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聖女と病に臥せる隠者――16世紀 インド
ああ、聖女様。
どうか私に触れないでください。
私はこれまでずっと独りで生きてきました。
だから、このまま独りで死なせてください。
私の孤高の人生を、貴女の優しさで汚さないでください。
貴女に触れてしまえば、私はきっと貴女の温もりに溺れてしまう。一人で立てなくなる。
自分の人生を誇れなくなる。
ああ、どうか。
私の百年の孤高を、最期の最期で、孤独にしないで。
◆
隠者の遺体を前にして、触れることはできず、かける言葉もなく、聖女はただ静かに涙を流していました。