2「覚悟」
影人などに関してある程度の説明を聞きながら、俺たちは学校近くの公園へ向かった。
公園つくと、俺はベンチに腰かけ、紫葵さんは喉乾いたーと言いながら自販機の方へ駆け出して行った。
「...影人か、」
紫葵さん曰く、影人とは穢人を退治する集団のことで、俺が穢人達と戦いたいのならばその組織に入らなければいけないとの事だ。
ということは紫葵さんは影人なのだろうと思い聞いてみたのだが、影人では無いという。
どういうことなのか聞こうとするのだか、途中雑談を混ぜられたり上手いことかわされたりするため聞くことは出来なかった。
ぐぬぬと唸っていると首筋をヒヤリとした感覚が襲う。
びっくりして思わず立ち上がり振り返ると、炭酸飲料を両手に持ちニヤニヤした紫葵さんが立っていた。
「...何してるんですか、?」
「そんなに怖い顔をするなよぉ、ちょっとした可愛いジョークじゃないか」
ケラケラと笑いながら、ジト目の俺をスルーした紫葵さんは、俺が先程座っていた隣に腰を下ろす。
「ほいっ」
突然片方の手に持っていた炭酸飲料をこちらに向かって放り投げてきた。
びっくりしたものの何とか受け止めることに成功した俺は、蓋を開けながら彼女の横に腰掛ける。
「それで、話してくれるって言って詳しいこととか聞いてないんですが?」
「おいおい、もう本題かい?せっかちは嫌われるぜぇ?」
紫葵さんは足をプラプラとさせるが、こちらの表情を見た後、ゆっくりと口を開いた。
「頭がかたいなぁ、全く。影人への入り方を知りたいのかい?」
「...それもですが、さっき紫葵さんが言った紫葵さんは影人では無いってのはどういうことですか?」
影人、なんて組織聞いたことも見た事もない。
勿論入り方も知りたいのだが、今何より気になったのは紫葵さんが何者なのかと言うところだ。
「あんまりうまく説明できるか分からないんだけど、それに落ち着いて考えたら気が進まないし。」
「それでもお願いします」
そう言うと観念したのか、紫葵さんは少し気まずそうにしたが、右の人差し指をちょんと立て影を使って説明しだした。
「穢人には特別な力があるんだよね。それはさっきの見たらわかるでしょ?炎とか人間に使えないし」
そう言われ先程の戦いを思い出す。
確かにあんな芸当人間には無理だろう。
「分かりやすく例えると魔力?的なのが穢人にはあるの。ここまではOK?」
「はい、、穢人には魔力がある。だからあんなことができるけど、人間にはそれがないってことですよね?」
今ある情報を整理しながら口に出す。
そして口にしながら違和感を覚え、、
あれ、、
なら紫葵さんって、、
「...穢人、?」
...ひとつの結論に行きバッと紫葵さんの方を見る。
紫葵さんは、意図を察したのかため息を吐き、俺の脳天にチョップをかましてきた。
「こーら、結論を急がない。頭の回転がいいのはいいことだけど結論を急ぐのは感心しないぞ?」
「...すみません」
少し痛みを感じる頭をさすり、続きを聞く。
「ちなみにはじめの予想は半分当たり...なのかな?正確には人間にも魔力はあるんだよね?それを感じることができるかできないかの違い」
驚き目を開き、自分の体を見てしまう。
もちろん何か感じたりとかは出来ないが、影人になると紫葵さんのようなことが出来るかもしれないと思うと、少しだけ気分が高揚した。
「影人ってのは、魔力を感じるようになった人のことを指すんですか?」
俺がそう聞くと、紫葵さんは首を横に振り俺の腕を指さした。
腕には、先程紫葵さんにつけられた腕輪があり、自然と目がいく。
「さっきの話覚えてる?穢人は石かそう言う道具を落とすって言ったでしょ?」
先程した会話を思い出し頷く。
「石や道具には穢人の使う魔法が刻まれてるの、石の方を武器に変えることによって影人は穢人に対抗してるのよ」
