ビターエンド
映画を見ている。
劇場には俺一人しかいない。
映画の内容はある男の一生を描いた物語だ。
正直言って面白くはない。どちらかといえばつまらない。
ただ不思議と席を離れようとは思わなかった。
主人公は筋が通っていない。
何かのために命を懸けたかと思ったら、つまらないくだらない些細な理由で逃げる。
一生掛けて愛すると誓った女性がいるのに、簡単なハニートラップに引っかかる。
いいことを言ったかと思えば、次のシーンでは言ったことと真逆の事をする。
友人に裏切られても相手の幸せを願っている。でも、本当に相手が幸せそうだと本気で呪う。
ただひとつ不思議なことがあるとするならば、こんなめちゃくちゃな人間なのに不思議と周りに人が集まる。
どうしてこの映画を見ているのかはわからなかったが、誰かとこの映画を見たかった。
物語は最後のシーンに移る。
主人公は病室で皆から惜しまれながら安らかに目を閉じる。
俺は席を立つ。
エンドロールは見たくなかった。