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その美女は人間じゃない  作者: ナカジマ
第2章 雅樹の故郷
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第48話 若藻村の神社にて

8話で雅樹が幽霊の実在を知る場面で、自分の両親が幽霊として生きている可能性について質問する描写を足しました。

↓こんな感じです。


 幽霊の実在を知った雅樹は、とある可能性に思い至る。それは自分の両親についてだ。

「い、イブキさん! じゃあ俺の両親が妖異になっている可能性は……」

 人間ではなくなっていても、再会が出来るのならと雅樹は僅かな希望に縋る。

「残念だけど、それは無いよ。ちゃんと成仏した後さ」 

 雅樹の淡い期待はあっさりと崩れ去った。覚悟はしていたが、やはり駄目かと雅樹は項垂れた。

 碓氷雅樹(うすいまさき)が生まれた故郷、若藻(わかも)村。そこは300人程の村人が過ごしている筈の村。

 かつて村を興した女性が豊穣の神となった地。昔からそんな伝説が残されており、若藻様と呼ばれ親しまれて来た。

 働いていない子供の間はその恩恵を感じ辛いが、大人になるとご利益を実感する事になる。

 大雨で周辺の村が水害に襲われても、若藻村だけは無事で済む。


 不作の年が来ても、若藻村だけは例年通り。台風が若藻村を避ける様に移動する。

 まるで嘘の様な伝説が数々残っており、実際に若藻村はとても平和だ。

 災害に脅かされず、妙な事件が起きる事はない。誰も不幸にならない完成された土地。

 周辺の村は廃れて合併されてしまったが、若藻村だけは昔のまま残っている。


 そんな若藻村の一角に、年季の入った神社がある。若藻様が祀られている聖なる場。

 常に静謐な空気で包まれており、心が洗われる様な気分にさせられる。

 良く手入れがされた鳥居をくぐれば、拝殿があり更に奥へ行けば本殿がある。


 白を基調に使われた、荘厳な雰囲気を纏う聖域。神を祀る神聖な場所。

 そんな本殿に巫女服を来た女性が駆け込んで来た。かなり慌てた様子を見せている。

 すぐに畳へと膝を付き、頭を下げながら彼女は大きな声で告げる。


「失礼します! 緊急のご報告が!」


 巫女の女性は御簾(みす)の向こうに居る誰かへ向けて声を掛ける。

 人影が見えているものの、顔までは分からない。シルエットが女性らしい事だけは何とか判別がつく。


「どうしました? 彼がやっと帰って来ましたか?」


 御簾の向こうからは、おっとりとした高い女性の声が聞こえて来た。

 以前巫女に対して出していた命令。それが漸く成功したのかと問うている。


「そ……それが……その……」


 巫女の女性は非常に言い難そうだ。玉のような汗を額に浮かべながら、拳を握り締めている。


「何です? 違うのですか? まさか……また失敗したと?」


 御簾の向こうから届く声は、段々冷たくなっていく。後半は失望を感じさせる声音だった。


「い、いえ! 帰っては来ているのですが…………」


「だったら何が問題です?」


 目的が果たされたのに、何の問題があるのかと上司らしき女性が問う。

 またしても巫女の女性は言い辛そうにしている。しかし意を決して口を開いた。


「それが……ヤツも同行しているらしく……」


 巫女の女性がそう告げた途端に、御簾の向こうから猛烈な圧力が発せられた。

 巫女の女性はビクリと震え、上司が怒りを漏らしていると察した。

 こうなると分かっていたから、報告なんてしたくなかったのにと、恨み言を内心で呟きながら。


「…………なんですって?」


 怒りのオーラが冷たく漂い、本殿の体感温度を一気に下げる。


「お、落ち着いて下さい草子(そうこ)様!」


 どうやら御簾の奥に居るのは、草子という名の女性らしい。

 未だに姿こそは見えないが、存在感だけは凄まじいものがある。

 甲高い声で喚き散らすのではなく、あくまで冷静な態度で怒気を放っているだけに余計恐ろしい。

 プレッシャーをモロに受けている巫女の女性は、ガタガタと震えている。


「どうしてそんな事になったのかしら?」


「そ、それは……」


 全てを命令通りにやっていれば、こんな事態にならなかったと草子は怒りを部下に向けている。

 彼女にとって犬猿の仲とでも言うべき相手と、何故か愛しい男が一緒に居る。

 そうならない様に、草子は事前策を打っていた。しかし何故か、最悪の事態に陥っていた。


「私は彼に御守りを持たせておいたのよ? 魂を平凡なモノに偽装する術をかけてね」


