作家と倫理
起承転結はありません。(相変わらずです)
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
――人を人たら締めるのは、倫理であり、道徳である。
目の前に座る彼は、肘掛に体重を乗せ、切れ長な双眸でじぃっと此方を見つめている。彼女はそれを受けて黙って瞬きをした。
「先生、芸術家として一流になるには、その二つはやはり不要なのだと思います」
「作家モードの君を世に放り出すと必ず殺人が起きるから、手錠でもかけておこうか」
黙って手を上げる彼女に対し、『先生』と呼ばれた彼は、こめかみに青筋を浮かべた。彼のモットーとしてる心情を目の前で穢されたら、そうもなるだろう。
大きく見開かれた双眸は一種の狂気さえ感じさせた。一途過ぎる思いは潔癖だった。
経験しなければ、共感性を得られない。こんな事、現実にあるとは思えない。そう言った批判を得ない為、彼女は今日も数多の経験を積む。
「君ね、倫理と道徳を捨てたらただの獣だよ。そんなものは人間とは言わない。人間の形をした何かだ。そうなってでも、君は上質な作品を書きたいと願うのかい?」
「人間としてはゴミでも、作家としては一流です」
彼女は相変わらず無表情だった。そして無情にも今、彼の心情を汲み取りたいと考えていた。
彼が何に怒り、ものを伝えているのか。それを知ればもっと上質になる。その思いは芸術家として純粋な、より良いものを作りたいという願いから来るものだ。
「全く..............困った子だね」
「素晴らしい作品に出会いました。私が経験した通りのものを表現してくれる漫画でした。私もそうでありたい」
彼女の瞳はランランと輝いていた。
昔の少女漫画なんですけど、読者様が求めるものをきちんと形にするため、少しばかり倫理を踏み外した子がいたんですよ。
人を脅してでも、理解する。感情を得る。そんな感じです。
※その子大好きです。姿勢が高潔で。
時折、ああでもしないと恋愛小説書けないんだろうなと思います。
でも私は『人間として』より良い作品を生み出したいと思います。