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影人  作者: レト
20/22

18「決着」


「...待たせたな」


俺がそう言うと、燐は口をパクパクとさせ驚いた表情を見せる。


「...はじ...め?」


俺の存在を確認、認識したと同時に力が抜けたのだろう。

俺の名前を呼ぶと、燐は全身から力が抜け、そのまま床に崩れ落ちようとする。

崩れ落ちる前に俺は左手で燐を受け止め、お互いボロボロな姿を確認し思わず笑ってしまう。


「...お疲れ様」


俺がそう言うと、燐は首を横に振り俺の右腕に目をやる。


「...はじめの方が疲れてるでしょ、腕どうしたのさ、」


「ただのかすり傷だ」


「...軽口を叩く余裕があるなら大丈夫...か...な、」


そう言うと、燐の魔力体の身体は砕け散り、生身の燐が現れる。

すると回収班が颯爽と現れ、燐を背負い消えていった。


「おわったー?」


「なんだ、待っててくれたんですね」


「さすがにこの状況で手を出すほど非道ではないよねー」


そう言い、状況を飲み込んだのか先程のような驚いた様子は消え、刀を何度かブンブンと振り俺を向く。


「一応聞くけどさー?棄権してくれないー?」


「冗談でしょ?」


間を開けることなく俺が即答すると、三林さんはため息を吐きながら頭をかく。


「そんな状態の後輩をいたぶる趣味はないんだけどさー?」


そう言いながら三林さんは軽く飛び始める。

何度も何度も、体育館にはトントンと、三林さんのジャンプの着地音が響く。


「咲には勝ったんでしょー?」


そう聞かれ、俺は左半身を前にして構えながら答える。


「この通りですよ、正直素直に喜べる勝ち方では無いですね」


「そー?まぁ、がんばってーねっと!!」


そう言い、すごい勢いでこちらに突撃してくる。

それに合わせ俺も刃を振り上げ敵に突撃。

俺は肩から腰にかけて剣を振り下ろし攻撃を仕掛けようとする、

三林さんは構え的に、俺の剣を弾き心臓なひとつきといったところだろうか、容赦ねー。

よけようと思えばよけれるだろうが、俺には時間が無いし下手に失敗して数撃くらってカツカツになり魔力切れなんてのが1番怖い。

だから俺は、避けるのを辞めた。


ザクッ


「...ゴフッ...」


「は??」


血は出ないはずなのに、口の中が鉄分の味で満たされる。

視界が一気に赤くなり、身体中が燃え上がり痛みと言うには生ぬるい何かが全身を襲う。

...痛い

……痛い痛い痛い

........痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い…

…….........関係ない...痛いけど

だけど

「うごげる!!!!」


「ちょっ...は!?」


痛みを無視し、俺は残りの風切り2つを刃に乗せ三林さんに斬りかかり、胴体を真っ二つにし三林さんの魔力体は砕け散った。

その瞬間、俺の魔力体も砕け全身から痛みは消える。


『しゅー!!!りょー!!!!!B級ランク戦1回目ええぇぇぇ!!!まさかのまさか!勝利をおさめたの岩沼燐率いる圏外チームぁぁぁぁぁ!!!!!』


アナウンスが流れびっくりするが、俺は回収される三林さんに視線をやる。

精神的にかなり来てたのか、見るからにぐったりしており、回収班に力無く背負われていた。


「...ストップ...すとーぷ...」


気だるそうに口を開き、医務室に向かおうとする回収班の足を止めさせる。

なんなのだろうと思ったところ、三林さんは俺を見て口を開く。


「黒田くん...まぁ...おめでとう。私たちの完敗だよ」


そう言われ呆気にとられる。

俺のその表情をみて何か察したのか、たははと笑いながら続ける。


「うちのリーダーは絶対言わないから、私からねー?」


そう言われ、妙に納得してしまう。


「いえ、三林さんたちも強かったです。俺もあんなざまでしたし」


俺がそう言うと、三林さんは少し引いた顔をした。

恐らく心臓を貫かれ、腕をもがれてもなお追撃する俺の姿を思い出してるのだろう。


「...黒田くん、特級になりたいんだっけ?」


その質問に対し、俺は頷いて答える。


「...なれるよ、だって特級に行く人はどこかおかしい。いい意味でも悪い意味でも、少なくとも心臓貫かれても戦ってくる君はふつーじゃないしね」


それだけ言い残し、三林さんは寝息をかきながら去っていった。

こうして俺らの1回戦目が終了した。



---



「さてさて解説のおふた方!今回のダークホースの大活躍にどうお答えしますでしょうか!」


そう言い、鈴谷は特級の柊ノ木と月乃に感想を求める。

柊ノ木と月乃はお互いマイクを押し付け合い、観念したのか柊ノ木が立ち上がり解説しだした。


「あー、まぁ、まずはふたチームにはおつかれという言葉を送りたい。」


黒田達、鹿島達はこの放送を医務室で聞いているだろうと労いの言葉をまずはかける。


「まずは、岩沼チーム。それぞれの力や役割、各々がやれることをちゃんと把握できていて、全体的にいい動きはできてたと思うが、黒田隊員に頼りすぎだな。今はいいがAの上位には通用しないだろう。」


「なるほど、なるほど...確かに岩沼さんチームは各々能力に合った動きはしていましたが、黒田さんのワンマンになっていましたよね!正直私!あの痛みを無視して戦う黒田さんに狂気を感じましたよはい!!」


