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影人  作者: レト
6/20

5「風華」


遡ること、風華との出会いの場。


『よし、妾の使い方を教えてやろう』


そう言いながら先程から触れていた短剣から手を離し、少しばかり離れてこちらを見る。


「風華は風を使うんだよな?」


『 うむ、妾は風を操る術を持っておる。主に教えるのは初めに見せたこれじゃ』


そう言って指を軽く降る。

...

.....


「...何もならないんだ(パチンッ)...!?」


何も起きず、一体何なのだろうと質問しようとしたところで、風華が指をパチンと鳴らした。

指の音と同時に、斬撃が床から飛び出し呆気に取られる。


「...おぉ、」


感激する俺をよそに風華は続ける。


『 風切り、とでも言っておこうかの。斬撃を好きなところに設置、そして任意のタイミングで発動可能じゃて、どうじゃ?なかなか便利かろう』


使い勝手などを考えるとかなり良さそうだな。

風華の言葉に何度も頷き、早く試したいという衝動に駆られるが、風華は待て待てと止める。


『この能力は便利なんじゃがな、、ちと難儀な条件があるんじゃよ、それもこれもにっくき影師どものせいなんじゃが、』


そう言いながら、苦い顔のままこれは大切だからと念を押され聞かされた。

この技を発動する条件。

...

……



--------



今俺は、先程超スピードで突撃してきた久留見さんの攻撃を短剣でいなし、お互い向き合っていた。


「驚いてますよ、、何がともあれ、まずは〝1〟ですよ」


俺がそう言うと、久留見さんは不思議そうな顔をしたが、今は気にしても仕方ないと直ぐに真剣な顔に戻った。

轟音と共にサイドステップ超速接近、右拳を俺めがけ振り下ろしてきたが、それは後ろに軽くステップし避けることに成功。

先程と違い力加減が上手くでき、自分の体を思い通り動かせたというなんとも言えない高揚感に包まれるが、今はその高揚を無理やり抑え、落ち着かせる。

さらに一歩下がり、様子を見ようと足を後ろにやろうとするが、久留美さんはそれを許さないと言わんばかりに追撃を仕掛ける。

振り下ろした右拳を地面に突き指し、それを支点として左裏拳が迫る。

嘘だろおい...

自分の体制を、振り下ろされる拳に合わせ下げていき、右腕が地面から離れているのを確認して久留美さんの足側に避ける。

左拳はそのまま振り払われ、こちらに正面がむくのに合わせ短剣を突き立てる。

これは当たった...っ!?


「カハッ...!?」


突如横腹に衝撃を感じ、自分が蹴られたと言う事実に気づくのは、先程居た場所から数メートル先に飛ばされた後だった。

めちゃくちゃだ、、宙吊りの体制から蹴りをくり出すとか。

でもいい、これで〝2〟だ。

内心ほくそ笑んで、横腹を抑え前に視線を向ける。

そこには、拳が...……

そこからはほぼ反射だった。

即座に剣を構えバリアをし、後ろに飛ぶことで威力を少しでも減少。

そして飛ばされると同時に足元に風切りを仕掛け後ろの壁に衝突した。

...

