第7話、聖騎士くんとご真祖さま。
女神軍は、魔獣討伐など遠征日以外は、駐屯地で書類仕事や訓練など通常勤務を行っている。
昼が来た。
通常勤務中の聖騎士くんは食堂でお昼ご飯を食べている。
聖騎士くんのお昼ご飯はパスタだ。
食堂はなかなかに混んでいた。
フォークでパスタを巻いて口に運ぼうとした時、
「うわ、なんだなんだ」
「押すなよ」
「メイドさん?」
「棺桶を背負ってるぞ」
食事中の人たちを押しのけながら、黒い立派な棺桶が近づいてきた。
「いたな、聖騎士」
160 センチくらいの身長。
銀髪、銀の獣眼。
メイド服。
犬耳と尻尾(←狼)をはやした小柄なメイドさんが目の前に立っていた。
ドス
と背中に背負った棺桶を聖騎士くんの机の前に置く。
メイドさんの二倍くらいの高さがあった。
「えーと」
とまどう聖騎士くん。
「光栄に思え、ご真祖さまが貴様と相席をご所望だ」
「どちら様ですか」
「んん、スライムどのの想い人である聖騎士であろう」
口元に犬歯が見えた。
「ご真祖さまはスライムどのと仲が良くてな、わざわざ会いに来てやったのだ」
小柄なメイド服がふんぞり返る。
「はあ」
コンコン
棺桶の中から控えめな音が聞こえた。
「はいはい、なんですか、ご真祖さま」
棺桶に耳を寄せる小柄犬耳メイド。
ピクリと犬耳が動く。
ボソボソと棺桶の中から小さな声が聞こえた。
「……何々、初対面で失礼だと、まずはこちらから名のるべきだと……」
「何をおっしゃいますやらっ。 ご真祖さまはご真祖さまですぞっ」
「吸血女王、夜を統べるもの、不死の王っ」
「人のような下等生物に何を気にかけますかっ」
ボソボソ。
「……勝手に押しかけて、周りに迷惑をかけている……と」
「……スライムどのの想い人に直接挨拶がしたい……と」
「ふむん、私は止めましたぞ、ご真祖さま」
ギギギと棺桶のふたが開きだした。
白くて細い手が……出てこなかった。
バサアア
「ご、ご真祖さまああ」
ご真祖さまは灰になって崩れ落ちた。
「あっ」
聖騎士くんがフォークにまかれたパスタを見た。
「ニンニクたっぷりのペペロンチーノ……!!」
さらには女神軍の制服の胸には聖印が刺繍されている。
今日はいい天気だ。
日の光が食堂に(ご真祖さまに)当たっていた。
「ふ、ふふんっ、ご真祖さまは真祖すぎるご真祖さまだっ」
「ニンニク、聖印、日の光が平気なんていう、節操のない、根性なしの、中途半端な吸血鬼ではないっ」
ドヤ顔で言い放つ小柄犬耳メイド。
「……そこまでよ」
聖女さまの声だ。
「あっ」
ここは、女神軍の駐屯地。
魔物たちと戦う本拠地だ。
フル装備の聖女さまが構える巨大杭打機、別名、ロンギヌスの槍を正面から見ることになった小柄犬耳メイド。
ゆっくりと周りを見回すと、フル装備の聖騎士や聖女に取り囲まれていた。
「ク、クソ~~~⤴」
小柄犬耳メイドは棺桶ごと女神軍に確保されたのである。
「……な、なにがしたかったのだろう……」
地下牢に連れていかれる小柄なメイドさんと棺桶を見ながら、聖騎士くんがつぶやいた。




