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超巨鳥を調教?

ネタ要素詰め込み回です。

気軽に読んでください

ノンとタッグを組んだ次の日のバー。

優雅にドリンクを煽るノンと違い、私の心は穏やかとはほぼ反対の位置に座していた。

理由はバーの中に満ちる話題だ。

ここは常日頃さまざまな情報飛び交う場所だが、今日は殆ど一つの事に関しての情報がやり取りされていた。

【ヒーラー名家長女 ミエナ・ホーネティア失踪】

———————に関してである。

なんとあの家人共、私に人探しとしては常識を外れた額の賞金をかけたらしい。

たかが失踪、と、山のような失踪事件の中に直ぐに埋もれるだろうと踏んでいた私の読みは盛大に外れてしまった。

「ホーネティア嬢を捕まえて一攫千金だーーっ!」

「「「オーーッ!!!」」」

私は珍獣か指名手配者か?

完ッ全にツチノコ探す時のノリでしょそれ。

まあ見つかるわけがない。奴らの手元にあるのは最強ヒーラー時代の私。

ロングヘアに礼服、更には顔を全力の愛想笑いで塗り固めた今の私とはかけ離れた外見なのだから。

「なあ、ホーネティア嬢って本当に美人なのかな。

有名な探り屋が探しても見つかんなかったらしいし、実はこの美人は別人で、本物は物凄い不細工とか!」

本人ここにいますよ。お褒め頂きありがとう。大丈夫、自分で言うのもなんだけどこの顔ちゃんと自前だから。

仮面越しにその光景を眺めていたが、ノンが『尋ね人』の私の顔をガン見しているのに気づいて身を固める。

もしかしてバレる?いやまさか。

「ふ〜ん…私のが可愛い」

ずっこけそうになった。着眼点そこかい。てか私と貴方は美人のタイプが違うでしょうが!

中身を飲みきったグラスを軽く爪先で弾いてから、ノンはボソリと呟いた。

「だってこんな仮面みたいな笑顔が可愛いわけないじゃん」

「…へ」

気づいた?どうして?今まで誰一人作り笑いって気づかなかったのに。

「心から笑ったなら私と競えるレベルかな」

にい〜っと楽しげな笑みを浮かべながらヒラヒラと紙を揺らして見せる。

パッと顔を見ただけで何人も騙してきた笑顔が作り笑顔とわかるとは、観察眼が鋭い、というか、勘そのものが鋭いのだろう。

感心しつつノンに続いてバーを出る。

武器屋に防具屋、道具屋から何でも屋となかなかに充実した大通りをノンは鼻歌混じりに歩いている。

しかし、気づくと居なくなっていた。

「ジュースとコーヒーブラック、それぞれ一つお願いしますッ⭐︎」

そんで、いつの間にか出店で飲み物買ってた。

とてとて帰ってきて、ホイと私にジュースが投げられる。

「自分が飲むのはコーヒーなんだ…」

「だって『ジュースを買う俺』が可愛いだろ?」

「急に男声になるの止めようか、ディオ」


ぐわしっ(顔面を掴まれた音)


「ノ・ン・ちゃ・ん・ね?」

「いだだだだだだだだだ待って待って痛い痛い指が肉に喰い込んでる」

ギリギリと顔面に細い指が容赦無くめり込む。

仮面を付けてるのに、器用にカバーされてないところをピンポイントで狙ってくる高等技術はなんなのか。

「可愛いけど…自分で言うのはどうなの…」

「えー?」

鮮やかな赤とピンクのグラデーションが女子に人気らしいドリンクを私から取り上げ、赤い液体越しにキャッキャとはしゃぐ女冒険者を覗き見るノン。

そして人の悪い笑みを浮かべてこう囁いた。

「じゃあ、私一人とあの女の子二人、総合してどっちが可愛い?」

ノンがチョイスした二人は決して不細工ではない。むしろ二人ともかなりの美人だ。

だがしかし、ノンと比べろと言われると困る…なにしろ、理想的な美貌の持ち主だ。

「…貴方です」

「ね?」

ならば良し、と言わんばかりにトンと頭に未だ冷たいジュースを置かれる。

公私共に認めるなら自分で言っても良いだろう…ってことか。

流石の自信。あとジュースは素直に貰っておく。初めて飲んだが美味しかった。

迷うことなくただ一直線に歩き続けるノンに私は問う。

「もう仕事は見つかってるの?」

一度頷いて、ノンは乾いた笑いを漏らす。どうやらあまり気乗りはしていないらしい。

「払いは良いんだけど…ちょ〜っと面倒な人だから気をつけてねぇ…」

その時は、ノンの言葉の意味が良く分からなかった。

…………その時は、ね。


私は依頼者との顔合わせの為、部屋に入った瞬間、全てに納得がいった。

(…ああ、成る程…これは…)

