地球を救え
太陽系には12個の惑星があり、ひとつのチームとして太陽を公転している。我々が見つけた惑星は8個だが、それ以外にもあと4個ある。もしチームのどれかが自然の摂理を破ればその影響は計り知れない。我々は皆宇宙という共通の土台の上に生息している。どこかの惑星で大きなトラブルや問題が起これば、必然的に他の惑星にも影響する。宇宙には壁がない。12個全ての惑星には、生命体、とりわけ人類が生存する。その中でも、土星人は最も進化しており、全ての惑星の司法を司る。地球は最も未発達な惑星。
このような状況下で、ジョン(愛称)は我々の一員を装って、200年前特使として土星より地球に派遣された。彼の任務は、地球人が道を誤らないように監視、協力、及び報告すること。人間は、未知の種族、特に他の惑星より来た高度な生命体を描写するのに、便宜上エイリアンと言う言葉を使う。事実は、外見に関する限り、11個全ての住人は我々地球人とそっくりである。よって、例え人込みの中で彼・彼女達に遭遇しても、誰も気づく者はいないであろう。
土星人はとても長寿で、地球年齢に換算すれば1000年以上生きる。ジョンは300歳、まだ青年。彼は派遣以来、ずっと地球人に溶け込んで生きてきた。その間、産業革命や二つの世界大戦という、大きな歴史的節目を目の当たりにした。更に、アインシュタインのような著名な科学者と一緒に、地球科学発展の為、積極的に力を注いだ。但し、ジョンは常に黒子役に徹し、表に出ることはなかった。実のところ、アインシュタインが相対性理論を思いつくように誘導したのは彼だった。ジョンは土星の中で最高の科学者の一人。
米国が第二次大戦を終結させる為に、マンハッタン計画を立ち上げようとした時、ジョンはアインシュタイン等を通して猛反対した。この発明、つまり原爆は大きな誤りで、地球は言うまでもなく、宇宙にも多大な被害をもたらすと主張。人類が危険な兵器を開発したり、殺し合うのを止めるように八方手を尽くしたが、ついにメッセージは世界に届かず。彼は悩み考え、自問自答した。『自分は有名ではないからか。もし有名になれば人々は聞く耳を持ってくれるのか』。
熟慮の末、ジョンは自身の特技であるスポーツを活用して、表舞台に立つことを決意。『こうすれば直接メッセージを伝えることができる。恐らく、人々は聞いてくれるだろう』。そう考えた。地球でプレーされている多種多様なスポーツのうち、テニスを選んだ。一流選手になるという目標を達成するには、多くの時間を必要としなかった。デビューして二年後には全てのグランドスラムで優勝し、世間をあっと言わせた。今では彼を知らぬ者はいない。輝かしい実績に加え、ハンサムで、マナーも良く、国連が承認してる六ヶ国語を自在に操る。正に全世界から愛されるヒーローとなった。さあ、基本条件は全部整った。次のステップは平和のメッセージを伝えること。テニスが本来の仕事ではない。いつでも、どこでも、機会があればテニスの試合に関係なく、取材を積極的に受け入れた。メッセージは常に単純明快、『核エネルギーを止めよう!』しかし、残念ながら、その声は届かず努力は水泡に帰した。皆の関心はテニスの試合を見ることだけだった。
―― 審判の日来る ――
ジョンが再度大きな試合で優勝した日、彼はテニス協会の理事長に、いろいろな分野から著名人を招待するよう依頼する。それはテニス業界のみならず、政治、経済、科学、宗教及び報道を含む。目的は彼の将来に関する特別な発表の為。更に、テレビ、ラジオ、及びSNSにも連絡してこのミーティングを実況放送するように依頼した。誰もが彼は引退するのではと思った。『なんでそんなに早く』『なんでいろんな業界の人たちを』・・・多くの疑問が湧いた。
何百もの好奇心に満ちた聴衆で埋め尽くされた会場。ジョンは緊張をほぐしながら言った、今日は自分にとって地球最後の一日になると。『えぇ~?』というのが驚いた聴衆の最初の一言。誰もが困惑して、『きっと聞き違いだよ』とか、『冗談だよ』とささやいた。皆のショックを和らげるようにジョンはスピーチを続け、いつ、どこから、何故、彼は地球に来たのかを説明した。しかし、話せば話すほど聴衆は困惑した。彼の話はあまりにも荒唐無稽に思えた。
