9「仲間」
「紹介するわね?2人には説明したけれど改めて、こちら黒田一くん。まだ入って間もないけど実力はかなりのものよ」
そう紹介され、ベットに座った状態ではあるが取り敢えずお辞儀をする。
顔を上げると、男の方が先に口を開き自己紹介をしだした。
「初めまして、僕は岩沼 燐です。」
そう言い、丁寧に頭を下げお辞儀をする。
岩沼さんは制服の上にロングコートを羽織っており、おろされた髪に眼鏡をつけていて、真面目で優しそうな印象を受ける。
岩沼さんの紹介を聞き、次に隣の女性に目をむける。
久留美さんよりも更に頭一つくらい背が低く、腰くらいまで伸びた髪の毛の隙間からみえる目と視線が会う、しかし会った瞬間視線をそらされた。
...え、俺何かした、?
「...えと...はじめ...まして、」
少しだけ、ほんの少し心にダメージを受けている途中、今にも消えそうな声量で挨拶が聞こえ思わずぽかんとしてしまう。
...
……
...……え、?終わり、?名前とか、、
「...ちーはーるー、?」
少し気まずく、なんとも言えない空気が流れいる中、それを破ったのは岩沼さんだった。
オドオドし言葉を続けないことに痺れを切らしたのか、先程の優しい雰囲気は消え、ハイライトの無い目で隣の少女に向き合い肩をガシッとつかみゆっくりと名前を呼ぶ。
少女も怖かったのだろう、段々と小刻みに震えだし、そのゆれはどんどん大きくなりガクブルし声を荒らげた。
「だだだだだだって!!!人だよ!!人!!ホモ・サピエンス!!怖いよぉァ!!」
...いやホモ・サピエンスて、
それを聞いた岩沼さんは少女のこめかみを指でぐりぐりとし何を言ってんだとさらにヒートアップしていた。
「あたりまえでしょ!何バカ言ってるの!...もぉ、すみません黒田さん、この子は小森 千春って言って...見ての通り超のつくほどのコミュ障で……ってこら!!後ろに隠れないの!千春!」
そういわれ、後ろに隠れていたが無理やり前に押し出された小森さんの顔は見たことないくらい澱んでいた。
「...なんかこう、お二人共いいひとなんだろうなってのは分かりました」
俺がそう言うと再び申し訳なさそうな顔をし頭を下げる岩沼さん。
...なんか、、この人もこの人で大変そうだな。
「まぁ、いい子達だから仲良くしてあげてちょうだい?」
そう言い、あとはチームで話してくれと川崎さんは退室し3人だけ取り残され、再びなんとも言えない空気感が部屋中に漂っていた。
「...取り敢えず、部屋移動しませんか、?」
医務室こうしてても仕方ないだろうと、俺が他の部屋に行こうと提案すると岩沼さんは頷き、話し合いの結果ミーティングルームを使い話すことに決めた。
俺は一旦部屋に戻り身だしなみを整えてミーティングルームへと向かった。
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「黒田君!来てくれてありがとう!」
部屋に入り何を話そうかと思ってきたところ、急に岩沼さんは俺の手を握りブンブンと振ってきた。
「...はい、?」
何がありがとうなのだ、?
「おっと、ごめんごめん、嬉しくて」
そう言いながら手を離しホワイトボードの前に立つ。
「僕たちは見ての通り二人しかいないんだよね、だから仮チームで任務には行けるけど正式にチームとしては認められてなかったんだよ」
「...普通に人呼べば......なるほど、」
別に俺以外にも探せば人はいるだろと言おうとした途中、岩沼さんは小森さんを指さす。
...それだけで何を言いたいのか分かってしまい思わず納得してしまった。
...悪気はないんだ、だからそんな涙目でこちらを見ないでくれ、小森さん、
「まぁ、ちはるの性格以外にも原因はあるんだけど...それを差し引いてもこの性格でほかの人呼ぶのはなかなか...」
やばい岩沼さんの目から光がどんどん消えていってる!!