回復魔導の書、杖、どこかで似たようなものを見た気がする礼服、ハニーブロンドのカツラ。

私のポスター(身に覚えなし)

私の写真が壁その他至る所に(身に覚えなし、全てNOTカメラ目線)

ええ………リアクションに困る……

仮面あって良かったよ。私の鋼鉄の如き笑顔が崩されたのは久しぶりだ。

あとは部屋の至る所に薔薇、薔薇、とにかく薔薇。

名家のお嬢様=薔薇って事かな?単純だなオイ。

そんな悪夢を凝縮してから固めたみたいな部屋で待たされる事数分。

…めっちゃ居づらいんですが。

こんだけ自分が大量にあると落ち着きたくても落ち着けない…いや待て自分が大量にあるって何!?

落ち着け私言語までおかしくなってきてる…落ち着けるかぁーっ!!

葛藤しつつ待っていると、奥の扉がやたら荘厳にゆっくり開き、明らかに仕事中の私リスペクトな格好の女性が出てくる。

女性は礼服から髪まで完全再現だ。

しかし、私とかなぁーーーーり年齢が離れている気がするのだが。口と目元の小じわが気になりそうな年齢と思われる。多分、つか絶対に。

その年齢でその格好無理ありますよ、と言った方が良いのか、言わぬが仏なのか。

無理矢理白粉で小じわを埋めて、化粧で二、三十歳近く若作りしている姿は見ていていっそ哀愁漂うものがある。

私の心境などいざ知らず、女性は誇らしげに、その格好を見せびらかすようにして私たちと対面のソファに腰掛けた。

「あら、新入りサンかしら?初めて見るお顔ね」

間近で見て分かった。髪色もどうやら染めているらしい…気合入ってんなぁ

私が完全に硬直しているのを片目でチラ見してから、ノンが切り出す。

「ところで、依頼内容は何なのかなぁ?」

「それは勿論…」

女性はオホホと笑い出しそうな、口元を手の甲で押さえるポーズをとってから言った。

「…単なるフィールドワークよ」

なぜ溜めた!?それだけの事ならなぜ溜めた!?

さっきから脳内でずっと突っ込み続けて疲れてきたんですけど…

「ヒーラーは一人でフィールドワーク出来ないですから」

ふんぞりかえって言う事じゃないと思うんだけどな…

「ふんぞりかえって言う事じゃないと思うなぁ〜」

ノン、ナイス。言いたいこと代弁兼ねてくれてありがとう。

「要するにフィールドワークの護衛でしょ?受けるよ〜その依頼」

え、やっぱ受けちゃうの?

自分のコスプレした人と素材集めとかしたくないんですが、心から。

まあ受けるなら仕方ない…極力関わりを持たずに穏便に終わらせよう…


————と、思ってた時期が私にもありました。

「ねえ貴方聞いてるの?ミエナ・ホーネティアはね…」

何故私。何故ノンではなく私に話しかける!!

しかも内容が私の素晴らしさ語りって何!尾ビレ背ビレつきまくって原形留めてない記憶にない冒険譚なんて聞きたくないってば!これが生き地獄か!?

近所に一人は居る話たがりのおばさんか!でもここ団地じゃないからね、モンスターまみれの安全圏外だからね!

まずヒーラーが前線部隊と一緒に居るのは御法度でしょうがよ…!(元ヒーラーのプロ意識)

完全にノンが極力我関せずを決め込む姿勢に入っている。

おしゃべり、変人、足手まといの三拍子。失礼だけど確かにこれは捕まりたくない…払いは良いけど…悩む。

「それにしても、先程からずっとノンにだけモンスターが行ってますわね」

そりゃそうだ。何故ならここに生息しているのは『ラヴァード』という鳥モンスター。

生態としては、自分が恋したいと思う雌に攻撃耐性で突っ込んでいく、というもの。

…結果、全てのラヴァードがノンに向かって突撃しているのだ。

まあ、性別不明な仮面、おばさま(若作り)、超美少女ロリータ(男)をパッと見で比べれば最後のに飛びつくのが自然の摂理だろう。

しかし、当然私は今声を大にして叫びたいことがある。

そう、「それ男ですよ」…と。

ノンは片端からラヴァードを叩き落としている。前回箒という名の鈍器は折れてしまったので、今回はハートモチーフの魔女ステッキ(鈍)だ。

だから手持ち無沙汰と言えばそうなのだが、お喋り大魔王なこの人と一緒に居続けると、話の内容的にも軽く発狂しそうだ。

今は発狂したくはない。だから、戦場に逃げることにする。

「ノン、手伝う。貴方は今のうちに素材回収してください」

殴っても殴っても湧いてくるラヴァードを二人で片付ける。

目をハートにしてまっすぐノンに突っ込んでくる為、起動の予測は容易だった。ただ量が異常だ。攻撃を喰らう前に全て撃ち落としてはいるものの、終わりの見えない量というものはなかなかに心を挫いてくるものだ。