……

...バカいてぇ、、

誰か、何か言ってるようだが、うまいこと声がききとれない、全身が痛い。

まだだと自分を奮起し、重々しいまぶたをゆっくりと開け目の前の敵をみすえる。


「...風切り、(ボソッ」


久留見さんが1歩踏み出そうとした瞬間、風切りを発動、久留美さん自体に当たりはしなかったが、武器の先にはかすめたみたいだ。

強いけど、ほんと使いにくい、、

霧切さんが近くまでよって来てたのか、目の端で立たずんでいるのが見える。

ゆっくりと立ち上がり、短剣を握る拳に力が入る。


『 この能力を使うためにはな?』

「...だからいったじゃないですか?」


あの時の風華の声が、言葉が脳内で流れる。

俺の技の、ふざけた条件。


『 弱くても強くてもいい、攻撃をくらわないとダメなんじゃよ』

「〝1〟ですって」


風切り、自身にいかなる形でも攻撃を受けた分斬撃をストックできる。

ストック数、3つ。



--------




「なに...言って...」


彼の言葉の意味がわからず、困惑してしまう。

瑠美や直也の方を見るが2人とも同じように困惑の色が見て取れた。

困惑の中誰も動けず、その沈黙を破ったのは原因の発端である黒田君だった。

だがそれは追撃や、虚勢なんてものではなく、戦闘状態の解除、力無く崩れ落ち地面に当たる音だった。


「...お、おい!!」


直也が走って駆け寄り肩を何度か叩いたり揺すっているのを見て、ハッとして私と瑠美も駆け寄った。

戦闘服だし見たところ派手な怪我とかはないことに安心し、医療系のアーツ持ちの鈴谷さんのところに向かうことにした。

黒田君は、自分が悪いからと瑠美が背負って鈴谷さんの所まで歩いていった。

部屋についたら、黒田くんをモニターの前の椅子に寝かせ、鈴谷さんにある程度説明をした。

どうやらモニターで見ていたらしく、笑顔のまま少し休めば問題ないですよとの説明を受けた。


「この後はどうする?」


2人の方を見て、彼が起きるまで待つか、なにか用事があるなら一旦解散するか聞いてみた。


「私は2人と模擬戦したい!」


直也を見ると、少し呆れたように笑っていた。


「なんか上手く言えないんだど...そのなんかめっちゃ不完全燃焼なの!」


瑠美がぐぬぬと唸りながら説明する。

直也は首を傾げていたが、私はなんとなくだが分かってしまった。

瑠美としては今から勝負!と言う盛り上がったところで彼に限界が来て不完全燃焼なのだろう。

かく言う私も、あんなもの見せられてたぎらないほど枯れてはいない。


「やりましょうか、最近してなかったし」


「はぁ!?雫まじかよ!?」


私が乗るとは思っていなかったらしく、直也は驚きの声を上げた。


「おぉ!!しずしずノリノリだね!早くいこ!!」


私の手を引っ張り早く早くとしてくる。

こうなった瑠美はどれにも止められず、グチグチ言いながら直也も後についてきていた。



-------



「...あぁ、、」


目が覚めるとそこは真っ黒でした。

なにか目元に乗っているらしく、どけようと手を動かすが...痛くて手が動かない。


「あ!...黒田さんお目覚めですか?」


声が響くと、トタトタと足音が近づき目元のタオルをのけてくれた。

暗闇から反転、刺すような眩しさに思わず目を細め、顔をしかめる。

何度か瞬きをし、声の主である鈴谷さんに声をかける。


「...えと、、ありがとうございます。」


「いえいえ!体調はどんなですか?」


そう聞かれ自分の状態を確認したいのだが、、


「...全身が痛いです。」


俺がそういうと少し困った笑顔のまま、鈴谷さんはゆっくりと説明をしてくれた。


「ですよね、分かりやすく言いますと、黒田さんは今全身酷い筋肉痛なんですよ」


「...筋肉痛??」


「ですです!」


なんじゃそりゃと思ったが、よく考えると負には落ちる。

昨日までろくに運動もしてない一般人が、特殊能力で動けるようになったとはいえ結構無理をした自覚がある。

そりゃ、体がついてこないのも当たり前か。


「初めはみんなこんな風になるんです?」


鈴谷さんに問うと、首を横に振った。


「普通の人はなりません。なんと言えばいいのか、黒田さんは動けた。いや、正確には動けすぎてたんですよ」


なるほど、わからん。

俺の表情を読みとったのか、鈴谷さんはアワアワと手を振りながら補足を続ける。


「普通の人は戦ったことなんてないですから、攻撃を避けたり反撃したり、そういう動きがでできません。でも黒田さんはできてた、出来ちゃってて、普通の人が5点ならいきなり10点を叩き出したから反動が来たってことです」