百聞は一見に如かず。人々を納得させるため、ジョンはちょっとした実演することを決意。テーブルの上に無造作におかれているスマホ、パソコン、コップなどの小物を念力で空中に浮かせてみせた。
彼曰く:『この超能力は私だけのものではない。私の多くの仲間にもできる。ある者は心が読める。ある者は透視ができる。ある者は動物と会話ができる。ある者は瞬間移動ができる。君達は脳が持つ能力の10%も使っていないが、我々は70%以上使っている。脳の秘密に気づけば、誰でも大きな潜在力をもっていることが分かるだろう』。
誰かが興奮のあまり発した;『貴方はどこから見ても地球人です。強く、賢く、そして教養もあります。何といっても、貴方の行いと言葉により、多くの若者が鼓舞激励されました。貴方は正に英雄です。どうか私たちを見捨てないでください』。
―― ついにジョンは核心を突く ――
『Federation、つまり、太陽系連邦政府は、地球を救う為に介入は不可避との結論に至った。もし我々が何もしなければ、地球は近い将来人類により滅亡するであろう。宇宙に数多ある生命体生存可能な惑星の中で、地球ほど多種多様な生命を宿している惑星は希少。このように貴重な惑星を失うことはできない。地球は地球人の為だけのものではない。それは全宇宙の財産なのだ。
それゆえ、地球に現存する全ての科学技術を無力化する。電気、ラジオ、テレビ、電話、及びコンピューターの使用を含む。電波やインターネットなどの接続は全て遮断される。あらゆる原子炉、工場、及び軍隊の活動は停止する。よって、電力源、ソフトウェア、及び接続手段がなくなった後は、現存する電子機器類全ては無用の長物となる』。
―― 衝撃的な発表に全員唖然とする ――
―― しばらくして、ある者は勇敢に立ち上がり、そして叫んだ ――
地球人: 地球人は懲罰に値する何をやったのでしょうか。自然の摂理を破りましたか。Federationとはなんですか。どんな権限でそのようなことをするのですか。
土星人: 説明しよう。太陽系の仕組みは米国のそれと似ている。米国では、各州高度の自治権をもちつつ
ワシントンに統治されている。同様に、Federationは各惑星が安全且つ健全な運営を行うように指揮・監督している。その中心が土星。合同会議は土星で行われ、地球以外の惑星からは、毎回各々1人代表者が出席する。つまり、計11人が集合し重要な案件を話し合う。
地球人: それで、地球の問題が討論された訳ですか。
土星人: その通り。地球問題はいつも最重要課題だった。この大きな決断は、関係惑星間での長く真剣な討論の結果だ。
第一、地球人は目的に関わらず核エネルギー開発に邁進し、世界の終焉に向かっている。既に、原爆は二度投下された。きっとまたやるだろう。一方、ある原発は重大事故を起こし、付近の環境を汚染している。にもかかわらず、新原発の建設は止めず。使用済み核燃料の処理方法すら知らないのに。自分で制御できないエネルギーは持つべきではない。
第二、今まで何度も核兵器を放棄する機会があったが、我々のメッセージは 無視され、いたずらに緊張を煽っている。なかんずく、本当の恐怖を理解しているリーダーは世界にほとんどいない。
第三、君たちは地球を正しく統治する方法を知らない。世界中どこもゴミで溢れ、それは陸、海、宇宙まで及ぶ。大半は自然分解されないプラスチックゴミ。地球は重病の患者。悲鳴が聞こえてきそう。よって、大事に至る前に予防的処置をとらざるを得なくなった。もし今何もしなければ、人間も地球も永遠に失われるであろう。
もう一度言おう。12個全ての惑星は相互に依存し合っており、君たちの問題は即他の惑星に多大な影響を与える。君たちの問題は即ち我々全体の問題でもあるのだ。それ故、無関心ではいられない。
地球人: 具体的に何をするつもりなのですか。
土星人: まず、地球を周回している全ての人口衛星を破壊する。結果、あらゆるコミュニケーション及びナビゲーションの機能は麻痺する。ミサイルを発射するのは不可能。その後、あらゆる核兵器や原発をひとつずつチェックして、全ての施設が完全に機能停止したことを確認する。オペレーションの過程で、予期せぬ問題が起こらぬよう最善を期すのは言うまでもない。