いまいちピンとこず首を横に傾げると、紫葵さんは何度か横に揺れ口を開いた。
「ようは、人間に魔力は感じれないけど存在はしている。だから魔法が刻まれた石に魔力流して武器にしているって事よ」
いまいちピンと来ないがなんとなくは理解は出来た...と思いたい。
「その武器をシャドウアーツって言って、それらを駆使して戦うのが影人なの」
ここまで説明を受けるが、やはり疑問が残る。
「...やっぱり紫葵さんは、穢人?なんですか?」
そう聞くと少し俯き、悲しそうに笑う。
「...まぁ、影人になるなら知っておかないとだし、なんか楽しそうって理由で進めてる私が悪いんだけど、これがあるからあんまり話したくなかったんだよね」
まぁ、仕方ないけどと紫葵さんは笑い、少し間を置いて真剣な顔でこちらを向いて座り直す。
「穢人、影人、そしてもう1つ別の呼び方をされている陣営があるの......私は魔女って呼ばれてる」
「ま...じょ?」
聞こえた言葉を復唱すると、彼女は静かに頷いた。
「そう、魔力を感じることの出来る人間の事を魔女っていうの。ちなみに魔力の感じる有無は後天的と先天的があるんだけど、私は後天的な方ね」
「...魔女ってのはどんな集まりなんです?」
「魔女の目的は穢人を倒し魔力を吸収することなのよね、魔女は影人と違って魔力の上限をあげることができるから」
つまり...影人と目的は違えど敵は一緒って訳で、紫葵さんが話したがらなかった理由が分からない。
自分はこの話を聞いて、紫葵さんは敵どうしではないことに安心し他と同時に、一緒に戦えるかもしれないという事を嬉しく思ったのだが、
「えと、、紫葵さんはどうしてそんなに悲しそうなんですか?」
「...そんな顔に出てる?」
たははと笑い、頭を掻きながら俺に聞いてくる。
そう言っている時も、表情に少し陰りが見えるため、俺は頷いた。
紫葵さんは何度か口を開いたが、躊躇い、
「...影人にはもう1つ目的があって...それは……魔女を穢人同様倒すことなの」
「...は?」
理解が出来なかった。
今の話を聞いた所、魔女陣営と影人陣営が敵対する理由が見当たらない。
むしろ紫葵さんのような実力は味方で欲しいと思うのではないか。
「...意味がわかりません。何で敵対陣営は一緒なのにそうなるんですか…?」
「その敵の中に魔女も含まれてるからねぇ、」
訳が分からないが情報を整理する。
すると、ふと紫葵さんの先の言葉が頭に浮かんだ。
『正確には人間にも魔力はあるんだよね?それを感じることができるかできないかの違い』
...
……
「...まさかとは思いますが、魔力を感じれないから魔女と穢人の違いがわからないとか言いませんよね、?」
俺がそう言うと、彼女は目を見開き、少し困ったように笑った。
「...まいったなぁ、概ねあってよそれ。正確には、魔女が穢人を作っているって思ってるのが影人なの」
理由のしょうもなさに言葉を失っていると、紫葵さんはでもと言葉を続ける。
「でもね、実際悪さする魔女とかもいるし。一概に魔女は人間の味方とも言えないんだよねこれが...」
「...でも紫葵さんは」
俺を助けてくれた。
そう言おうとして言葉が止まる。
だってそれは偶然なのだから、たまたま影人よりも先に魔女に出会って、この話を聞いているから有り得ないってなるし信じれないとなる。
「...話そうにも向こうからしたらこちらの言葉なんて恐ろしいよね、」
紫葵さんは諦めたようにそう告げる。
紫葵さんは影人達とは争いたくないのだろう。
だか間違った認識と、1部魔女達のせいで話し合いの席に座ることすら許されない。
俺に話したくなかったのも、気に入って助けた人間と敵対することになるのが嫌だったんだ。
...