おぉ、俺すげぇ


「はい!凄いですよ!とても!!」


そう言われ頭を優しく撫でられる。

口に出てたか、


「何か格闘技とかなさってたんです?」


「万年帰宅部員ですよ」


俺が動けたことに、恐らく何かしてたのだろうと踏んでたのだろうが、お生憎基本家に直帰系男子のため、部活なんぞしてない。

食い気味に伝えると鈴谷さんはくすくすと笑い撫でていた手を頭から離した。

少し名残惜しいのは心の中に留めておいた。


「では御三方を呼び戻しますね!黒田さんが起きるたら教えて欲しいと伝えられておりますので」


そう言いながらモニターをゆびさす。

目線を向けると、人とは思えぬ速さにどんちゃんしている3人が映っていた。

...ありゃ人じゃないな、人外万物びっくりショーかなにかだ。

しばらくすると賑やかしい声がこちらに近づいてくる。


「くろだっち!どう!」


そう言いながら上から近々で顔を覗き込んでくるのは久留美さん。

お前な、俺がびっくりして起きあがってたら危ないだろ、、


「どうと言われても、、」


「...あのなあ、瑠美。見たらわかんだろ?どっからどう見ても大丈夫じゃねぇだろこれ」


そう言いながら槍で足をつついてくるのは霧切さん。


「...フォローしてくれたのは嬉しいんですが、つつかないでください」


そういうとケラケラと笑いながら槍を足から離す。

俺は今この瞬間、心の許さないノートに霧切直也という名前を深く刻み込んだ。


「ほら、2人ともふざけないの。黒田君、起き上がれそう?」


川崎さんからそう聞かれ、ゆっくりと起き上がろうとするがめっちゃ痛い。

歪む顔を見たからか、そのままでいいと川崎さんから静止される。


「...いきなりなんだけど、黒田君。黒田君の能力の説明をしてもらってもいいかしら?」


ですよねぇ、、

少しテンションが上がり、結構派手に暴れた自覚はあるためそりゃ聞かれるわなとなる。

特別隠す理由もないため、自分の風切りについて説明をした。

すると、反応はふたつに別れて...


