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第三話、後輩ちゃんと聖騎士くん

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「整列っ」

 女性隊長の声がする。

 今聖女さまと聖騎士くんは、魔獣の討伐に瘴気に覆われた森に来ていた。

 隊長に、聖騎士が四人、とそして聖女の構成の一小隊である。

 大型の魔獣が出たという報告を受け出撃してきたのだ。



「せんぱあい、よろしくお願いしますう」

 後輩ちゃんが、少し高い声でふんわりと答えた。

 今回の討伐から新しく参加した、新人である、”後輩”ちゃんだ。

 身長180センチ、たれ目で、少し丸顔の穏やかそうな女性である。 

 薄いピンクの髪がふわりと揺れる。


「うん、後輩ちゃんは初出撃だね、まあ緊張しないように、周りの先輩の動きをよく見てね」

 聖騎士くんが言う。

「はあい」

 後輩ちゃんが鈴を転がすような声で言った


「むっっ」

 聖女さまの眉間にしわが寄る。

「ふうむ」

 小隊長様が意味深な視線で二人を見た。


「せんぱあい、ここをみてくださあい」

 聖騎士が纏う白いフルプレートアーマー。

 そのわきの部分のひもを指差す。

 彼女の鎧に窮屈そうに押しつぶされた、豊かな下乳を感じさせる部分だ。


「少しきつそうだね」

 聖騎士くんが鎧にひもを結び直した。


「ちょっ、聖騎士くんっ」

 聖女さまが急いで間に入る。


「あっ、聖女さまあ、はじめてですけどお、よろしくお願いしますう」

 後輩ちゃんがニコニコと答えた。


「うんうん、このグレードアックスはね」

 同じように、聖騎士くんの他二名の男性聖騎士にちやほやされていた。

 聖騎士くんは意識してないけど。

 

「くっ、あなどれないっ」

 聖女さまは、後輩ちゃんの大柄だが豊満な体を見ながら、自分のロリ(ババア)な体型を見直した。

 なんだろうか、大人な身体に少女系というか、危うい魅力があった。


「ハハハ」

 何故か、凛々しい系の女性隊長が乾いた笑いを浮かべていた。



 バキバキイ

 森の木が倒れる音だ。


「討伐対象と接敵」

 女隊長の前に、巨大な熊、大きさは二階建ての建物くらいか。

 首元に光る朱い輪。

「聖女さま前へっ、聖騎士隊抜刀っ」

 女隊長が言った。

 ちなみに、パーティー構成は、タンク、聖女様、アタッカー、女隊長と後輩ちゃん、アタッカー兼ヒーラー、聖騎士である。

 聖騎士は、回復魔法が使えるのだ。


『ふふふ』


「報告とおり、紅月ノ輪熊クリムゾンムーンサークルベアね」

 聖女さまが、”福音を鳴らす者”を意味するベルの紋章の入った大楯ラージシールドを前に一歩踏み出す。この紋章は神に認められた聖女にしかつけることは許されない。

 

 大楯ラージシールドの裏に装備された神選武器である、巨大杭打機パイルバンカー

 ガジャキッ

 聖女さまが、ポカ〇ス〇ットの350ml缶くらいの大きさの聖薬莢を、巨大杭打機パイルバンカーの薬室に放り込む(チャ-ジング)。


 ア:安全

 タ:単発

 レ:連発

 エ:遠距離


 カチリ

 セレクターレバーを四つのカタカナの、アからタへ。


『ふふふふふ』


 巨大な熊がこちらに気づいた。


「防御力上昇っ」

 聖女さまの体が白く光る。


 熊は二本足で立ち口を大きく開けた。


「!、聖結界ホーリーサークルっ」

 隊員たちを中心に光の聖結界が展開。

 効果は、精神系攻撃耐性だ。


 グルグアアアアAAAA


 紅月ノ輪熊クリムゾンムーンサークルベア恐慌咆哮テラーハウリング

 最悪、恐慌状態で行動不能になる。

 耐えた。

 流石、経験豊かな聖騎士たちだ。


 熊が腕を振りあげた。


『あははははははは』


「受けるわっ」

 聖女さまが盾を構え踏ん張る。

 

 ガスウウウ


「くっ」

 受けた。

「えっ」

 後ろから飛び出すピンクの髪。


『あはハハハハハハ』


 その時、巨大はグレードアックスを構えた後輩ちゃんが熊の前の飛び出した。

 つり上がったたれ目はぎらぎらとぎらつき、大きく開いた口で雌叫めたびをあげる。

 聖女さまがかけた聖結界の加護がはじけた。


 ザンッ


 盾に止められていた腕を大斧で斬りつぶす。

 バシャアア

 返り血でピンクと全身が赤く染まった。


 ちなみに大斧の名は、塹壕バンカーバスターつぶし。

 血サビの浮いたなまくらな刃は斬るというよりつぶすというのが正解だ。  


 後輩ちゃんが熊の爪を受け怪我をする。


「聖騎士たちは後輩ちゃんの回復っ」

 女隊長の命令が飛ぶ。


「ちょ、ちょっと」

 後輩ちゃんの攻撃で、熊のタゲを取れない聖女さま。

 タンクはタゲを取って耐える役割ロールだ。


 その間にも、一発殴ったら一発殴り返すという攻防を繰り広げる熊と後輩ちゃん。


『GyaハはハハハハハはあああAAAA』


 後輩ちゃんの片腕が曲がってはいけない方向に曲がっている。

 それに構わず両腕で斧を振る後輩ちゃん。


「う、うわあ」

 聖騎士の誰かが思わず声を出す。


 熊も後輩ちゃんも全身血塗れだ。

 壮絶な殴り合いもついに終わりが来る。

 熊ががたまらないとばかりに逃げようとして後ろに下がった。


「逃がさないっ」

 女隊長のチェーンソード、鞭のような鎖に刃をつけた伸びち縮み自在の剣をのばしながら振るう。

 熊も片足にまくいつき引いた。


 ザザンッ


 ギィギャアアアアア


 片足が切り落とされ尻もちをついた。


「聖女さまっ」

 女隊長だ。


「分かったわっ」

 尻もちをついた熊の前に滑りこみ心臓《真核》に向けて杭を打った。(パイルバンク)

 ズドオオン

 魔核に大きな穴が開く。


「ひーひっHIっひ」

 後輩ちゃんが、塹壕バンカーバスターつぶしを横に振り、熊の首を落とした(つぶした)。


「終わったわね、えっ」


 ブウン、ガキィ


 後輩ちゃんの斧を盾で受ける聖女さま。


「後輩ちゃんは、精霊憑きの狂戦士バーサーカーよっ」

「聖女さまっ、聖母マザーソングの歌をっ」

 女隊長が叫ぶ。

 催淫剤で猛り狂ったオークですら鎮めることが出来る鎮静聖歌。


「分かったわっ」


 ドオオン


 今度は聖騎士くんに殴りかかり、地面に小さなクレーターを作っていた。


「ア~ア~⤴ア~ア~⤵」


『…………ハれっ」

 後輩ちゃんが正気に戻った。

 周りを見回す。

「また、やっちゃいましたあ?」

「ああ、派手にやったよ」

 女隊長がため息をつきながら答える。

「てへっ」

 自身と熊の返り血で真っ赤に染まった後輩ちゃんが可愛く笑った。


「うぐう」

 聖女さまや聖騎士はドン引きの中、

「怪我は大丈夫?」

 平常運転の聖騎士くんである。


「はいっ」

 後輩ちゃんが、元気よくこぼれるような笑顔を浮かべた。








 血塗れで。

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