同時に、我々の堅い決意と力を証明する為、多くの宇宙船をあらゆる核兵器保有国首都の真上に配備する。具体的に言えば、ワシントン、モスクワ、北京、ロンドン、パリ、ニューデリー、イスラマバード、平壌、及びテルアビブである。テレビを見れば分かるだろう。関係諸国に告ぐ:『我々の宇宙船を攻撃してはならない。我々は決して敵ではない』。
オペレーションの過程に於いて、意図しない損失や犠牲を出さぬように細心の注意を払うが、君達軍隊の抵抗があるかもしれない。結果、運悪く市民が巻き込まれることも考えられる。よって、全人民は速やかに避難するよう勧告する。全面的オペレーションはこのミーティングより一週間後に始める。残り時間は少ない。
この機会に、質問にできるだけ答えよう。恐らく君達には沢山の質問があるだろう。さあ、どうぞ。
地球人: もし全ての科学技術が奪われれば、ほとんどの人々は大混乱に陥ります。金の流れは止まり、貿易は停止し、職は失われ、医療行為は制限され、食料や水は不足し、飛行機や電車を使って大切な人への訪問も叶わなくなります。その上、飢えに耐え切れず略奪も始まるでしょう。警察は無力。正に暗黒の世界。無力化するのは軍隊だけにできないでしょうか。
土星人: 我々も一度はそのように考えたが、基礎技術が残っている限り、君達は何らかの方法で再度武器を開発することは明らか。人間性の悪の一面は良く分かっている。科学技術は完全に破壊されねばならない。 結果、人類は1000年前の状態に逆戻りするだろう。しかし、命は繋がれる。
地球人: 大事なメッセージは我々に正しく届かなかったとおっしゃいましたが、貴方以外にもメッセンジャーはいたのですか。
土星人: 太古の昔より多くの仲間が地球を訪問してきた。我々の使命は監視と必要な援助。遺跡に残された手がかりを見てもらえばわかるだろう。エジプトのピラミッドがよい例だ。我々の援助なしには完成できなかった。今日でも仲間は国連や米軍のような組織に紛れて働いている、無論誰にも悟られずに。残念ながら、我々の努力は水泡に帰した。
地球人: 太陽系の中で、地球は最も未発達ということは理解できました。ということは、全宇宙の惑星の中で、地球は最も非人間的で野蛮だということでしょうか。全惑星に生命体は存在しますか。一体宇宙にはいくつの居住可能な惑星があるのでしょう。
土星人: 文明について言えば、地球が最下位という意味ではない。文明発達初期の過程に於いて、多くの惑星は進歩に悪戦苦闘する。進化は簡単ではない。それには何百万年もの時間を要する。何故宇宙にはそんなに多くの惑星が存在するか。答えは生命を育む為。勿論、生命とは動物と植物、特に人類だ。全ての動植物は人類の生活をより豊かに且つ便利にする為に存在する。食物連鎖の頂点に立つということは、大きな力と大きな責任を伴うということを忘れてはいけない。大半の人々はこの点を見逃しているようだ。
理論的には、全ての惑星は完全に成熟したら生命を宿すことになっている。要点は、誰もが各惑星の住環境に適合するように発展するので、人類の生態は惑星毎に異なる。例えば、ある種族は科学に焦点をあて、文化、スポーツ、あるいは娯楽といったものには注意を払わない。これらの人種は背が低く、無毛、裸体、そして目が大きい。彼らは一般的に「グレー」と呼ばれ、君たちの漫画や映画などにしばしば登場する。彼らは彼方にある別の太陽系から来てる。
宇宙には惑星や衛星を含め60兆個もの星があることを追加しよう。これは人の体細胞の数と一致する。星が宇宙の構成要素とせば、細胞は人体の構成要素。よって、人体を「小宇宙」と呼ぶことができる。星も細胞も完成品を作る為には必要不可欠の部品。全ての星には名前と役割がある。同様に、全ての細胞にも名前と役割がある。部品はひとつも欠けてはならない。細胞の損失や損傷は即刻健康に影響する。宇宙も同様。一つの星も欠けてはならない。換言すると、地球は宇宙のあらゆる星と同様に大切な存在である。
地球人: オ~、60兆個の星と60兆個の体細胞。なんという偶然でしょう!
