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【書籍化】異世界でお兄様に殺されないよう、精一杯がんばった結果【コミカライズ】  作者: 倉本縞


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15.二週間ぶりの帰省

「きさま、先週はなぜ戻らなかった?」

帰省するなり、ラス兄様に叱られた。

転移陣を使用しての帰省だから、まだ両手に荷物も持ったままだ。

ちなみに、転移先は毎回、ラス兄様の部屋に固定されている。

なんで私の部屋じゃないんだろう……。そりゃ術者はお兄様だけどさ。


「帰省できないってお手紙を届けたと思うのですが」

「わたしは許可していない」


うん、まあ、そうなるだろうなとは思ってました。

先週帰省しなかった直後、お兄様から怒りのお手紙が速攻で届いたしね。

毎週戻って来い、と帰るたびに何度も何度も念押しされてたしね。


でもぉ、貴重な休日である週末を、毎回毎回実家で過ごすって、結構大変なんですよ。

お兄様は洗濯も掃除も、ぜんぶメイド任せだからわかんないでしょうけどね。

私は、料理も洗濯も掃除も買い出しも、すべて私一人でやってるんですからね!


……と言いたいのだが言えない。

ラス兄様を本気で怒らせるのは、命が惜しくない愚か者の所業であるからだ。


「申し訳ありません……」

うつむく私に、お兄様がため息をついた。


「……そんなに嫌なのか?」

お兄様が小さな声で言った。

「わたしに、会いたくなかったのか?」

え? と私は顔を上げた。


「何をおっしゃっているんですか、ラス兄様」

「違うのか?」

ラス兄様は私から視線をそらし、窓の外を見ている。

だが、私の反応が気になるようで、ちらちらとこっちを伺っている。


私はちょっと笑ってしまった。

ラス兄様は、ふだんは怖くて強くて、やっぱり怖い人なのだが、たまにこういう、可愛いところを見せる。

たぶんそれは、私やミルなど、心を許した相手に対してだけなんだろうと思うと、無性に嬉しくなる。

まあ、ちょっとめんどくさいとは思うけどね!


「お兄様に会いたくないなんて、そんなこと思ったことはありませんよ」

お説教される時は別だけど。


だけどお兄様は、かたくなに窓の外を見ている。

「……では何故、先週は帰らなかったのだ」


あーもー、めんどくせー!

などと言うのは、命が惜しくない(以下略 なので、私は優しく言った。

「いろいろ、しなくてはならない事が山積みなんです。仕事も忙しいし、なかなか買い物にもいけないし。食材を買えなければ、料理もできませんから」

「……自分で料理を作っているのか?」

「メイドを雇っていませんから。なんでも自分でやりますよ」


ラス兄様が驚いたように私を見ている。

フォールの治療院での報酬は、王都の水準よりずっと低い。

メイドを雇うような余裕はないのだ。


「そうだったのか。……そうか、おまえが自分で」

「先週末、久しぶりに街で買い物をしたんです。……あ、それで、これを買ったんですけど」

私は鞄を探り、小さな包みを取り出した。


「どうぞ、お兄様」

「……何だ?」

「お土産です。私が自分で稼いだお金で買った、初めての贈り物ですよ」

だから文句言わないでね!と祈りをこめてラス兄様を見つめた。


ラス兄様は、無言で包みを解き、紫の組紐を手に取った。

「ね、きれいでしょ? 組紐はフォール地方の特産品なんです。お兄様の髪に映えるかなっと思って」

「…………」

ラス兄様は、黙ったまま、手にした組紐をじっと見つめている。

うつむいているから表情はわからないが、両耳が真っ赤だ。


妹にお土産なんてもらって、照れてるのかも。

ふはは、可愛いとこもあるじゃないの! さすがラスカル!

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