09話.[積み重ねられた]
「へえ、付き合い始めたのね」
「うん、そういうことになるかな」
珍しく彼女の方から連絡がきたから言わせてもらった。
彼女からすればだから? という内容のものではあるけど、なんかね。
「おめでとう」
「ありがとう」
「でも、少し悔しくもあるわ、あなたの横にいる人間が私ではなく紗絵だなんて」
「私も最初そう思っていたよ、だけど雪那が新しい生活を始めたから私も甘えないで頑張らなければならないって考え直したんだ」
対彼女に比べれば関わっている時間は壊滅的に少ないけどそれでも積み重ねられたものが確かにある。
だってもう4ヶ月目に入っているんだからね。
「私の方は楽しくやれているわ」
「そっか、それなら良かった」
「ただ、できることなら父と一緒に実家に帰りたいわね、お母さんに会いたいもの」
「お母さんもそう思っているだろうね」
「そうならいいわね」
大丈夫、余程のことがなければ両親は子どもを大切に思ってくれる。
普段から真面目にやって手伝いなどもしていた彼女のことだ、いまだって戻ってきてほしいと思われているだろうなあ。
「今度は私があなた達に会いに行くわ」
「うん、待ってるっ」
そのときは今度こそ私がご飯を作ろう。
美味しいって言ってくれたらいいなあと考えつつ、彼女と談笑したのだった。