......俺に出来ることは
「...俺は影人になります。」
俺がそう言うと、紫葵さんの陰りは深くなる。
「...うん、それがいいと思う。どっちにしろ穢人に接触しちゃったし、影人達は黙ってないと思うからね。だから、ほんの短い間だったけどあり...」
そう言いながら立ち上がり、言葉を続ける紫葵さんの腕を掴む。
びっくりした顔をしたが、俺は遮るように口を開いた。
「...影人になって、魔女と共闘できるようなシステムを作ります」
俺がそう言うと、少しキョトンとしていたが言葉を理解し、呆れたように笑いかけてくる。
「…あのねぇ、そんな簡単じゃないでしょ?今はじめの言ってる事って今から国会議員になって法律を変えるー!って言うのと同じことなんだよ?」
紫葵さんの言っていることは正論だ、分かっている。
……でも、それでも、
自然と握る拳が強くなる。
「…気持ちだけで嬉しいから、ありがと「でもっ!!」……?」
…今日俺はたまたま穢人に呼ばれた。
……たまたま紫葵さんに助けられて、日常というレールから大きく外れた。
先程考えた、意味。
自惚れで、調子に乗ってて、勘違いで、ただの痛くて主人公気取りの間抜けなのかもしれない。
それでも…
「…今日こうなってるのには……ここにいるのは、俺がいる意味だと、思いたいから、」
どんどんと声は小さくなり、なんとか言葉を紡出ていた言葉も止まってしまう。
あぁ、なんて自分勝手なのだろう。
その先を口にすることが出来ず、ただ俯き立ちすくんでしまう。
すると、身体を覆われる感覚に思考が止まる。
「…はじめは優しいんだね、」
「ちょ!?紫葵さん!?」
抱きしめられていることに気づき、離れようとするが思った以上に力を込められているのか、引き離すことが出来ない。
「自分勝手とか思ってるんでしょ?そんなことないよ」
そう言い、ゆっくりと離れ、紫葵さんは笑いながら口を開く。
「...今までは目が会った瞬間攻撃とかだったからね?そんな言葉くれる人なんていなかった。はじめがそう言うなら信じて待っててあげようかな?」
濡れた目元を拭い、紫葵さんの目を見る。
何年ぶりかに人と正面に向き合い、その温もりに触れ意思は固まる。
「...待っててください」
そう言うと彼女は俺の頭をわちゃわちゃとしてきた。
犬かよ…
「さて、ひと段落ついたし、そろそろ今日はお開きかな?」
そう言いながら公園にある時計に目を向ける。
朝とまでは行かないが、時計の針は4に差し掛かっていた。
「...まだ聞きたいことがあるんですけど?」
時間は遅いがまだ彼女のことを知らない、俺はもっと彼女を知りたい。
ここで切り上げはしたくなかったのだが、紫葵さんは少し困ったように笑う。
「私もはじめと話したいんだけどね...ほら、お客さんが来たみたいだから...」
「は?何言っ...!?」
瞬間、紫葵さんが遠くに飛ばされる。
何が起きたのか分からず、呆然としたが、直ぐにハッとし飛ばされた方に目を向ける。
「紫葵さっ...むぐっ!?」
無事かどうか確認するため名前を呼ぼうとしたが、口元になにか当てられ声が出せない。
「影の魔女!!距離確保!!被害者を保護しました!追撃します!!」
「バカ!!突っ走るな!!チッ、雫そいつ頼むぞ!あのバカ追っかける!」
聞いた事のない男の人と、女の人の声が聞こえ混乱するが、とりあえず紫葵さんのことが気になりそれ所では無い。
「むぐぐぐぐ」
口元に抑えられた布をどけようとするが、上手いこと力が入らない。
当たり前だか何か染み込ませているようだ。
「全く...ちょっと君抵抗しないで!!、私たちは味方よ!!」
こんな誘拐まがいなことして何が味方だ!!!
遠くから轟音が聞こえ、焦り抵抗をするがやはり力は入らず、だんだんと意識が遠のいてくる。
「まだ効かないの!?...落ち着いて、大丈夫だから......ら......こ」
し...き...さ...