それに釣られるように小森さんの目の光も失われ、ミーティング室にどんよりとした空気が流れる。
「...えと、性格の他にに何が理由なんですか、?」
空気を変えようとそう聞くと、岩沼さんは軽く咳払いをしホワイトボードを使い説明しだした。
「えーとね、それはズバリ能力なんだよね」
「能力?」
「うん、僕と千春はどちらとも少し癖があって、特に千春のはすごくて、」
そう言いながら2人の能力について聞いた。
岩沼さんは支援型、岩の魔人のようなものが出てきて相手の足場のみが崩れるデバフ要員。
魔人を使って攻撃もできるが威力はあまり望ましくなく、時間稼ぎや目くらましなどにしか使えないらしい。
千春さんは……なんと言えばいいんだろうこれ、本当に合ってるのか、?
……千春さんは不幸なことが起こるとエネルギーが溜まりそれを吐き出すことで攻撃するらしい。
威力はとてつもないが連発は不可、放射型に当たるらしい。
「……岩沼さんはともかく…すみません、責めるとかそゆのとかは全くないんですが…ふざけてます、?」
「ひぇ、!?」
俺がそう言うと小森さんから小さい悲鳴が聞こえるがスルー。
岩沼さんはたははと笑いながら続ける。
「本人曰くでしかないから、まぁ、こういう理由なんだよね僕たちは疎遠されがちで」
「……組んで…くれる…の、?」
ある程度説明を聞いて唸っていたところ、先程のやり取りで涙目のままの小森さんが、不安げな表情で俺にといかける。
...いやまぁ、実際俺もかなり癖は強いし。
「言っときますけど、俺もかなりくせ強いですからね、?」
俺がそう言い、自分の能力について説明するのだが何故か聞いてもなお歓迎された。
前線を張れる人を探していて、それが川崎さんのお墨付きなら喜んでということらしい。
「…とりあえず1回任務行ってから決めませんか、?」
さすがに1回くらいは試そうよと俺が提案すると、2人ともそれに同意し3人で任務に行ってから決めることに決定した。
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「…ここですね」
そう言うと、とある学校の体育館の前に3人は立ち止まった。
あれから鈴谷さんの所へ行き、自分たちでも受けることができて、今日中に行ける任務はないかと聞いたところ、近いところにある中学校で穢人の反応があったらしくその日の夜に向かうことになった。
「取り敢えず黒田さんが前衛、僕が中前衛で補助しつつ、千春が後衛でいい?」
岩沼さんの言葉に俺と小森さんは頷いて同意する。
「敵はそんなに強い個体ではないけど初陣だし最新の注意を払っていこう。黒田さんも無理はしないようにね」
「了解」
「うん、じゃあ行くよ?20%セット」
「20%セット…解放〝風華〟」
「20…%……かい…ほぉ…〝砲来光〟」
3人の武装が終わり、体育館の鍵を開け、ゆっくりと扉を開く。
夜の体育館、だだっ広い空間に窓から差し込めてくる月の光もあってどこか不気味さを感じる。
影になっている部分が多く見にくいが、体育館の中央に黒いモヤが立っていた。
モヤはその場でゆらゆらと揺れていたが数秒ほどするとピタリと止まり、こちらをゆっくりと見る。
目なんてないのに目が合ったかのような錯覚を覚え、そこ瞬間世界が反転する。
ついていた色はきえ白黒の世界に飲み込まれここがもう現実では無いことを肌で感じ自然と身体中に力が入った。
「……っ黒田くん!!!」
駆け出していた。
ほぼ反射だった、わからない、だけど何か嫌な予感がした。
「…千春!構えてて!いつでも打てるように、!」
「わわわわわかた…!」
後ろから聞こえる声を流し、目の前の敵に集中する。
穢人はゆらゆらと体を揺らし、触れる度手の端からから丸いものをボタボタと床に落とした。
何をするのかと思った瞬間、床に落ちた物をこちら目掛けて思い切り蹴り飛ばしてきた。
飛んできた玉を剣でいなし、体をひねりながら回避する。
穢人まであと数メートルほど迫ったところで、先程弾いたはずの玉たちが一斉にこちら目掛け突撃してきた。
「…こい!解放!!〝地穿つ者〟……!!」
その叫び声と共に、岩沼の背後に両手に鎌のような槌をもつ魔人が現れ、揺らめきながら大きく腕を振り上げ、地面を両の槌で叩いた。
「……〝地割れ〟」