「攻撃を受けないといけないのね、、」


「微妙「だな」「ね」」

「強すぎ!!...ってあれ!?」


特に意味はないが、久留美さんには今度ドーナツでも買ってあげようと心に決め、2人のコメントを待つ。


「バカ瑠美が...あのなぁ、そもそも発動するために条件があるってだけでも使いずれぇのに...それが攻撃にあたるってのも糞だろうが」


そう吐き捨てられるが、別に否定はしない。

そんなことはわかっているから。


「でもでも!!私の武装に傷つけたんだよ!!つおいよ!!」


全身を使って強いと主張をする久留美さんだが、それでもと川崎さん続ける。


「確かに威力は破格。同レベルと1ランク上には確実に致命傷になると思う。2ランクはまちまちって考えても凄いわ。ただ直也の言うとうり、条件がちょっと、、」


「ぅぅぁぁぁ、そんなことないからね!くろだっち!」


数々のディスりにフォローを入れてはくれるが正直ぐうの音も出ない。


「バカ、ここははっきりいっとかねぇとだろうが」


「まぁ、黒田君なら分かってはいると思うけど、この能力のいちばん良くないところはストック数よね、」


そこまで言われ俺も頷く。


「そうなんですよ、戦闘前に貯めて備えることもできるんですが、3なんで使い道は選ばないと」


俺がそう言いながら唸っていると、川崎さんは微笑みながらでも、と続ける。


「そこまで自分でわかっているなら大丈夫なのかもしれないわね。見たところ黒田くんは状況把握能力が高そうだし、戦闘中もよく考えてる」


そう言われ少し照れくさいが素直にありがとうとつたえる。

その後は少し雑談のようなものが始まり、団欒としていると入口の戸が開かれそちらに皆の目線が集まる。

開いた主は柊ノ木さんだった。


「…おいおいどういう状況だ、なんでお前がいんだよ新人」


「…俺がいちゃ悪いんですが、柊ノ木さん」


俺の物言いに3人はギョッとしたが、川崎さんが事の流れを柊ノ木さんに説明をする。

その間俺は霧切さんに柊ノ木さんは偉いんだぞ!と、説教を受けていた。


「なるほど、そういう事か。まぁ、なら話は早い。川崎、霧切、久留美3名に命じる、今日から黒田を最低限使えるまで底上げしろ。それまで任務はしなくていい」


久留美さんと川崎さんは了解ですと、元気よく答えたが霧切さんは一瞬ギョッとして苦々しく了解ですと答えた。


「…人手不足なのに3人も俺なんかにさいて良いんですか?」


俺がそう言うと柊ノ木さんは嘲笑し答える。


「阿呆が、人手不足だから実力者を指導に付けて徹底的に使えるまで最速で上げるんだろうが。ただえさえ危険が伴う仕事、半端なやつはポイッだ」


そう言われ納得し、あとは頼んだぞーと言いながら柊ノ木さんは退室した。


「…取り敢えず、よろしくね黒田くん」


「…よろしくお願いします」


川崎さんによろしくと返し、その日はまともに動けなかったため、解散することとなった。

俺?動けねぇから久留美さんにおぶってもらったわ。

馬鹿恥ずかしかった、、




-------



あれから部屋に戻り沈むように寝た。

早く寝たせいで変な時間に目が覚め、現在2時。


「…寝れねぇ、」


何度も目を閉じてみるが眠気来ることがない。

こりゃ無理だな、少し気分でも変えようと夜風をあびながら散歩することにした。

身体中めっちゃ痛いがなんとか動く程度まで回復し、ぱぱっと着替えて特に意味もなくプラプラと歩いていた。


「…喉乾いたな」


思えば昼間から何も飲み食いしてない。

適当にコンビニでいちごオレと菓子パンを買い、広場のようなところにあったベンチに腰を下ろした。

甘いものは至高だ、

モサモサとパンにかぶりつき、いちごオレを飲んでいると急に後ろから光を照らされた。


「君、こんな時間に何してるんだ」


そこでハッとする俺、そりゃ未成年がこんな時間に歩いてたら怪しいか、、

そう思いながら、偽警察官に目を向けることも無く言葉を投げる。


「何もしてませんよ、紫葵さんも立ってないで座ったらどうですか?」


俺がそう言うと、むぅーと言いながら俺の横に小走りで近づき腰を下ろす。


「全くつれないなぁ君と言うやつは。良くない、ひじょーに良くないぞ」


そう言いながらプンプンとしている紫葵さんを見ながらいちごオレを飲む。


「騙すならちゃんと騙してくださいよ、声で分かりますからさすがに」


俺がそう言うと、なるほどと手を叩く。


「ところではじめは何を食べてるんだい?」


そう言いながら俺が食べていたホイップ入りのメロンパンを指さす。


「人間の欲望と砂糖をぶち込んだ至高のパンです」


メロンパンである。


「ほへー、美味しそうだね?」


そう言いながら少しヨダレを垂らしている。

俺はそれを見て向こうのコンビニを指さしてそこに売ってあると伝えた。


「そこのコンビニに売ってるんで買ってきたらどうです?」


「いや、いいやだって…」


変なところで言葉を区切り、なんなんだ?と首を傾げると同時に、俺の手元にあったメロンパンに紫葵さんはかぶりついた。

……は?


「ななななにしてんすか!?」


慌てふためく俺を無視して口元についたホイップを手で拭い口元に運ぶ。

謎に妖艶なその仕草に俺の熱はとんでもない速度であがり加速していく。

そんな俺の事なんぞ露知らず、紫葵さんはモゴモゴとしながら喋り出す。


「はいにいふひふやようはんへないほ?(買いに行く必要なんてないよ?)...んっ、だって目の前にあるんだから、うん、なかなか甘さに物言わせたパンだね。ありがとうね、はじめ」


「いや!?いや、いやぁぁぁ…」


うぐぐと呻いているおれに気づいたのか、紫葵はニヤリとし、ただえさけ隣同士で近いのにさらにさらにとちょっとづつ距離を詰めてくる。


「なになに?はじめは何を考えてるのかなぁ?むふふ」


久留美さんのそれとは違う、明らかに意図してからかい、反応を楽しんでやがる!


