第6話、義妹ちゃんと盗賊の短刀。
「なんとかしないと」
義妹ちゃんがつぶやいた。
こぶし同士なら聖女さまを止められるが、対魔物装備、特に巨大杭打ち機、別名:ロンギヌスの槍、を出されると、
「上半身が、消し飛ぶわね」
物理的に。
厳しい戒律と規律で知られる女神軍の聖女さまが、一般人に特級対魔物装備を使うことは絶対にないのだが。
◆
深夜の魔動番組だ。
部屋の壁に義妹ちゃんの影が伸びる。
「な~に~、強くなりたいっ?」
「そういう方にはっ、これっ」
妙に甲高い男性の声。
「盗賊の短刀っ」
司会の男性が、つばのない刀を前に出した。
長さは、ダイコーンより少し長いくらいか。
「賢明なお客様は効果はわかりますね~」
ひょろっとして、くたびれた背広を着た男性が画面の中に。
「で~んせつの戦士、ニンジャアア⤴になれるのですっ」
男性が短刀を持つと、
スパアン
背広が左右に破れ飛んだ。
モザイク。
細マッチョな体。
「ニカッ」
と笑い、ドロンッ、と白い煙とともに姿を消した。
「ダンジョンでとれたて、SSRレアのアイテム、盗賊の短刀を~」
「今なら三万イエンで」
「さらに~、二時間以内の購入された方には~」
「盗賊の短刀につぐレアアイテム、スリケンがついてきます」
「注文は今すぐ……」
番組の正し書きに小さく、使用すると、性格が悪になります、と書いてあった。
「これだわっっ」
――こづかいでぎりぎり買えるっ
ジ~コロロ、ジ~ジ~コロロ
魔動黒電話を掛けた。
◆
「勝負よっ、聖女さまっ」
それとなく聖騎士くんに会いに来ていた聖女さま。
「そうね、そろそろお義姉さまとお呼びなさいな」
義妹ちゃんとお茶会アンド力くらべが始まるのだ。
しかし、今日の義妹ちゃんは一味違う。
シンプルなワンピースの腰の横に盗賊の短刀。
自分の身長の半分くらいの大きさのスリケンを体の前に刺した。
今朝、通販の商品が届いたのだ。
「今までの私と思わないことねっ」
スパアン
ワンピースを空高く脱ぎ捨てる義妹ちゃん。
「えっ」
「なっ、ノーチチバンドッ……!!」
驚く聖女さま。
ふた昔の映画や漫画やアニメは、平気でトップレスが出てたよね。
ハ〇ーン様のビー〇クが出ててびっくりだ。
「ふふんっ、ニンジャアアになった私に恐れおののくのよっ」
「なっ、なななななな」
最後の砦、白いシルクのショーツに手をかける義妹ちゃん。
「ま、待ちなさいっ」
スパパアアン
ヒラリ
今、色んなとても大事なものとともに、ショーツを空高く脱ぎ捨てた。
義妹ちゃんは、あらゆるものを捨て去った一握の殺戮マシーンと化したのである。
モザイク。
「素手で首も跳ねるわ……」
「何をしているのおお」
ズドオオン
古タイヤをバットでたたいたような重低音。
「がっはあああ」
めちゃくちゃ重そうなボディーブローが義妹ちゃんの腹に。
聖女さまが義妹ちゃんを庭の地面に沈めた。
義妹ちゃんは、館のメイドが持ってきてくれた毛布を肩から掛けた状態で、正座。
「若い身そらで自分を大切に……」
「だって、ロンギヌスの槍に対抗できない……」
「そんなもの、大事な家族(←予定)に誰が使いますかっ」
「もっと自分を大事にして……」
「はい……」
聖女さまの涙ながらの説教は五時間に及んだ。
ちなみに、盗賊の短刀とスリケンは偽物だった。
三万イエン(円)で買えるSSRのアイテムなんてどこにもないのである。
桁が二けたから三けた違うかな。