土星人: この世に偶然というものは存在しない。すべては神の計画と創造である。
地球人: しばしば流星を目撃します。これは死んだ星ですよね。じゃあ、宇宙は如何にして必要な星の数を維持しているのでしょう。
土星人: 心配には及ばない。欠けた部分を補うべく新星がつぎつぎに生まれる。同様に、体細胞も毎秒興亡を繰り返す。七年後、君の体は全く新しい細胞で構成されている。ある意味では、君は別人になる、と言うこともできる。
地球人: 地球の歴史についてもっと知りたいのですが。同じような悲劇は過去にも起こったのでしょうか。
土星人: 人類は古代より破滅を七回経験した。最近のそれは聖書にあるノアの箱舟。もうひとつ特筆すべき大惨事は、幻の大陸アトランティスの滅亡。大西洋に位置したアトランティス王国は、二万年ほど前、豊かな資源と高度な科学技術を謳歌して繁栄を極めた。しかしながら、科学の発展に伴い人々は自己中心・傲慢になってゆく。結果、道を誤り、恐ろしい兵器を用いて世界大戦へと突き進んだ。怒った神は大陸すべてを海中深く沈めた、二度と現れることがないように。実のところ、我々の使命は八度目の惨劇を未然に防ぐことなのだ。
地球人: すみませんが、とてもついていけません。貴方のストーリーは我々の理解をはるかに超えています。話題を変えてもいいですか。土星の科学や生活様式について教えていただけますか。
土星人: いいだろう。各方面に於いて、我々は地球よりずっと進化している。第一に、科学。君達が非公式に呼ぶUFOは実在する。我々の宇宙船は光の速度よりも早く飛ぶことができ、土星と地球の間を往復するには、数分しか要しない。このようにして、何百万光年先の惑星にも難なく行くことができる。
地球人: ちょっとお待ちください。光より速いものはないはずですが。
土星人: 君達の科学に於いてはその通り。事実は、我々はワームホールと呼ばれている宇宙のトンネルを通ることにより、光速よりも速く飛行できる。光速かそれ以上の速度で飛んでいる限り、時間はゆっくり進む。年はとらない。アインシュタインの理論は正しい。しかしながら、広大な宇宙には未知の分野が多々ある。だから我々は宇宙探索を怠らない。学問に終わりはない。
地球人: 宇宙船の動力源はなんですか。
土星人: 重力。我々は如何に重力を駆使するかを心得ている。この動力源は宇宙の中で最もパワーがあり、環境に優しく、且つ無限に存在する。超高速で飛んだ後、何時でもどこでも急停止したり、浮いた状態で静止できる。また、上から下、左から右へと急な方向転換も可能。例え、仲間の船が急接近しても空中衝突することはない。この動力を利用する為には、船の形状は円盤型もしくは葉巻型でなければならない。サイズの大小は問題にはならない。我々の技術を地球の科学で説明するのは不可能。
地球人: もっと宇宙船のことを知りたいのですが。一番大きな母船はどのくらいの大きさですか。どんな機能や特徴がありますか。
土星人: 最大級の母船の大きさは、直径5km、6階建て、小さな町の規模。一度に3万人が乗船でき、必要な施設は全て完備されている。地球にある大型クルーザーと大筋は変わらないが、スケールは遥かに大きい。母船には100隻もの小船が配置されており、航行中遭遇するであろう如何なる状況にも対処できる。
我々はしばしば何年もノンストップで航行を続け、彼方の惑星との遭遇を楽しむ。途中友好的な惑星を見つけたら、そこに着陸して友情を育む。同時に、希少金属などを水や食料と交換する。土星において、半数以上の住民はこのような宇宙旅行を愛し、自己研鑽に励んでいる。
地球人: 地球で目撃・報告されるほとんどのUFOは小さめです。これらは監視が目的なのですか。