そこで俺の意識は完全に途切れた。
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...目を開くとそこは知らない天井だった。
酷く体が重く、最悪の目覚めだ。
こんな時には...二度寝に限る、俺は再び目を閉じたのだか、、、
「...うっ、」
腹部になにか重いものがのしかかり、二度寝を阻まれる。
ゆっくりと目を開き、視線を右側に移すと、制服のようなものを来ているイケメンがジト目でこちらを見ていた。
「...お前何二度寝しようとしてんだよ、」
「.....すみません」
名残惜しいが掛け布団を横にのけ、ゆっくりと体を起こし目を擦る。
男は、こちらが起き上がったのを確認すると、水の入ったコップを手渡してきた。
「ほれ、飲め」
少し受け取るのを躊躇う。
まだ脳が起ききっていないが、流石にそんな事態では無いため、寝ている脳にムチを打ちフル稼働させていた。
先の記憶と、今の現状を理解しようと思考をめぐらせていた時に渡されるのだが…
さすがに睡眠薬か何か押し付けられた後にこのコップを受け取るのは怖く、抵抗があった。
ずっと受け取らない俺を見て不思議そうにしていたが、向こうもなんとなく察したのか、コップに口がつかないように水を自分の口に流し、わざとらしく喉を鳴らして飲んでみせた。
「なんも入ってねぇよ、ほら」
コップを手渡され、恐る恐る口をつけ、何秒かが口の中に留め、飲み込む。
大丈夫ということも確認でき、コップの中の水を一気に飲みほす。
その様子を確認して男はさてと、口を開いた。
「取り敢えず自己紹介と言いたいんだか、お前にいつくか聞いておかねぇといけねぇ事がある」
椅子に座ったまま、こちらに敵意をむき出し、鋭い眼光を飛ばしてきた。
「...黙秘権は?」
「どうしようがお前の自由だ...が、その後のことは俺には関係ない。」
実質ないと言ってようなものでは無いか。
思わずため息が漏れてしまう。
「お前はあの女のなんだ?お前は何者だ」
いきなり本題からはいるんだな...
かなり驚いたが、ここで取り乱して返答を間違えると紫葵さんに危害が及んでしまう。
落ち着いて慎重に言葉を選ばなければ...
「質問が抽象的じゃないですか?、意図にそってるかは分かりませんが、彼女はただのネットで知り合った友達で、僕は冴えない高校生ですが」
...この人は、この人達は影人だ。
先程襲ってきた人たちも影人なのだろう。
そう考えると、魔女が隣にいる状況で無理やり俺をさらったのも理解はできる。
さて...俺が影人にはいるためにも、何より紫葵さんのためにも俺は今この男の求める答えにたどり着かなくてはいけない。
落ち着いて、言葉を選んで…
「...あくまでもしらを切る気か」
そういうと、男は腰にかけてあった刀に手を伸ばしゆっくりと引き抜き、刀身を俺の首元に向けた。
「まどろっこしいのは好みじゃないんだよ、あの時間帯に魔女と2人で密談。何してた...答えろ」
向けた刀身の先が首元に当たり、血の雫が滴る。
「...すみませんが言っている意味がわかりません。」
「...それで通ると思っているのか?」
「通るも何も事実ですので通してもらわないと」
男は目を細め、更に殺気を強めるが俺は無言を貫き通した。
しばらく目のあった状態で冷戦さながらだったが、沈黙は男のため息によって破られた。
「...全く、肝っ玉のふてぇ野郎だな」
そう言うと、男は刀身をさやに収め、先程オールバックにしていた髪をぐちゃぐちゃと乱し、胸元のボタンを外した。
「あくまでも答えねぇ気か?」
「...答えれることはないです」
「...まぁ、いい。お前は敵か?味方か?」
「仮に味方と言って信じますか?、俺だったら絶対に信じませんけどね。それに、敵に敵というバカもいないでしょう」
