ミズクのゆめ
青の世界の満月の夜、湖から身体が七色に輝く巨大な女性『グウレイア』が満月をながめていました。グウレイアは身体が水でできていて、優しさと美しさをかねそなえた女神で、あらゆる生き物から『水の女王』と親しまれています。
(ふふっ……、今日もきれいでかわいいまん丸お月さまが見られてうれしいわ……。!……森の方で泣いているのは一体……?)
だれかの泣き声を聞いたグウレイアは森の方に向かいました。
森の中で泣いていたのは一羽の雄のフクロウでした。
「こんばんは、わたしは水の女王グウレイア。どうしたのかしら?」
グウレイアはフクロウを抱っこしてたずねました。
「ぼく……、夜おきて……、昼ねるから……、みんなとあえなくてさびしいんだ……。」
フクロウはみんなとあえなくてさびしいと答えました。
「そう……、みんな夜にねるからその時におきているあなたはひとりぼっちなのね……。」
「うん……、ぼく……、だれかとおともだちになりたい……。それが……、ぼくの……、ゆめなんだ……。」
「それがあなたのゆめなのね。わかったわ。わたしがかなえてあげる。」
「ありがとう、お姉さん。」
「そういえば……、名前を聞いていなかったわね……。」
「ぼくは……、フクロウの『ミズク』っていうんだ。」
「ミズクね……。わたしにまかせて。もう泣かないでいいわ。ここで待ち合わせでいいわね?」
「うん……。」
ミズクはグウレイアの言葉に安心し、泣きやみました。そして、彼女と待ち合わせの約束をしました。
「それでは、あなたに水の加護を……。」
「お休み、お姉さん。」
「ふふっ……。」
グウレイアはミズクと別れました。
夜が明けて、身体が青くなったグウレイアはミズクに会わせるためのおともだちをさがしまわりました。
(ミズクのおともだちにふさわしい生き物はいるかしら……?)
グウレイアはミズクに会わせるおともだちえらびに迷いました。
(まず……、ミズクは夜おきるから、夜おきる生き物同士……、といっても夜じゃはっきり見えないわね……。やはり会わせるには昼の生き物……、となれば昼と夜の間である夕方に会わせる必要がある……。でも……、小さいのはだめ……。大きいのもだめ……、といっても肉食でないなら……、となるとミズクと同じ大きさかそれ以上かつ肉食でない……。わたしの知っている生き物で何かいるかしら……?)
グウレイアはミズクに会わせる生き物をしぼりこむも、なかなか決まりません。そんな時、真っ黒い身体に大きな真っ白模様をした一頭の雄のバクがグウレイアに声をかけました。
「グウレイアお姉さん、こんにちは。」
「!……あなたは……、『マレー』……。ちょうど良かったわ。あなたに相談したいことがあるの。」
グウレイアはマレーというバクにミズクのことを話しました。
「ミズクというフクロウさんのゆめですか?お安いご用です。実はぼくも夜おきることがあるんです。」
「ありがとう。」
グウレイアはこころよく引き受けたマレーにお礼をのべました。
そして、夕方になり、グウレイアはマレーといっしょにミズクのいる森に向かいました。
「お姉さん、たしかここでミズクさんと待ち合わせでしたよね。」
「ええ。」
陽が落ちて夜になり、グウレイアの身体が七色に光り出しました。
「どうしたんですか、お姉さん。身体の色が変わりましたが。」
マレーはグウレイアの身体の色に驚きました。
「わたし、夜になると身体が七色に光り出すの。」
グウレイアは夜になると身体が光ると話しました。
「お姉さん……、虹のようでとってもきれいです。」
マレーは七色に輝くグウレイアに見とれました。
「ふふっ……、ありがとう。!……あっ……、来たわね……。」
グウレイアとマレーが語らっている中、ミズクが飛んできました。
「こんばんは、グウレイアお姉さん。そちらの連れの生き物は?」
ミズクはグウレイアにマレーのことをたずねました。
「こんばんは、ミズク。『だれかとおともだちになりたい』というあなたのゆめをかなえるためにわたしがこの生き物をさそったの。」
グウレイアはミズクにマレーのことを紹介しました。
「ミズクさん、初めまして。ぼくはバクのマレーといいます。グウレイアお姉さんから話は聞きました。みんなのゆめによりそうのがぼくのゆめなんです。」
マレーはミズクに自己紹介をしました。
「ぼくの方こそ初めまして。マレーさん、ぼくのおともだちになってくれませんか?」
「お安いご用です。さあ、ぼくの背中におのり下さい。」
マレーはミズクに自分の背中にのるよううながしました。ミズクをのせたマレーは色んなところを歩きました。ミズクはもちろん、いっしょにいるグウレイアもよろこびました。
そして、東の空が赤くなり始めました。
「もうすぐ夜が明けるわね。ミズク、マレー、そろそろ森に戻りましょう。」
「うん。」
夜明けが近づく事を感じたグウレイアはミズクとマレーに森へ戻ろうとうながしました。ミズクもマレーもうなずき、マレーはミズクをのせて森まで歩きました。
ミズクが巣に戻ると、東の空には太陽がのぼり始めました。
「うわあ、きれいな日の出。ぼく、こういう景色を見るの初めて。」
「ええ、うっとりくるわね。マレー、あなたもそう思うでしょ?」
「はい、ぼくもきれいな日の出も好きなんです。やはり自然はみんなの生命はもちろんゆめもはぐくむんだなと思います。」
「ふふっ……、そうね……。」
グウレイアたちは日の出に見とれました。こうして、ミズクのゆめがかないました。