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墓場の異常光景(1)

今回はちまちま切りながらいきます。

どこで切ればいいかよくわかりませぬ。

比較的長くなります、多分。

切り方のアドバイス等、あればよろしくお願いします…ご教授下さい…

「…死体が動く?」

ノンの口から発されたのであろう言葉をそっくりそのまま反芻する。

「そ、死体が動く」

そして更にその言葉をそのまま叩き返す形で肯定が返ってきた。

なんでこんな突拍子もない話題が降って湧いたのか。理由は単純明確、依頼内容の確認だった。

曰く、墓守の男性が墓場に不審人物を見つけて追い出そうとした所、なんと死体が動いて邪魔をしたらしい。

「…で、本当に死体が動いたのか確かめて、なんなら解決してくれと」

「そういうことだねぇ」

「依頼内容投げやりすぎない?」

「そこは同意するよぉ?」

でも仕事は仕事ということか、と目で確認を取れば沈黙という形で頷かれた。

まあ受けるか受けないか、なんて聞くまでもないだろう。

何故なら今、その調査へ向かう為の馬車に乗っているのだから。

馬車に揺られて数時間。

緑あふれる、良く言えば自然、悪く言えば片田舎の村に辿り着く。

墓地は半ば森に片足を突っ込んだ『いかにも』な立地で配置されており、しかも日によっては濃霧が発生するらしい。そりゃあ怖いだろう。

だがよりによって夜来なくてもいいと思うのだけれど。

「ねえノン、なんで夜なの?」

二人揃って夜目が効くので照明の類は持って来ていない。

幽霊の類は全くもって信じていないが、苔むした表面の合間から反射した月光が、中々に雰囲気のある広がり方をして恐怖心を煽る。

「だってチャチャッと解決したほうがいいじゃん」

成る程ただ単に時間短縮のためか。

まあ夕方村に着いたら確かに夜探索することになる。理解した。

気分は半ば肝試し。死体が動いた、というのも恐怖のあまり見た幻なんじゃないかと思えて来た。

ようやく辿り着いた墓地の奥には先客が居た。

フードローブを深くかぶった人がたった一人で、墓の前に佇んでいる。

「こんばん———」

念のため挨拶をしておこうとした私の口をノンが塞いだ。

元々聞こえるかも怪しいくらいの小さな音量だったが、それでも駄目だと言うことだろう。

素直に言葉の続きを奥歯で噛み殺す。

ギリギリでこちらに気づかなかった人影は、何事もなく自分の行動を継続している。

地面に手をかざして何事かひたすらに呟いている。

お参りの為の鎮魂を祈る祝詞とも、何か怪しげな儀式とも取れるその行動はかなり長く続いた。

しかし、唐突に変化が訪れる。

トン、トン、と僅かな音が耳に届いた。

空耳か聞き間違いかと疑える様な小さな音だが、私もノンも、職業上差異に素早く気づくことが要求される為聴覚には人より優れているという自負がある。

顔を見合わせて互いの反応を確認した。

案の定ノンにも聞こえているらしく、何処か苦々しく綺麗な顔をしかめている。

何かを叩く様な音はだんだん大きくなる。それが大きくなることで、こもった音…何かの内側から響いている音ということが分かった。

トン、トン、トン、ドン、ドン、ドンと音が変わる。何かを内側から叩く音。

ガリ、ガリ、から音がさらに変わり、何かを掻き崩す様な音になって…ボコ、と一つ音がして、止まった。

私もノンも反射的に見やったのは墓場に佇む女性の方向。

彼女の足元…もっと正確に言うならば墓場から、土を突き破って一本の手がそびえ立っていた。

あまりの衝撃映像に2人揃って絶句していると、腕が曲がり周りの土を掻き崩し始める。

穴はどんどん大きくなり、人の頭くらいの大きさになった。

そしてその大きさの例えを実演するかのように、穴から人の頭が飛び出てきた。

とは言っても、遠い上に暗くて顔まで見ることはできない。

地を崩し、ゆっくりと姿を現したそれを、フード姿の人は特に動じることなく眺めている。

土の中から出てきたそれは、華奢な体格なのに出るところが出ている…つまり女性であるようだが、遠くから見ても分かるほどに体の至る所が腐敗していたり傷付いたりと劣化している。

