第二十三話, 「ほんとに何してるんだろうねっ!?」
今日の更新です!
「で、今日はどっか行く予定あるのか?」
「ショッピングセンターに行きたい」
「なら電車か」
昼食を食べ終えたあたしと奏人は次の予定を軽く話し合い駅へと足を運ぶ。
ショッピングセンターは今いる駅から二駅先にあるので奏人の言う通り電車に乗る必要があるのだ。
メモ帳を開いて電車に乗る前に次の作戦を軽く復習。
作戦その②
電車の揺れに乗じて壁ドンされる!
これまたベタなシチュ。
最近の女子はこういうのにときめきを抱く……らしい。そしてする側の男子も同じくその急接近した距離感に心中はドキドキしている……とネットには書いてあった。
(うーん、書いてみたはいいけど正直微妙なのよね)
今日の作戦立案のために男子がドキドキする仕草やポイント、シチュを色々と調べてとりあえず書き留めた結果、実現が難しそうなのも混ざっている。
一応今の位置取りとしてはあたしがドアにもたれかかっていて、奏人は吊り革を握ってもう片方の手でスマホをいじっているのだが…
(そんなタイミングよく電車が揺れることなんて無いだろうし、そもそも今更距離を縮めたくらいでどうにかなるわけ…)
ーーキキーーーッ!!!!!
『急停車します、ご注意ください』
そんなアナウンスが車内に響いたのと同時に、遠心力を受けたあたしの身体はドアを離れて代わりに目の前に立っている奏人の胸元へと落ち着いた。
ーーポフッ……
「あ、ごめ…」
見上げると奏人の顔との距離が十数cmといったところまで近づいている。
(んっーーーーー!!!!!!)
互いの息が触れそうなその距離にあたしの平常心は勢いよく飛んで行った。
「大丈夫か?」
「ダイ…ジョブ」
『乗客の皆様、大変失礼いたしました。ただいま前方の踏切にて猪が侵入したとの通報が入り、急停車しました。発進まで今しばらくお待ちください』
「へ〜、猪だって。珍しいこともあるもんだな」
「ソダネ」
(い・の・し・し〜〜〜!!!!!)
駅を降りてショッピングモールまではもう目と鼻の先。
次こそは!
作戦その③
手を繋ぐ!
「奏人」
「ん?」
「人が多くなってきたから…その…」
ーーチリンチリンッ!!!
「あぶなっ!」
「えっ?」
奏人があたしの肩を掴んで引き寄せるのとほぼ同時に、あたしのすぐ横を自転車が通り過ぎて行った。
そして現状は先ほどよりも強く抱きしめられているわけで…
(っあーーーーー!!!!!!)
「今何か言おうとしてなかった?」
「ううん、別に」
(あんのママチャリじじい……)
なんやかんや、ショッピングモールに到着!
ここから!ここからが本番だから!
作戦その④
あ〜ん&間接キス作戦!
「ここのクレープ食べたい!奏人はチョコバナナクリームね!あたしは生苺あんこクリームにするから!」
「さっき昼食べたばっかりだろ…それにおれもそっちの方が食べた…」
「すみませ〜ん!チョコバナナクリームと生苺あんこクリームくださ〜い!」
「決定権なしすか」
「はい。お待ちどうさま」
優しそうなおばちゃんからそれぞれ奏人はチョコバナナクリームの、あたしは生苺あんこクリームのクレープを受け取る。
奏人がこっちのクレープを食べたくなることなど百も承知。
なぜなら奏人は苺と和風テイストのお菓子が大好物なのだから。
そしてこれなら自然に食べさし合いもできるはず!
「うん、うまい」
美味しそうに自分のクレープを頬張る奏人を見ていつ言い出したものかと少し迷ってしまう。
・
・
・
……とりあえずあたしも食べるか。
あっ、これ美味しい。
「菜々、そっちも食べたい」
「うーん、じゃあ代わりにそっちも頂戴」
「ほい」
「ありがと」
あたしと奏人は互いに半分ほどまで食べ進めたクレープを交換してまた黙々と食べ進める。
デザートや甘い物は別腹とでもいったように、昼食からそれほど時間も経っていないのに二人ともペロリと平らげてしまった。
「「ごちそうさまでした」」
クレープ屋のおばちゃんにお礼を言ってからモール内を二人して歩く。
(………って違〜〜〜う!!!!!もうっ、油断したらすぐ幼馴染の方が出てくるぅ……)
心の中で絶好のチャンスを逃したことに項垂れた。
作戦その⑤
ボディタッチによるスキンシップ!
ーーツン…ツン…
人差し指の先で軽く奏人の脇腹を突く。
服の上からやっているせいかあまり反応がない。
ならもっと強めに。
ーーツンツン…
まだ反応なしか。
ならもっと!
ーーツンツンツンツンツン…
「……何してんの?」
「ほんとに何してるんだろうねっ!?」
親愛なる翠ちゃんへ
あたしには『ドキッ♡女の子らしい仕草に萌えだよ』作戦の完遂は無理かもしれないです。
現在の菜々の勝敗
〜〜 0勝2引き分け3敗
次話から波乱かな(小声)