 彼の魂は妖異にとってあまりにも魅力的だと分かっていたから。

 他の余計な邪魔者に手を出されない様、彼女は細工を施しておいたのだ。

 自分が渡した物であれば、必ず身に着けたままで居ると分かっていたから。

 だと言うのに何だこれはと、激しい怒りを草子は燃やし続ける。


「なのに何故かしら? 答えて頂戴?」


「…………」


 巫女の女性は答えられない。何故そうなったのか、検討もつかないから。

 知らないよと、言ってしまいたい。しかし部下に過ぎない女性は、そんな事は言えない。

 ただただ冷酷な一面を持っている上司が、冷静になり落ち着くのを待つしか出来ない。


「そう言えば貴女が手配した餓鬼は、帰って来たのかしら?」


「え? いえ……まだ何も……」


 何故その話になったのかと、巫女の女性は疑問符を浮かべる。

 ヤツと彼が一緒に居る事とその話に、一体何の繋がりがあるのか分からない。


「なら追加で送った増援は?」


 更に草子は尋ねる。部下の行った手配について、今どうなっているのかと。


「そ、そちらは連絡が来ました。成功したと」


 脅かす事に成功し、こちらに報酬を受け取りに向かうと巫女の女性は連絡を受けた。

 やっとこれで全てが解決したと思っていたのに、何故かこんな事になっている。


「なら貴女、最初の餓鬼がやらかしたのではなくて?」


「……え?」


 巫女の女性は失敗して逃げ出したとでも考えていた。ヤツの領域に入り、恐れをなしたのだと。

 だが草子の考えは全く違っている。彼女は妖異の適当さを良く知っている。


「貴女、()()()()()()()()()()()()


 目も合っていないのに、ジロリと視線を向けられたのを巫女の女性は感じた。


「は、はい。丁重に扱えと伝えました」


 御簾の向こうから大きな溜息が聞こえて来た。落胆、失望、呆れと、様々なモノを含んでいる。

 明らかに良くない流れだが、自分の何が悪かったのか巫女の女性は分からない。

 ただ流れの餓鬼を捕まえて、命令を下しただけだ。切り捨てても問題ない者を使っただけ。

 他の支配圏で、自分達が何かを行ったとバレない様に。草子と特に仲の悪い支配者の縄張りだから尚更だと。

 最悪バレて何かを言われたとしても、知らぬ存ぜぬを貫き通せる様に。

 

「その餓鬼が彼を襲い、弾みで御守りが壊れるか紛失した。そしてヤツに彼が見つかった」


「…………あっ」


 有り得ないとは言えない展開だと、巫女の女性は思い至る。

 定住する土地を持たない流れの妖異は、切り捨てるのが簡単だがその分質も高くない。

 命令を無視して、好き勝手を行った可能性は低くない。もし草子の予想が正しいなら、この状況に説明がついてしまう。

 巫女の女性は冷や汗が止まらない。もし本当にそうだったら、間違いなく自分は処分の対象となる。


「そ、草子様! 私は――」


「いつも言っていたわよね? 頭を使いなさいと」


 楽な道を選び、熟考をしなかった。切り捨て易さだけを優先してしまった。

 その結果がこのオチでは、何も楽を出来ていない。むしろただ事態を悪化させただけだ。

 上司が大切にしている男を、みすみす他者に渡してしまった。

 小さい頃からずっと見守りながら、育てて来た本当に大切な者だったのに。

 このミスは謝罪だけで済む話ではない。大失態と言って良いだろう。


「も、申し訳ございません!!」


 巫女の女性は全力で土下座を敢行する。これしか取れる道が残されていないからと。

 謝ったとて、ただで済まないのは分かっている。しかしもう出来る事がない。

 覆水盆に返らず、起きてしまった事は変えられない。過去を改変する様な力などない。

 巫女の女性は妖異の中でも上位に位置する。しかし最上位に位置する者達には遠く及ばない。

 上司である草子にも、忌々しいヤツにも。力で解決出来ない以上、謝罪しかない。


「貴女の失態は大きいわ。でもそれより先に、彼の保護が先よ。ああ……鬼なんて野蛮な連中に捕まるなんて……」


 怒りに燃えていた草子は、深い悲しみに暮れ始める。乱暴な種族に捕まった彼の安否を思いながら。

 愛しい男の無事をただ願いながら、奪還に向けて動き出した。

Nolaという執筆ツールを使い始めたのですが、AI感想という機能があり1章だけかけてみました。

ザっと要約すると、発想は良いし雰囲気はあるけど、情報量が多いと出ました。

そんなに多いですかねぇ? 大丈夫でしょうか?

これでも必要最低限にして、小出しにしているのですが。

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