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【書籍化】異世界でお兄様に殺されないよう、精一杯がんばった結果【コミカライズ】  作者: 倉本縞


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10.死神が死にかけてます

ふふふ、今日から私は命の危機から解放される!

フォール地方に着くのは一週間後くらいだけど、王都から離れられる、と思うとそれだけで安心感がすごい。


あー、思い返してみれば、5つの時に前世の記憶を取り戻してからというもの、安眠できた夜などあっただろうか。

今晩からはぐっすり眠れる!

空気もきれいなフォール地方で、のんびり人生を謳歌するぞ!


「マリ姉さま……」

とは言え、涙に目を潤ませた天使、ミルを目の前にすると、さすがに胸が痛む。

玄関先の馬車に荷物を積み込み、後は私が乗るだけ!という状況であるが、どうにも足が動かない。

「姉さま、いつこちらに帰ってきますか?」

「ミル、まだフォールに着いてもいないのに、気が早すぎるわよ」

私が苦笑すると、


「―――毎週末、帰省しろ」


地を這うような低い声が聞こえ、ヒッと私は振り返った。


死にかけの死神がそこにいた。


「お、お兄様……、どうしたんですか、ひどい顔ですよ」

「……一週間ぶりに会った兄に言うセリフがそれか」


お兄様が不機嫌そうに言ったけど、ほんとにひどい顔だ。

いや、もちろん美形には違いないのだが、目の下にはくっきりクマが出来てるし、顔色は白を通り越して土気色をしている。

いつもサラサラの黒髪も、心なしかパサついているように見える。


ふう、とため息をつく姿も、相変わらず無駄にフェロモンに満ちているが、どうにも覇気が感じられない。

「え、ラス兄様、お仕事大丈夫なんですか? だいぶお疲れのようですけど」

「……心配しているのか?」

「だってお兄様、水死体みたいな顔色してますよ」

「……………」


お兄様は黙って、私に紙の束を差し出した。


「なんですか、これ?」

「転移陣だ。これで毎週末、こちらに戻ってこい」


えっ、と私は手渡された紙の束に目を落とした。


え、ウソでしょ。

転移陣って、簡単なものでも一枚作製するのに、一週間くらいかかるんじゃ?

膨大な魔力が必要だし、そもそも陣に書き込む術式が複雑すぎて、並みの術師では作成自体が不可能な代物だ。

それを、こんなにたくさん、どうやって。


「お、お兄様、こんなにたくさん転移陣を購入するなんて……、我が家は破産してしまいます!」

「安心しろ、一銭も金はかかっておらん。わたしが作ったからな」


えっ!?と今度はミルも私と一緒に驚きの声を上げた。


いや、待って。

ラス兄様が魔術に秀でているのは知ってるけど、それにしても、こんなにたくさんの転移陣……。


私は目の前に立つ、死にかけの死神みたいな、不吉な様相をしたお兄様を見上げた。


ラス兄様、フォール地方に行く私を心配して、こんなにたくさんの転移陣を作ってくれたんだ。

正直、この転移陣を売ったらどれくらい稼げるかな、とちょっと思わないでもないが、でもでも、ラス兄様のその気持ちが嬉しい。


「ラス兄様……、ありがとうございます。そんな、死んだ魚みたいな目になるまで、頑張って転移陣を作成してくださったのですね」

「死んだ魚……」


何故かお兄様は微妙に不機嫌そうだけど、私は転移陣を抱きしめてお礼を言った。

「本当に嬉しいです。ありがとう、ラス兄様」

「……マリア……」


でも、と私は続けて言った。

「さすがに週一で帰省はキツいので、月一でいいですか?」

「きさま礼を言った口でそれを言うか!」


だって毎週末帰省だなんて、休みのたびに王都に戻ることになる。

そんな事になったら、フォールで遊びにも行けない……じゃなくて、破滅エンド回避も危うくなるではないか。

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― 新着の感想 ―
最後の最後で、マリアが面白過ぎる(笑) 怖いと言いつつ、しっかり兄に主張するところ、良きです(笑)
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