フード姿の人はそのグズグズの皮膚に躊躇いなく触れ、撫でるように腐敗や傷口をなぞっていく。

撫でられた皮膚は腐敗や裂傷が治っているらしい。

暫くそれが続き、どうやら人と同じ姿まで戻ったらしきそれに、フード姿の人は自分と同じ全身を包むフード付きローブを着せて、音もなくそのまま退散した。

「……ハッ!ノン!ノン!死体って多分アレじゃないの!?」

我に返り、慌ててガタガタと相方の細い肩を揺らせば、夢幻を見るような瞳に知性が帰ってきた。案の定私と同じ状態に陥っていたらしい。

「…余りの衝撃映像に我を忘れてたよぉ」

無理もない。元ヒーラーで死体やら剥き出しの筋肉やら見慣れている私でも、なかなか帰ってこられなかったのだから。

「ガセじゃなかったのかぁ、ちょ〜っと考えないとねぇ」

そう言いつつ手紙をしたためるノン。どうやら、こういった状況に強い知り合いがいるらしい。

さてどうやって手紙を送るのか…と眺めていたが、手にしたもので全てを察した。

ノンが手にしたもの、それ即ち弓である。

魔法や使い鳥で可愛らしく…なんて要素微塵もない。

弓、つまり矢文。しかも相当な筋力がなくては使いこなせない、長距離用の巨大な鉄弓。

まあ常日頃あんなハンマー持ち歩いてぶん回してればお察しだが、その鉄弓を余裕綽々で引いた。

因みにせめてものキュート要素と言わんばかりにクマのストラップがぶら下がっていた。やたらとリアルな毛質のストラップが。

そろりと触れてみると、案の定触り慣れている感触が指先に伝う。

「…これ」

「え、このストラップの毛?リアルファーだよ?女子力高いでしょ?」

お前の女子力の基準どうなっとるんや。

お嬢様状態ならばあるまじきツッコミだったが、まあ口に出してないし良いだろう。

鉄を弾く高い音と、風鳴りに近い音がほぼ同時に耳元を掠めた。

数瞬遅れて、強風が発生して短い髪が風に暴れる。

半ば呆然としつつ空を見やれば、既に矢は闇に呑まれて見えなくなっていた。

そして50秒後、矢がさっきと同じような要領で帰ってきた。

「「うわぁレスポンス早」」

何故か連絡を取った側であるノンも同じことを呟いた。いやこの速さを考慮してたわけじゃないんかい。

ノンが矢にくくりつけられた紙を凄く苦々しい表情をしながら開けて…更に表情を歪めて苦虫を噛み潰した表情、という表現が最も適切と思える顔をした。

まだ先のレベルがあったのかその顔。

そこまで歪ませても美人と思わせるあたり、本当にノンは整った顔をしている。

だがそこまで歪ませる程ではないのでは…と思いながら紙を覗き込んで…

「うわぁ…」

言葉が漏れた。同時に理解した。

B 3程の大きさの紙が括り付けられていたのだが、その紙が真っ黒に見えるほどにビッチリ文字が書き込まれていた。これでもかという風な、それはもうめちゃめちゃ細かい文字で。

しかも内容9割近くが愛の言葉である。

残り1割しか関連情報は書いてないが…それでも十分すぎるほどの文字量になっている。

こんだけの文字量で50秒はおかしい。ほんともう…色々おかしい。何がとは言わないが。

「うーん、私が頼んどいてなんだけどぉ、マジで頭おかしいなアイツ…」

「ノン、素出てる。最初いい感じだったけど最後完全に声も口調も男になってるから」

ついでに私が必死に濁した諸々がポロリしてるから。

同意はするが。それと同時にこの連絡相手が誰かも理解した。適任ではある。適任ではあるけれども、良くも悪くも予想通りすぎて嫌だ。

レネ・ゾールベルト…美しいもの、可愛いもの大好きで、それからもたらされるものなら恥辱苦痛なんでもウェルカムむしろありがとう、な…端的にいうと変態である。しかも救いようのないレベルの。

「適任ではあるんだよねぇ…」

そう呟きつつ、ノンは墓場を調べることもせずにあっさりと踵を返す。

「ちょ…」

呼び止めようとした瞬間に、振り返らないまま先程の紙を示される。

更に詳しく言えば、その中でも最後の行。

異常に細かいことを除けば理想的な、いっそ腹が立つほど見事な筆跡で書いてある内容は、以下の通り。

『これ以上詳しくは言いたく無いんですけれど、お茶会中だとうっかり口が滑るかもしれませんわね』

…つまり、これについて詳しく知りたいなら会いに来いと。

本当にノンに会うためなら手段を選ばないなこの人。

それならば、ノンが墓場を調べないのも納得がいく。

多分今闇雲に墓場を調べるより、あの変人のところに行った方が多く情報が手に入るのだろう。

露骨にため息を吐きながら迷いなく進むノンの後ろを、私は今後のことを考えたが故に苦い顔をしつつついていった。

短いですね!違和感すごい!

取り敢えず前置き終了って感じです。

今後ものんびりとお付き合いいただけると幸せます

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