「全くウブだなぁ、可愛いねはじめ」


黒田はじめ…轟沈。

一遍の悔いなし。


「…勘弁してください、」


頭を抱えうなだれているのを見て、ケラケラと笑いながら背中を叩いてくる。


「ごめんごめんwからかいすぎたね」


笑いすぎたのか目元に涙が溜まっており、それを拭いながらも止まることの笑いに、俺は再度轟沈していった。


「…てかなんでいるんですか」


「なんでって、そりゃはじめに会いに来たに決まってるでしょ?」


本当に不思議そうな顔をし、首を傾げている。

仮にも敵の本拠地に近いというのに無防備すぎじゃないか、?


「それでそれで?影人にはなれたのかな?」


「…無事、と言っていいかは分かりませんが、取り敢えずはなれましたよ」


俺がそう言うと、紫葵さんはうんうんと満足そうに頷いた。

どんなことがあったのか一通りを説明し、それを紫葵さんは楽しそうにきいていた。


「そうかそうかそんなことがあったのかぁ」


「まぁ、なるように、落ち着くところに落ち着けそうです」


そうはそう言って、いちごオレを飲み干し少し離れたゴミ箱に投げ入れる。


「でも短剣って、なかなかはじめは命知らずなんだね?」


そう言われ首を傾げる。

どちらかというと慎重で、安全第一タイプのはずなんだが、、

俺の表情で意図を察したのか、紫葵さんは笑いながら続ける。


「シャドウアーツってのは潜在の奥にある物を形にした姿が顕現されるんだよ。極端に言うと、単純な人は火力武器、慎重な人は槍や遠距離とかね?短剣って、相手の懐に飛び込まないとだし、かなりリスキーなのに得られるダメージも品薄。近距離も近距離、こんなの命知らずだよ?」


「...なる、ほど?」


俺は納得はできないが言ってることはわかるからとりあえず頷いた。


「それに慎重とか自分のこと思ってそうだけどね、刀先を喉に当てられたり、いきなりの実践で攻撃仕掛けたりはじめの行動から慎重なんて感じれないよ?」


「うぐっ、」


そう言われ言葉を失う。

それを見て紫葵さんはくすりと笑い、俺の頭に手をのせ、ゆっくり動かす。


「私のために頑張るのはいいけど無理はしないようにね?短剣って聞いて少し心配だよお姉さんは」


こそばゆいが嫌ではないため大人しく頭を撫でられる。


「...無理なんてしてませんよ」


「はいはい、そういうことにしといてあげるね?」


軽くあしらわれ、頭から手が離れる。


「それじゃ今日はこれくらいにしよっか、もう戻りなはじめ」


そう言いながら紫葵さんは立ち上がり、少し離れる。


「最後にひとついいですか?」


立ち去ろうとする紫葵さんを呼び止め、ずっと気になっていた事を口にする。


「んー?なにかな?」


「...紫葵さんはどうしてそんなに影人について詳しいんですか?」


影人にはいり、話を聞いていくとやはり偏った説明が時々あるのだが、紫葵さんは魔女側なのに、影人側の意見や内情にも詳しすぎるのではと思ったのだ。


「なるほどなるほど、まぁ気になるよねー」


そう言いながらうんうんと頷き、にししと笑って続ける。


「それは次教えてあげる、どうしても知りたいなら記録室に行ってみて?」


そう言いながら今度こそ止まることなく、紫葵さんはどこかへ歩き出していった。


「...記録室。」


明日空いた時間によろうと決め、俺は自室へと戻って長い長い一日を終えた。




『むっすー』


「...風華?」


『むっすーなのじゃ!』


「...あの、、風華さん?何があったんです、?」


『...妾弱くないもん、、使いづらくないもん、お主は他のおなごに鼻の下を...』


「...えと、、」


『なんでもないのじゃ!!ばかもの!』

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― 新着の感想 ―
扱いづらい能力はロマンであり物語の展開を面白くする。今後が楽しみだ
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