土星人: その通り。これらの船は通常直径4-6mで乗務員は2-3人。ある船は丁度潜水艦のように潜ることができ、ある船は火口に飛び込むことができる。こうして、地球内部で起きている異常を、絶え間なく検知している。尚、これらの船は母船で運ばれるが、母船そのものは地球より遥か遠い宇宙で待機する。君達の軍隊との衝突を避けるためにね。
一方に於いて、最小の船は丁度一粒のコメと同じ大きさで、人体内部を隈なく航行して患部を探し出し、健康問題の原因を究明し、治療する。今まで建造したあらゆる船の中で、この超小型船は現在土星が保有する全ての科学力の結晶である。
地球人: このような凄い技術を保有する為、どのくらいの時間を要したのでしょう。
土星人: 少なくとも一万年。我々は土星に一億年以上居住している。もちろん、最初からこのような技術があったわけではない。何世代にわたり、よく勉強し、よく働き、やっと手に入れたのだよ。しかし、常に改善の余地があることも知っている。科学の世界には完璧と言う言葉はないからね。
地球人: あなた方はそんなに長い間土星にいたのですか。ひょとして、祖先はそこで生まれ、その後ずっと進化を続けてきたのですか。
土星人: そうではない。祖先は遥か昔存在していた某惑星からの移民なのだ。あらゆる植物や動物同様、全ての星にも寿命がある。居住している惑星の寿命が尽きる前に、居住者は大抵別の惑星を見つけて移住する。もし事前に宇宙探査や移住に必要な科学技術を習得しなければ、その種族は滅亡するであろう。ちなみに、地球の祖先は数百万年前に消滅した他の惑星からの移民である。話をまとめると、科学技術を磨き、すべての惑星を愛しむことが、如何に大切かがわかるであろう。
地球人: 人類の起源はどうなっているのか、是非教えてください。
土星人: 数十億年前、神は自身に似せて人間を造られた。聖書にあるアダムとイブの物語は真実である。この点に関して、肝に銘じるべきことはふたつ。まず、神は生命の唯一無二の創造主である。次に、例えどんなことがあろうと、人間が生命を創造することは許されない。クローンは神に対する冒涜である。
地球人: 宇宙の大きさはどのくらいですか。あなた方は全宇宙を回りましたか?
土星人: まず、宇宙は球体、丁度巨大なボールのようで境界はない。想像してみなさい。海上を真っすぐどこまでも航海すると、出発点に戻ってくる。同様に、もし宇宙を真っすぐ飛行したらいつか出発点に戻る。もちろん、これは理論上。今まで実証できた人間は誰もいない。
宇宙は実に広大で測定不能。驚くべきことに、膨張を続けている。我々の科学力をもってしても、今は全宇宙を掌握することはできない。だからこそ意欲を掻き立てられる。山は高いほど、登頂に挑戦したくなるものだ。例え実証できずとも、この夢を諦めることはないであろう。
地球人: もし宇宙が球体ならば、それが如何に巨大でも、大きさには限度があるのでは。一体宇宙の外側には何があるのでしょう。
土星人: 何もない。宇宙が全て。唯一の創造主であり、偉大な意識を持つ神そのものが宇宙である。
地球人: もし、万が一、航行中に悪者に襲われたらどうしますか。武器で応戦しますか。
土星人: 決してしない。例え目的が自衛であろうと、我々が同胞である人間を傷つけることはない。全ての人間を兄弟・姉妹と思っている。例え、殺されることがあっても殺すことはない。もちろん、一番よい方法は最速でその場を立ち去ること。兵器を作ったり所有することはない。
地球人: 科学以外にも地球人との違いはありますか。
土星人: 科学以外でも、我々は君達より精神的にずっと発達している。土星は調和し、互いに尊敬と愛情を持って暮らし、安全で平和な惑星。警察や軍隊は存在しない。地震や台風のような天災はほとんどない。酷寒・酷暑もなく、必要な時・場所に、必要なだけ雨が降る。つまり、惑星を大切に扱えば、恩を返してくれるのだよ。惑星も一種の生命体で意識がある。君達はこのような世界を「ユートピア」と呼ぶだろう。それは決して叶わぬ夢ではない。いつの日かきっと地球でも実現できるだろう。