その瞬間、ホログラムのように地面が割れ玉は地割れの中へと消え、穢人は崩れた地面にふらつき四つん這いのようになり叫び声を上げていた。
「……なんだこれ」
実際に聞いてはいたが体験すると妙なものである。
自分たちは地面に立ちなんの影響もないが、敵はホログラムのような崩れた地面を強制されている。
思わず気をとられていたがそんな暇はないとすぐに視線を上に向ける。
地上の玉達は岩沼さんの技で防げたが空中からくる玉はまだ勢いが消えておらず、それに向けて風切りを使おうとした瞬間、でかいレーザーが玉たちを巻き込み頭上を通過する。
「……oh....」
「わた、しも……、!」
「黒田さん!!」
「……っよし!」
呆気にとられていたがすぐに正気に戻り穢人目掛けて急接近。
このチームにかけていたもの、それは前衛を張れる火力だ。
小森さんは瞬間火力は高いがとても前衛ははれないし、岩沼さんも直接的な攻撃力はない。
「……させ……ない…!!」
穢人はやられるものかと腕を突き出し、複数の玉ををこちらに発射して来たが、小森さんの巨大レーザーによってそれも阻まれる。
「終わりだ!!!!」
そういい俺は縦に風切りを飛ばし、そのが当たるに合わせて横に切り込み穢人は十字斬りにされゆっくりと塵になり消えていった。
「……勝ったよな、?」
思いのほか呆気なく終わり、崩れながら色の着く世界の中、どこか不完全燃焼を感じていた。
…まぁ、いいか
俺は2人の方に振り向き、小走りで向かっていく。
「お疲れ様、黒田君」
「お疲れ様です援護ありがとうございます、とても戦いやすかったですよ岩沼さん。」
そう言うと、岩沼さんは照れくさいのか頭をかきながらはにかんでいた。
「今頃だけど、敬語はやめてください黒田くん」
「…そう言いながら自分も敬語やないですか」
「僕はこれが癖みたいなものなので気にしないでください」
軽く会話をかわしながら、笑っていると、下から声がする。
分かってはいるが下に視線を向けると、そこには横たわっている小森さんがいた。
「……ごめん…なさい、…たす…けて」
「…千春興奮して調整ミスったんでしょ?」
これが話に聞いていた反動か…
小森さんは先程のレーザーはなったあとすぐに地面へと倒れ、そこからずっとこのザマである。
「ごめん黒田くんこれ持っててもらっていい?」
そう言われ、岩沼さんのシャドウアーツ槍のような長さで先がハンマーになっている物を受け取る。
「僕が背負うから、歩いて帰ろうか反省会だよ」
「…うぇぇ…」
背負われながら項垂れる小森さんを見て思わず笑ってしまう。
だが俺は気づいてなかった。
笑う余裕なんてないことに…
「何笑ってるの?黒田君。反省ってのは君が初め飛び出したことだよ?」
はい、ハイライト消えました。
めっちゃ怖いです何あれ人こ〇せるよ、てか何人かやってるよ絶対。
「…イヤナヨカンガシテ」
引きつった笑顔で、あさっての方向を見ているとガシッと肩を捕まれる。
「嫌な予感かー?それはきっと今から僕にされることの予感だったんじゃない?」
あ、、これあかんやつや
…
……
………
…その後、帰り道を省いても3時間の説教を受け、この日俺はこの人だけは怒らせては行けないと心に刻み込んだ。
…あと小森さんの仲間が増えたって視線が少しだけ暖かかったのはここだけの話だ。
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体育館
3人が去り誰もいないはずの空間に2人、人影が影の中から現れ、先程戦っていた位置の床を触り何かをしていた。
「あれが例のやつか?そそらねぇなぁ、」
「そうも言ってられんだろう?人間など皆価値などないが、詰まってるだけまだマシだ」
「お前は相変わらずだなぁ」
「貴様もその欲しがりは治したらどうだ?いくら集めてもゴミはゴミだぞ?」
「はっ!…なんでてめぇと動かねぇといかなぇんだか」
「同意だ、だが確認はできた。」
「そーだな…ふはっ!次会う時には味見してぇくらいにはなってて欲しいもんだ」
「貴様は味見ではすまんだろう」
「あたりめぇだろ!!全部だ!!全部俺が貰うんだよひとつ残らず全て奪って飲んで俺様のものに!!」
「相変わらずの強欲だな」
「てめぇも相変わらずだろ?」
2人は闇の中へと消えていった。