そう言いながらうんうんと鈴谷は続ける。


「次に鹿島チームだが...正直、岩沼隊を舐めすぎてたな。ちゃんと動けてたのは三林隊員。ほか2人はCだからといって油断しすぎた、特例が認められたということは実力もそれなりにあるということ、それをわかってなかったぶん全体的に力を出し切れなかったようにみれる。」


柊ノ木がそう言うと、隣にいた月乃が笑いだし、マイクをよこせと柊ノ木に言う。


「随分と優しく言うんだね、紅兎」


そう言いながらフラフラも立ち上がり口を開く。


「...紅兎...柊ノ木は優しいから言葉を選んでるけど僕はハッキリ言ってあげるよ?今回のランク戦は見るに堪えない。お前ら全員Dからやり直したらいいんじゃないの?」


「...おい月乃..」


「紅兎ー!こんなカスに構ってる暇ないって!!隊員の質は落ちる一方だよ、?...足止めしか脳のない決め手に欠けるゴミに、敵を前にして震えあがるゴミ。敵を舐めてかかり秒殺されるカス2人に、まんまと足止めをくらい結局やられるバカ...いらないだろ?どいつも...でもまぁ、黒田一?だっけか、あいつはいいね...切られても潰されても、もがれても敵を殺そうとするあの意思!!!最高だよ、!!あいつとはいつか死合た...「月乃!!!」...わかったよ、もう...あー、いい試合でしたーおつかれー」


そう言い、空気をぶち壊すだけ壊した後、月乃はその場からさり、その日の午前の部は終わりを告げだ。



---



「もぐ...もぐ...」


「ばくっ!ばくっ!」


俺は今、B級2位のチームリーダーと食卓を共にしていた。

...

……なんでやねん。

遡ること数十分前である。

試合が終わり、皆が医務室に運ばれる中俺は急激に甘いものが欲しくなり食堂に向かうことに決めた。

鈴谷さんからは、「え?甘いもの、?え??」なんと言われたが欲しいんだから仕方ないだろう。

普段から甘いものは食べたいが、今回は肉体的疲労と言うより精神的、脳ミソ使いまくったからか、終わってからずっと糖分クレクレと脳みそがうるさいのだ。

どうせ行くなら誰か誘うかと、医務室に向かってみたが、俺以外の5人は寝たままで起きる気配がなく、食堂には一人で行くことにした。

ランク戦だからか、食堂にはかなりの人が集まり試合のことで盛りあがっていた。

先程の試合もあってか周りからかなり目線を感じたが、それらを無視し食券を購入。

すぐ食事を受け取りに行く。


「...自室で食うか、」


さすがにこの視線の中何か食べるのは嫌だなと思い、受け取った後に食堂を出ようとするが、ある男にとめられる。


「黒田 一!」


振り向くと、そこには大量のタンパク質をお盆に乗せた、えーと...B級の万里さん?が立ってきた。


「一緒に食べよう!!」


「oh……」


俺は断る間もなく、筋肉に手を引かれ同じ席につかされた。

なんの会話もなく、気まずい中黙々と食べていると、唐突に万里さんは話し出す。


「試合後に食事をしっかりとる、素晴らしいな。特にランク戦では肉体的消耗はないが精神的、脳が疲れる。糖分を多量に摂取し明日に備えるとは恐れ入ったぞ」


うんうんと言いなが、俺の前に置かれたケーキワンホールとドーナツにみたらし団子、バナナオレを指さし感心する。

...いやまぁ、それもあるが、俺はただあまいものが好きなだけなんだが...


「...どうも」


「先の試合は素晴らしかった。ぜひ僕たちとも熱い試合をして欲しい」


そう言われ手を差し出されるが、まずは炎楽さんたちに、勝たなきゃでは?とおもい、手を取れずにいると、なにか察したのか、万里さんは説明する。


「あー、そうか知らないのか。実は先程炎楽さんは棄権して、不戦勝で僕達の勝ち。明日は僕達と君たちで決定したんだよ」


そう言われ、驚きを隠せない俺をみて万里さんは笑いながら続ける。


「いつもの事なんだよ、炎楽さんは気分で参加不参加を決める。まぁ、それを許されるほどの位置にいるんだよ」


なにせ自由な人だからなと話し、俺も万里さんも思わず笑ってしまう。

炎楽さんの試合は回数こそ少ないが、本人の性格もあってかかなり派手で人気な試合らしく、それ目当てでランク戦を見に来る人も多いのだとか。

ある程度話し、俺はずっと感じていた違和感について聞いてみることにした。


「万里さんは俺の事なんとも思わないんですか?」


俺がそう聞くと、万里さんは少し考え口を開く。


「正直、何も思ってなかったかと言われたら嘘になるな。でも今は歓迎しているぞ?あ、チームメイトは反対してるけどな」


チームメイトとはどうも馬があわない、と困ったような笑みを浮かべつつ続ける。


「僕は強い相手と戦いたい。燃えるような、滾るような、全身が全細胞で熱く語り合いたいんだ」


そう語り力強く俺をゆびさす。


「ほか2人じゃない...僕は君との1体1を心から望んでいるよ」


そう言い、残りのご飯をかき込み万里さんは席を立つ。


「...だから、明日はとても楽しみなんだ。黒田一君。僕をガッカリさせないでくれよ?」


そう言い残し、食堂から立ち去る姿を見送り俺は食事を再開した。


「...燐に...言わねぇとな」





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