はじまり
第一話です
ファンタジー系の話です。よろしくお願いします
面倒なことになったと暁妃は考えた。
皇族の元に生まれ出でたがその銀糸の髪から呪われし者と烙印を押され、赤子の時分から地下牢での生活を余儀なくされていた暁妃は17歳の今日になって名無しの忌み子からいきなり「暁妃」という名を与えられ、地下牢を出され、皇族の長女として生活することになり、ため息を吐いた。
侍女に風呂に入れられ、怯えながら髪を洗い、身体を洗い、軍部の人間につけられた傷と左上半身は顔から腕から火傷に覆われているところに薬を塗られ包帯を巻かれ、今までのボロのような寝巻ではなく、皇族の姫が着るような着物を着せられて暁妃はため息を吐いて自分の使いである者の一人の毘沙門天に片手で抱き上げられて、帝に会うために廊下をゆっくりと移動していた。
途中暁妃は侍女に「煙管を持ってくるように」と言い、使いに走らせ、後ろに控える帝釈天や四獣を見、仕方がないかと考えた。帝に夢で神々から予言がいった。
せっかくこの苦界からあとひと月でおさらばし、天界へいけるはずだったのに。暁妃は現世に心底うんざりしていた。
虐待にも、暴言にも。
ーーーーー
「こちらが暁妃様の新しいお部屋でございます」
帝に挨拶を終え(帝は面白いくらいに怯えていた)、侍女が暁妃と使いの神々と四獣たちを最上階の部屋に案内した。
そこは見晴らしがよい大きな窓がある明るい広い部屋で、この階には暁妃の部屋しかないのか広々としていた。
逆に言えば日当たりのよい地下牢とも言えなくもないその部屋に暁妃は「ふうん」と煙管をくわえてまあまあ気に入り、毘沙門天に座布団の上に降ろしてもらい、ひじ掛けに肘をかけ凭れて、怯え震えている侍女に言った。
「そうじゃの、まずは、着物と女の必需品を揃えてもらおうか。それと家具も。あとは癒し手を連れてまいれ」
「はい、ですが、」
「帝に言っておけ『妾の身体はひどく傷ついている。これでは結界を張ることは不可能』とな」
「か、かしこまりました」
侍女は深々と礼をし、そそくさと去って行った。部屋だけ用意して家具もなにもない部屋を見渡して、暁妃は考えた。どうやら相当慌てているらしい。
そしてケホ、と咳をし着物を見ると血が着いていた。妾の寿命はあと一月もてばよいくらいかの、汚れた若草色の着物を見、暁妃はまあどうでもよいかと考えた。
実際どうでもいい。肌を焼かれ、腰と足の骨を折られ立つこともままならず、食事も今までずっと沢庵の切れ端に薄い雑炊のせいで栄養失調でやせ細り、ついでにいえば自分の身体を焼いた男たちーー軍の者であったり、この城の者であったりしたがーーの暴行のために内臓もいくつか駄目になっていて、生きれるも何もない。
如来からは早くこちらに来いと言われている。暁妃はどうしようか考えていた。
このような仕打ちを受けて、この国を守るような阿呆など存在はしない。
暁妃はさっさと身体の不具合で死んで、極楽で過ごすことを考えていた。自分が死ねば結界が張れず、自分を傷つけたせいで神の怒りを買ったこの国がどのように滅ぼうが、暁妃はどうでもよかった。
癒し手は数時間もすると暁妃の部屋にやってきてきょろきょろと見回し、侍女に「布団とすだれはないのですか?」と尋ねた。すると侍女はハ、と気づき青い顔で「しばしお待ちください」と部屋を出て行った。
暁妃はその様子を窓に腕をかけどうでもよさように見ていた。実際は侍女を観察していたが。
あの女はたしか軍部の大尉の妻で、妾の肌を焼いた七緒正嗣の妻、阿弓と言ったな。
くりくりとした緑の眼に愛嬌がある顔でつやつやとした黒髪を後ろで結い、白い着物に赤い袴を身に着けた女のことを認識し、今後の動向を考えた。
しかしどうせ帝の決めたこと、どうでもよいかと暁妃は煙草を吸った。板の間だった部屋に男たちの手で畳が敷かれ、それを囲うようにすだれを垂らし、そして持ってきた畳四枚の上に布団を敷き、男たちは出て行った。
暁妃は毘沙門天に抱かれすだれの中に入り、着物のまま寝た。癒し手の連中が「どうぞ目を瞑って、そのままに」と言ったので暁妃は素直に目を閉じた。
どうせ四獣と帝釈天と毘沙門天が見守っている。癒し手の連中も誰も自分に何もできはしないし、できても自分が死ねば結界は壊れ、あらゆる神の怒りが降ってくるだけだと暁妃はこのまま眠った。
だから癒し手たちがまず肌の火傷を少し治しても暁妃は驚かなかった。癒し手は言った。
「本日の治療はここまでになります」
「そう、どこを治した?」
「はい、肌の火傷を半分ほど」
「そうか、では妾は当初の予定どうりに来月死ぬな」
「は?」
「妾の身体はもってあとひと月じゃからの」
よい、下がれ、と暁妃が言うと癒し手たちは大層困った顔で「明日も参ります」といって帰って行った。たぶん帝へ報告へ行くのだろうと考え、暁妃は侍女を呼んだ。
先ほどの阿弓とかいう女が震えながら入って正座をしたのを見て暁妃は言った。
「それで、着物と家具の方はどうなっておる?」
結果は皆の思い描いたとうり。
読んでいただきありがとうございます。
二話は明日8時に公開します。