地球人: 食べ物は? 服装は? 家はどんな風? 日々の行動は? 土星での生活について知りたいことが一杯あります。
土星人: その質問を予想して、前もって資料を準備してきたので、スクリーンを見ながら説明しよう。我々の生活形態がよく理解できるだろう。
地球人: オ~、誰もが質素な服を着て、質素な家に住んでいる。家は半円球で家具は少しだけ。必要なものは全部あるが、余分なものやぜいたく品は一切見当たらず。家と家の間隔は広く、花いっぱいの庭を囲んでいる。混雑はない。ほとんどの家事は高性能ロボットがやってくれる。火は使わない。夫婦共生産的な仕事に従事している。
女性は化粧や派手なものは一切身に着けず。子供は我々同様学校へ。赤ん坊は両親が仕事で忙しい間、近所の人が交代で面倒を見る。交通は円盤型の空中バス。自家用船を持つ人はいない。全ての道路は歩行者専用。人々は笑顔が絶えない。それから、皆が食べているのは全部野菜。あなた達は菜食ですね。
土星人: そう。主食は芋。他の食材がない時は肉も食べる。このような食事でほとんどの人は健康を保っている。タバコやアルコールはやらない。
地球人: もし病気になったら? きっと気分が悪くなる場合もあるのでは。
土星人: その通り。健康問題に対処する為医者はいる。例の超小型船は彼らが開発したものだ。しかし、命をただ引き延ばすような医療行為はしない。死の定義や意味に関して、君達とは異なる考えを持っている。死は終わりではない。むしろ、新しい世界に旅立つ始まりなのだ。肉体は朽ちるとも、魂は永遠に生き続ける。そして、望めば、転生して新しい役目や目的を遂行することもできる。死は決して恐ろしいものではない。偉大なメッセンジャー仏陀はそう教えたではないか。
地球人: 答えはすぐ目の前にあると言ってるのですか。我々はただ気づいていないか、無視してるということですか。
土星人: 残念だがそのようだ。仏陀に限らず、同様の使命感を持ち、異なる時代・場所にモーセやキリストも地球に派遣された。これら三人は最も偉大なメッセンジャー達。方法は異なれど、彼らの究極の役目は、神のメッセージを伝えること。君達は沢山勉強したが何も学んでない。
―― しばらくして、質問が再度湧き上がり始める ――
地球人: もう一度話題を変えさせてください。地球人のようにビジネスをしますか。
土星人: いいや、しない。土星の経済制度は地球とは根本的に異なる。金は使わない。あらゆる必需品は各自治体を通して製造・分配される。人それぞれ能力・特技がある。仕事はそれに沿って公平に与えられる。貧富の差はない。満ち足りることを知り、羨望や比較はしない。
地球人: その体制はまるで共産主義のようです。もし、競争がなければやる気がでません。やる気がなければ真面目に働きません。それ故、新しい概念である資本主義が生まれずっと支配しています。
土星人: それは正確ではない。地球では、あらゆる分野において、生き馬の目を抜くような過当競争に満ちている。政治、宗教、科学、芸術、スポーツ、娯楽、教育、ビジネス・・・挙げればきりがない。競争がもたらしたものはなにか。利己主義、貪欲、傲慢、貧富差、妬み、えこひいき、偽装、そして劣等感。やる気を起こさせる方法は昨日の自分と今日の自分を比較することに尽きる。他人と競争・比較してどんな意味があるのか。
地球人: 娯楽はありますか。
土星人: スポーツ、音楽、ダンス、絵画などを楽しむ、君達と同じようにね。違いは、これらの活動を純粋に楽しむのが目的で競争はしない。
