い水色の生地に花が刺繍された振袖を着た暁妃がいた。翠は思わず吹き出し、慌ててつくろって暁妃に尋ねた。
「暁妃、その着物と化粧はどうしたの?」
「兄上が『母上からもらったものを身につけろ』と言うたじゃろう?望みどうり身につけたぞ」
翠はその言葉を聞いてまさかと考えた。これを母上は贈ったのか?似合わない色の化粧に似合わない着物。嘘だろうと思っていると運悪く緋色皇后が「何事です」とやってきたので家臣も召使や侍女も脇に寄った。
「皇后陛下、この度は着物と化粧品をありがとうございます。遅れましたが身につけさせていただきました」
「......ッ」
「それでは妾はこれで」
そう言って暁妃は去って行った。緋色は顔を赤く染めて去って行った。翠はどうしようか考えた。周りの家臣も召使も侍女も笑っていた分バツが悪そうに去って行った。
服屋と商人が暁妃の部屋にやってきたのは翌日だった。暁妃が問うと服屋も商人も笑顔を崩さず暁妃に似合う着物や洋服、そして化粧品をどんどん紹介していった。暁妃はいらないと断ったがどうしても買ってもらわないと困るのか商人たちは必死に暁妃を褒め、流行色から似合うものを紹介していた。
仕方なく暁妃はいくつか買い、金を払うよう阿弓に言うと商人たちは言った。
「皇后陛下から代金はいただいております」
それで暁妃はだから使わないでいたのに、と商人たちが帰った後額に手をやり溜息を吐いた。桜花には似合うだろう。たぶん皇后は知らなかったのだ。あまり妾の顔を見ていないなと考え暁妃は疲れたように息を吐いた。
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