14「目前」
「どういうつもりですか柊ノ木さん」
「ん?…何だ鹿島か…悪いがまた今度にしてくれるか?見ての通り俺は忙しいんだよ」
私は、鹿島 咲。
B級3位に位置するチームのリーダーなのだが…どうやら、5日後に開かれるB級のランク戦にあろうことがDランク帯の人間が参加するという噂を聞き、いても立ってもいられず柊ノ木さんのところに走り出した。
仮に本当だとしたら許されない、許されていいわけのない事案だ。
「寝てるようにしか見えませんが」
先程、適当にあしらわれたが私は1歩たりとも引くつもりは無い。
というかどう見ても寝てるだけではないか、苛立つ気持ちをどうにか抑えるが、握られた拳には力がはいっていた。
「寝る時間もないからこうやって空いた時間で寝てんだろぉが、ほら分かったらさっさとどっか行け」
「どういうつもりか教えていただけるまで私は動くつもりはありません」
私の譲らないという意思を理解したのか、溜息をつきながらあのなぁと口を開く。
「…あのな、鹿島。黒田一、あいつは個人的に気に入っちゃいるが俺は何もしてねぇよ、今回動いたのは炎楽…焔 炎楽だ…分かったらあっち行け」
これ以上話すつもりは無いのか、タオルを顔に乗せ、いびきをかきだした。
……炎楽…炎楽、!!!!
あの、あいつがぁぁ、!!
怒りの矛先は変わり、私はミーティング室へと駆け出した。
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「鹿島はまだ来ないのか?」
「ぅぅ…すみません」
今日は話し合いがあると、咲からB級でランク戦に出る人達が集められたんだけど...肝心な咲が来てないんだけど!?
私、早見 志保は鹿島 咲と、三林 夏帆の幼なじみ3人でチームを組んでいる。
私たちは今B級3位のチームなんですが...今いるメンバーはランク戦前で調整をしたいであろう忙しい中わざわざ集まってくれた人達なのだか、咲は私達とチームリーダー二人を呼んでおきながら当の本人は遅刻。
待ちぼうけの状況になっているため現在私は胃に穴が開きそうである...てかもうこれ空いてるよぉぉお...!!!
「いや君が謝ることでは無いよ」
この人は、B級2位のリーダーを務めている万里 剛さん。
優しいし良い人なのだが、かなりの戦闘狂で少し脳筋なところがある。
「まぁ、気長に待とうよー、」
そう言いながらスマホをいじるのはうちのチームの夏帆である。
言っとくけど!それうちらが言っていいことじゃないからね!
もう!もう!!
「わしゃ寝とるかんに、きたらおこしてけくれぇの」
そう言って寝るのは1位の炎楽さん。
この人は……うん、適当だなぁ…
そうこうしていると、ドタドタと扉の向こう側から音が聞こえ、それはどんどん大きくなり扉の前で止まる。
「あ、来まし「炎楽さんっ!!!!」……咲ぃ…まずは謝ろ、」
扉を叩き強引に空けられ、炎楽さんを呼ぶ咲の声が部屋中に響く。
「咲落ち着いて、!」
「はぁ、」
咲を止めようと声をかけるが止まらず、ずんずんと炎楽さんに向かって歩いていく。
夏帆は、咲はこうなってしまっては誰にも止められないことがわかっているからか、深い溜息をはき諦めていた。
「炎楽さん、説明してください。なんでD級の隊員をB級ランク帯に出すんですか!」
咲が詰め寄り聞くが、とうの炎楽さんは黙ったままニヤニヤとし、咲を見ていた。
「このっ…!D級の隊員がB級に勝てるわけないでしょ!!何を考えてるの!!言いなさい炎楽!!!」
かなり感情的ではあるが、実際咲の言ってることが正しいと思う。
下の階級の人ほどしている勘違い、それは階級が違くても制限を取れば同じ土俵に上がれると思っていることだ。
しかし言わせてもらうと、いきなり上限を上げても体は悲鳴をあげ、まともに動くことすらもままならないことだろう。