地球人: 質問は色んな言語でされているのに、少しのミスや遅れもなく全部英語で返事をしてくれます、まるで同時通訳者の様に。おかげで皆が同じ舞台の上に立っていられます。本当に凄い。心から感謝します。沢山の言葉をどうやって習得したのでしょう。土星ではどんな言葉を話しますか。
土星人: 土星には特別な語学学校があり、地球の主な言葉を教える。そのやり方は地球とは随分異なる。自分の場合は三ヶ月で国連が承認してる六種類の言葉を覚えた。それは自分が天才だからではない。土星の共通語は一種類のみ。地球のどの言葉にも似ていない。
ついでに言えば、我々は時々喋らずに話し合う。君達はこれを「テレパシー」と呼ぶ。この方法を使うには、話し手と聞き手、両者が同じ波長にいることが前提。自分はしばしばこの方法で彼方の故郷にいる大切な人と連絡をとる。長距離は障害にはならない。障壁や時差はない。念は光よりも速く進む。
地球人: だから報告の為に土星に戻る必要はないということですね。ところで、誰に報告するのですか。
土星人: その通り。大事な会議の時は、仲間が宇宙船で迎えに来る。報告はFederationの議長へ直接する。
地球人: 議長は、地球で言えば一国の大統領のような人ですか。
土星人: 彼はずっと知識豊富で、大きな心を持ち、無我無欲。丁度さきほど説明した三人の偉大なメッセンジャー達のような人だ。彼に学ぶのは我々にとって名誉・喜び。彼こそ皆の師匠・心の拠り所だ。全ての学生は学校で彼の教えを習う。
地球人: 彼が教えるのは科学、それとも宗教?
土星人: 我々は科学と宗教を分離しない。アインシュタインの言葉を思い出そう。『宗教のない科学は不完全、科学のない宗教は盲目である』、と彼は言った。これこそ学問の肝。科学だけを追求すると壁に突き当たる。一方、宗教だけに焦点を当てれば同様に壁に突き当たる。よって、科学と宗教は常に、同時に学ばねばならない。このふたつは同じコインの裏と表なのだ。
ある科学者は、科学的に証明できないものは信じられないと言う。例えば、幽霊や神。では聞くが、愛や友情は証明できるのか。いいかい、本当に大切なものは見たり触ったりすることはできない。それは心で感じとるものなのだよ。
地球人: 貴方のスピーチはまるで牧師のようです。心に染み渡ります。もし可能ならば、過去を反省し、生活全体を見直し、再スタートをしたく思います。もう一度チャンスを頂けないでしょうか。今度こそ太陽系一員の名に恥じないよう、立派な惑星に立て直してみせます。誓います。
土星人: たった今議長と話した。彼曰く;『因果応報は自然の鉄則。誰にも変えることはできない。犯した罪は償うべし。この決断に交渉の余地はない』。
地球人: 決して交渉してるのではありません。只、無垢な若者にチャンスを与えて欲しいのです。彼らを土星に連れて行ってもらえないでしょうか。
土星人: 君の依頼はいくつかの問題を提起している。第一、候補者が多すぎて選択不可。第二、選択されなかった若者は、怒りや絶望から自暴自棄に陥る。第三、多くの若者が去った後、人類はいつか消滅する。
君達の心配はわかる、前向きに捉えよう。人と人が共に生きるのは、どんなに大切なことかが分かるだろう。誰も一人では生きられない。皆で協力し、貴重な食料を分け合い、困っている人たちにも目を向け始める雰囲気が自然と生まれてこよう。以前は仕事にかまけて、考える余裕すらなかったことを学び、それを育むだろう。こうして人生の本当の意味を見つけることができ、精神的に成長する。科学技術は逆にその成長を阻害する。同じ過ちを繰り返してはならない。
産業化が終焉を迎えた後、地球は徐々に本来の状態を取り戻し始める。温暖化は止まる。もちろん、汚れた陸と海は全員協力して清掃せねばならない。我々は宇宙ゴミと核廃棄物の処理を引き受けよう。こうすればいつの日か、死にかかった惑星は蘇るであろう。さあ、急いで家に戻り家族を抱き締めなさい。
以上