そういうと男は高笑いし、ポッケから身分証のようなものを取りだし見せてきた。
「俺は影人って部隊に所属してる柊ノ木 紅兎ってんだ。よろしくな黒田一?」
柊ノ木と名乗った男は、知るはずのない俺の名前を口にし、ニヤニヤしながら手をこちらに差し出してくる。
「...なんか調べられてるようですね、黒田です」
そう言い柊ノ木さんの手を取り握手をする。
「信じて貰えた...と受け取ってもいいんですかね?」
俺がそう言うと、首を横に振り否定する。
でしょうね...まぁ、こちらから話すことなんて一つもないが。
「なにか隠してるのようだが、お前を調べてもそれらしき証拠はねぇしな。こっちのヤツらとの接触も昨日が初めてだろうし疑わしいが疑いようがねぇんだよ」
そう吐き捨てまた頭を搔く。
なるほどと頷いていると、男は刀を叩き再度続ける。
「大体、肝が太すぎなんよ。どこに刀向けられてなんともねぇ一般人がいるんだ。」
失礼な、こちとら昨日まで普通の高校生だったというのに。
まぁ、確かに紫葵さんの戦いの後に比べたら刀向けられたくらいなんとも思わなかったのだか。
「まぁ、取り敢えず俺はどうなるんですか?誘拐までされて」
「...誘拐ってお前、、まぁ、強引だったのは謝るがそれだけ危険な状況だったんだぞお前」
「説明してくれると嬉しいです、俺は何も知りませんから、」
わざとらしく動きをつけ説明を促すと、柊ノ木さんはため息をつき、影人について説明をしだした。
大体は紫葵さんの言っていた内容と同じなのだが、やはり魔女の部分の説明は全くと言っていいほど違っていた。
「...まぁ、これが俺ら影人。で、お前の横にいたのは俺らがぶっ○ろす穢人の親玉ってわけだ。ここまで説明したらいかに自分が危険な場所にいたか理解しただろ?」
「...なるほど、」
「魔女ってのは自分の力を種として穢人を作ってんだ、お前の横にいた女は『影の魔女』って呼ばれてる。だから強引だか引き離させてもらったわけだが...と、こんな感じなんだが、お前知ってるだろ多分、聞いてて楽しいか?」
影人についての説明と、自分がここにいる経緯を説明し終わるとジト目をこちらに向け柊ノ木さんは俺に聞いてきた。
かま掛けだ、何事もないように俺はスルーし、口を開く。
「楽しいどうこうは置いておいて、正直びっくりして言葉が出ないですよ。なんせ聞いたことも無いワードばかりですから」
自分が聞いていたことと影人サイドの認識との違いを目の当たりにし、自分の中で整理をするる。
「その割には落ち着いてんなぁおい」
「そう見えるだけですよ、、ポーカーフェイスは得意なんで、」
減らず口で返すと、柊ノ木さんはこめかみを抑え今日何度目か分からないため息を吐く。
「...まぁ、もういいや。取り敢えずお前には今選択肢が2つある...1つは、影人になることだ。ぶっちゃけこちらの都合で申し訳ないんだが、魔女と接触した人間を野放しには出来ない、それはわかるよな?」
俺は頷く。
「2つ目は、記憶を全部消して日常に戻ること。一見こちらの方がいいように聞こえるが俺はおすすめしないな、仕方ないことだとは思うがお前は知りすぎた。またまたこっちの都合で悪いが、戻る際には記憶をいじらせてもらう。いくら一般的な技術より発展してるとはいえどんな後遺症が残るかわかったもんじゃない。それに今お前は引くくらい落ち着いてる。それが振りだったとしても、魔女サイドよりこっち側にいて欲しいと俺は個人的に思った。悪いやつじゃないのは話してたらわかるしな」
少し悩んだフリをして頷き、真っ直ぐに柊ノ木さんを見る。
柊ノ木さんと目が合うと彼はニヤッと笑い口を開く。
「...影人はいつだって人手不足だ!歓迎しよう、黒田一!!」
この日、この瞬間、、、
「お前は今日から!」
「影人だ!」
影人になった。