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第3話

   

「明日からメシどうしよう……」

 自分の口から出た言葉を耳にして、ハッと我に返る。

 どこをどうやって帰ったのか覚えていないが、僕は冒険者寮の自室に辿り着いていた。一張羅のスーツも下着も脱ぎ捨てて、頭からシャワーを浴びている真っ最中(さいちゅう)だ。

 冷静になるために頭を冷やそう、と無意識のうちに考えたのだろうか。冷水ではなく快適なお湯のシャワーだが、こうして我に返ったのだから、効果はあったようだ。

「……」

 心を落ち着けてみると、改めて頭に浮かぶのは、リリィの困り顔と、酒場の客たちの笑い声。

 もう彼女に合わせる顔がない。それだけでなく、あの酒場に足を踏み入れるのも恥ずかしい。今日いた客たちは、ほとんどが僕と同じで、常連客だろうから。

「仕方ない。明日からは、冒険者組合(ギルド)の食堂で不味いメシを食べるとしよう」

 声に出して自分に言い聞かせることで、決心がついた。

 そもそも、冒険者組合(ギルド)提供の食事に不満を言うこと自体、おこがましかったのだ。

 あの客たちが指摘した通り、僕は農村出身の田舎者であり、街に出てきてからも冒険者になってからも、まだ日が浅い。美味いメシを求めるのは、もっと一人前の冒険者になってからだ。

 そのためには……。

「よし!」

 シャワーが(したた)る頬をピシャリと叩き、気合を入れる。冒険者としての経験値を得るためには、できるだけ多くのモンスターを狩るしかない!


 髪を整えていたジェルは、ちょうどシャワーで洗い流された。タオルで体を拭いて、下着と皮鎧を身につければ、ボサボサ頭の冒険者ジャック。いつも通りの格好だった。

 今度は寮の廊下を歩いても、誰にも注目されない。ごく当たり前の冒険者として、僕は再び夜の街へ飛び出した。

 ただし、酒や食事が目的ではない。モンスター・ハンティングのために、今からダンジョンへ向かうのだ。

 僕も冒険者だから、もちろん昼間は毎日のようにダンジョンでモンスターを狩っている。でも夜のダンジョンは初めてだった。

 夜の視界は悪く、いくら魔法灯で周囲を照らしても、見える範囲は限られている。ただでさえ夜間戦闘は難しいのに、夜行性のモンスターや、視覚よりも聴覚が発達したモンスターも出るという。

 だから初心者のうちは、夜のダンジョンには行かない方がいい。冒険者組合(ギルド)の受付のお姉さんから、そう忠告されていたが……。

 厳しい条件のダンジョンだからこそ、経験値も一気に入るはず。そう考えて、チャレンジする気になったのだ。

 ……というような綺麗事の他に、気分がムシャクシャして暴れたくなったとか、少し自棄になっていたとか、そんな理由もあったのかもしれない。

   

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