誰がどう考えても下の階級の人が上に勝つことなんて不可能であり、それ故に今回の炎楽さんの行動は意味不明、そして新人潰しのように見えて咲は許せないのだろう。
「かっかっか……随分と言うようになったのぉ。そもそも黒田たちぁ、ランク未参加のDランク帯ですらない...おかしいのぉ?ルール上どのランクでもない人間がDから始めないかんなんて書いとらんぞぉ?」
その態度がまた癪に障るのか、咲はヒートアップする。
「…あなたと違って私たちは真剣に訓練に励み、日々任務に励んできた。こんなふざけたことをするなら今ここで私がその首かっ切ってあげましょうか!」
そう叫び、腰にかけていた刀を抜き炎楽さんの首元に当てる。
それをみて炎楽はさらに笑い、ニタニタと口角を上げ口を開く。
「おんの火種じゃ火力不足よォ……わしゃ滾るやつとしかやりたくないんじゃて」
そう言い、咲の刀を素手で握り受け止め、のその手から赤々とした血がぽたぽたと床に落ちる。
「はいストップ!……鹿島落ち着けやりすぎだ」
ピリついた空気に待ったをかけたのは万里さんだった。
「……っ!!だって!万里さんはどう思うんですか!」
咲は声を荒らげ、万里さんに抗議する。
それに対し万里さんは炎楽さんの方を向き、たんたんと質問を始めた。
「黒田一……彼は強いのかい?」
「知らん、ただ熱はあったのぉ」
「自分がやったことの重大さは理解してるかい?」
そう、今回このことを公式的に認めてしまえば、これから勘違いしたもの達が自分もそうしたいと声を上げ出してしまう。
ランクを飛ばす、その前例を作ってしまうそれ自体が不味いのだ。
...その事わかってるのかな、
「んなもん知るかぁ……わしゃやりたいようにやる。サイコロみたいなもんじゃ」
「僕としては強ければ文句はないよ、燃えるような試合をしたい。その点に置いては炎楽さんと同じ意見だ」
「かっかっか!まぁ、楽しみにしとれや」
そう言い、万里さんは退室していった。
咲は、歯がゆくてたまらないと言った表情で下に俯き、その日の話し合いは最悪の形で終わった。
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ランク戦前日
「何とか間に合ったな」
俺がそう言うと燐は頷き、小森は床にうつ伏せで倒れたまま、親指を立てた手を上げそれに応えた。
「…どうなるかな」
達成感が凄く、どこかやりきった感が出てしまっているが、ここでやっとスタートライン。
それがわかっているのだろう、不安が襲ってきたのか燐は暗い表情で俺に聞いてくる。
「どうなるもクソもねぇだろ、勝つんだよ」
「……やる…しか……ない」
俺と小森がそう言うと、燐は笑いそうだなと頷き肯定した。
その後、俺たちは2人で小森を抱えご飯を食べ、ランク戦までの流れを軽くおさらいし、その日は休むことになった。
明日のため疲れは残さずにってことだ。
部屋に戻り、風呂など一通りのことを終え窓を開けた状態でばななオレを飲み夜風にあたる。
「…あっという間だな」
ただの一般人から影人になり、ランク戦で明日格上の相手に戦いを挑む。
はたから聞いたらどんなフィクションですか?ってなるような話だ。
「...勝たないとな」
勝てるかな、勝ちたいなじゃない。
紫葵さんに近づくため、俺自身のため俺は勝たなきゃ行けないんだ。
手に持ったばななオレを飲み干し、窓を背にしてゴミ箱に容器をほたる。
「はじめは勝てるよ、見てるからね?頑張って」
「……っ!?紫葵さん!」
後ろから聞こえるはずのない声がし、振り向くがそこには誰もいない。
ゆっくりと窓に近ずき、当たりを見渡すが紫葵さんの姿はどこにもいない。
俺は窓を閉め、布団に入りこみ眠りについた。




