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7.小説の中の私がひどすぎる

小説の中で、私の死に関わった人物は3人いる。

お兄様と王太子殿下と、聖女様。


実を言うと、この内、2人とはもう面識がある。

1人目は言うまでもなく、ラス兄様だ。兄妹だからね、しょうがないね!

2人目はというと……、目の前で優しく私を見つめている、美少女リリア。後の聖女様である。


学院に入学した後、リリアと同じクラスになった時は緊張した。

なるべく関わらないようにしようと思ったのだが、なぜかいつの間にか親友ポジションになってしまい、頭を抱えたものだ。


でも実際、リリアは本当に優しくて可愛くて、突き放すなんてとても出来なかったのだ。

私は可愛いものに弱いのである。


突き放すことが出来ないのなら、自分から離れるしかない。


リリアが聖女の力に目覚めるのは、小説の中ではだいたい学院卒業してから二、三ヶ月後くらいだから、何としてもその前に王都を脱出したいのだ。

そして、王都を離れれば、もう一人の関係者、王太子殿下に会わずに済む。


さすがに王太子殿下に会わなければ、死亡フラグも立ちようがないだろう。


小説の中で、私は王太子殿下に無謀にも懸想し、殿下に目をかけられる聖女リリアに嫉妬する。

その挙句、自らも聖女であると偽って、リリアを陥れようとするのだ。


……ヒイィ、自分で言っててなんだけど、小説の中の私、度胸ありすぎないか。

聖女を偽るなんて、当たり前だが重罪だ。

ウソが発覚すれば、間違いなく極刑が科されるってのに、そこんとこ考えなかったんだろうか。


いや、私には無理。

お兄様にテストの点数ごまかしただけで、夕食喉を通らないくらい小心者の私が、そんな国家的犯罪を犯せるわけがない。


……とは思うのだが。

それでも、両親の事件を考えれば、『絶対』なんてない。


いま現在、私は王太子殿下に会ったこともなく、リリアとは親友だが、この先、どうなるかはわからない。


どういう経緯でそうなるか、なんて想像もできない。

できないがしかし、このまま王都にいれば一年後、私はこの中央広場でお兄様に背を踏まれながらザシュッと……、ううう、食欲なくなった……。


うなだれてチョコレートケーキをつつく私に、リリアは苦笑した。

「そんな顔しないで。フォールは遠いけど、たまには帰ってくるんでしょう? ……わたしも会いに行くわ」

「リリア……」

私は涙目でリリアを見つめた。


小説の中の私よ、なぜこんなに優しいリリアを陥れようとしたんだ。

そんなに王太子殿下に夢中だったのか。

私のバカバカバカー!!

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