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銃力と  作者: 沓月
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ep61 永遠という概念

 ショウは1人屋上で涼んでいた。女性陣への配慮というか、異臭弾の残り香を気にしてか、夜風で頭を冷やしていた。ここに住みついていたときは屋上なんて滅多にいかなかったのだが、思ったよりも感傷に浸れて少し気持ちがよかった。酒も煙草もしないので雰囲気も風情もないが、ただ真っ黒の夜空を眺めていた。


「少しは労ってくださってもいいんじゃないでしょーか?」

 考えることもなく空っぽの頭の中に後ろからの声が響く。振り返るとネイがいた。


「毎回助けられてばっかりで感謝してる。でも、餅は餅屋っていうしな。なんでもできるお前が悪いっちゃ悪い」

「キスで感謝を表してくれると嬉しいんですがね。もちもちのほっぺでもいいですよ」

「いまさら言うことでもないんだけどさ、お前に会えてよかったよ」

「なんですか、それ(笑)」

「なんか、ネコはさ、命張って前線で戦う職種じゃないのに、引きずり出しちゃって悪かったなあと」

「私のことなんていいですよ。もはや運命共同体ですから。ずっと影から外を眺めるのでもよかったんですけど、これはこれでって感じです。まあ、前よりはちょっとばかり危険になったので、さっきの話じゃないですけど、自分の死に方くらいは考えておこうかなあ、と」

「俺、お前に裏切られたら死ねる自信がある」

「ショウさんを裏切った奴は私が見つけ出して皆殺しにします。あ、もちろん、私自身も例外じゃないです。だから、大丈夫です。安心してください」

「おっかなくて安心できねえよ……」


 2人は、そこで声を上げずに合わせたように静かに笑うのだった。



 今度は後ろから足音がした。振り返ると、ミヤが近づいてきていた。


「どうしたんですか?」

 2人の時間を邪魔されて怒るかと思ったが、ネイは先ほどの会話で満足したらしく、訪問者に応対した。


「あなたたち、に、お礼を、言おうと、思って」

「別にいいよ。俺らもアイツのおかげで助かったんだから。むしろこっちがお礼を言わなくちゃ」

「ミサちゃんに優しくしてくれてありがとう。ワタシじゃあそこまで言えなかっただろうから」

「妹のほうが大人びてんだな。どっちが姉なんだかバグるわ。おっと、比べるのはあんまりよくなかったかな。様子はどんなだ?」

「あなたのベッドで寝てる。ユウさんが移動した」

「なんか、明日俺が怒られる予感がする」

「私が寝たかったのに」


 半分ギャグで半分マジなネイの合いの手に、いつも無表情なミヤが少し戸惑ったような表情を見せた。


「まあ、お節介みたいなもんなんだけど、ミサ(あいつ)のこと、しばらく注意した方がいい。感傷的なまま死に場所を求めないとも限らないからな」

「あら、ショウさん、ご経験がおありで?」

「まあ、そんなとこだ」


 ネイはなんとも言葉に正確な女だ。兄貴たちと別れて1人になったとき、衝動に駆られてとにかく戦場を駆け回った。もう死んでもいいやって、半ば自暴自棄で狂ったように引き金を引いた。結局、生き残って、勝ち続けてしまってしまった。そのおかげでかなり強くなったのも事実ではある。そんな過去を少しばかり思い出してしまった。ネイはそのことを推理し的中させたようだった。


「それと、あとひとつ、話しておこう、と思って」

「なんだ?」

「あなた、いや、あなたたちって、この世界どうなると思う?」

「さあな、この天下を治めた奴が決めるんじゃないか。それに興味がないと言ったら嘘になる」

「私は、最近の動向は類を見ない程凄まじいです。BBが襲われ、有名ハッカーが死んだり、姿を現したり。転換点にきているのではないかと。それに、不況の後は好況が来るように、争いの後は平穏が来ます。その前触れだと思いますかね」

「師匠も(次の世界に)期待していると言っていた。ワタシ、それ、見れるかもしれない」

「見れるってことは、あなたがするわけじゃないんですか?」

「ワタシたぶん、命、永遠。いつ死ぬか、わからない。いつになっても死ねない、かも。だから見れると思う。だから気になった」

「特異体質ってやつか?」

「そう、かも」


 新たな情報タイプの登場にネイの質問攻めが始まる。


「ちなみに今何歳いくつですか?」

「17」

「なんで永遠だと思うんですか?」

「ワタシ、LPない。武器、出せない。でも、ヒールは無限。時間の感覚、も変。それに、感情があんまり、動かない。あと、前世の記憶、2人分ある」

「ちょっと変わったかわいそうな女の子っていう可能性はないんですか?」

「なんか、ワタシ、生きたいっていう強い衝動がある。たぶん、前世の記憶の影響。一人はサラリーマン。家族を残して早くに病気で亡くなった。もう1人は小さな女の子。ボウトの暴動に巻き込まれて亡くなった。そうやって、もっと生きたかったっていう願いでワタシができてる、そんな感じ」

「銃じゃ死なないし、LP切れも起こらないから寿命が来ない、そういうことですか?」

「そう」

「質問なんですが、体の成長や老化はどうなっていますか? 感情が動かないのは、レパートリーが乏しいという可能性は?」

「今までは成長した、17年生きてる分は。お兄ちゃんのときも悲しいけど、涙出なかった」

「すみません、質問が悪かったですね。永遠を生きるなら、一喜一憂していては大変ですしね。感情の起伏があまりないというほうが都合がよさそうです。他に知っている人は? 私たちに話しても大丈夫なんですか?」

「みんな知ってる。師匠はこの話からチートの研究、進んだって言ってた。あなたたちくらいしか頼るとこ、ない。手付金みたいなものだと、思って。これくらいしか、ない。これじゃ、だめ?」

「いえいえ、そんなものなくても、私たちはあなたがたに協力しますよ。この話は信頼の証と思っておきます」

「それの真偽は置いといて、俺は信じるよ。この世界、結構バグがあるからな」


 アキもそうだが、今日戦った弦木も正直バグだ。人間離れした体格とパワー、それに精神。天からの授借り物はバグで、後天的なものはチートとする括りにも議論の余地はあるだろうが、取り敢えずそれが今のところのショウの線引きだった。


「永遠の命なんて、俺とは真反対だからよくわからんわ。まあ、それはそれで悩むことがあるんだろうな」

「永遠でも、その永遠の駆けだしって、二度とないめっちゃ貴重な時間だと思います。後から振り返れば、きっと一番楽しかったと思えるときなんじゃないでしょうか」

「そんなこと、言われたの、初めて」

「で、これからどうすんだ?」

「ミサちゃんと、相談する」

「そうだな、せかして悪い」

「ショウさん、今の会話、死ぬほど下手ですよ」

「うるせえ」


 今度は3人で、静かに笑った。


「そろそろ私は寝るとしましょうか。今日は疲れました。明日からもやることが山積みですし。ショウさんもちゃんと休んでくださいね」

「おやすみ」

「おやすみでーす」


 ネイは元気よく挨拶を返して去っていった。ミヤもペコっとお辞儀をしてから、ネイについて行った。

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