しかし、苦い顔の私とは反対に、ノンは何故か笑みを浮かべたままステッキをぶん回している。

何か思いついたことでもあるのか、と聞くより先に答えが聞こえてきた・・・・・・

バッサバッサと羽ばたく音。しかも相当に巨大な鳥類の。

(…デジャヴ)

前にもこんなことあったな。多分一日くらい前だっけ♡

そういえば、こんな言い伝えがあった気がする。

ラヴァードを異常なほど大量に倒すと、ラヴァードの親玉的存在である『マニアック・ラヴァード』が出てくる。それを倒すと、暫くの間ラヴァードは出てこなくなると。

最初からそれ狙いか、コイツ。どこまで狡猾なんだ。

「ハハッ…祭りの始まりだぜぇ…」

小声ではあるものの、男声でボソリと呟く。苛々してたのも相まってだろうが、声の雄みが凄かったぞ今。

ま、そうだね、私もテンション上がってきたよ。

上空から急降下してきたマニアック・ラヴァードに少し驚き、ノンは流れるように私を庇う形で防御体制をとる。

衝撃に備え、即カウンターを叩き込もうと身構えたが、衝撃は襲ってこず…

「ぎゃあああああああッ!?何で私にいいいいッ!!」

代りにコスプレおば様の悲鳴が聞こえてきた。

声の方に目をやってみれば、目をハートにしたマニアック・ラヴァードに突撃されまくってるおば様の姿。

何だあの突撃。求愛行動にしても激し過ぎる。当たったらほぼ確実に死ぬぞあんな突進。

それを全て紙一重で躱しているおば様。もしかしたら戦闘職の才能があるのではなかろうか。

「なる程…マニアック・ラヴァード…名前通りマニアックな恋愛対象を持つ鳥なのね」

冷静に情報を分析する暇ができたので、今更遅いがようやく名前の意味にたどり着く。

「ここのヤツは熟女好きって情報が前もってあったからねぇ。食いつくと思ったよ〜」

こうなるって分かってて連れてきた上に、マニアック・ラヴァードが出てくるように行動もしたと。鬼畜過ぎるだろ。

「…というか、ここのヤツ“は”?」

「イェッス〜。全国津々浦々、地域によってマニアック・ラヴァードの好みも違うからね。

小児性愛な子も居れば女王様好きな子も居るよん」

「例えが生々しいな…」

幼女に女王様、不細工専や男に求愛する奴もいるらしい。

愛する対象は様々だからね。良いと思うよ。でも求愛行動がアウトだ。

「事実だからねぇ」

二人していっそ舞のようにラヴァードから逃げ続けているおば様を暫く鑑賞する。

目的だったフィールドワークはもう完了しているはず。なら私たちももう守る義務はないことになる。

「ちょッ…お願…ッ助けて……」

息切れの合間に発されるSOS。まあスタミナ的にもこれ以上放置は無理だろうし。

上から目線な態度も外れたし、助けることにしよう。

「ノン、そろそろ助けよう」

「え〜、ミーナは優しすぎだよぉ〜」

そう言いつつもステッキを構えてマニアック・ラヴァードに向かって跳躍するノン。

私も助走で勢いを稼いでから跳躍、羽に向けて刃を振り下ろす。

巨鳥は素早く反応し、私が風切羽を傷つける直前で回避行動をとった。

「甘い」

風切羽は鳥系モンスターの生命線だ。避けられるのは想定内。

だから私はフェイントに過ぎない。

回避先にはステッキを振りかぶったノンの姿。

慌てて距離を取ろうと旋回するが、回避の後ほど行動が鈍る時はない。

「逃がさないよぉ…トゥウィンクルアタ〜ック⭐︎」

メギャッ、というトゥウィンクルとは程遠い音を立ててステッキが腹部に叩き込まれる。

グゲーっ!と嘴の間から悲鳴と唾液を漏らして悶絶する姿に同情する。

そのまま同じ威力の攻撃を容赦無く連打連打連打。凄まじい速さで全身くまなく殴られていく光景は、何故か私に鶏肉のたたきを連想させた。

「…焼いたら美味しそう」

グギャッ!?(驚きを含んだ涙目)

「あっははははは!焼いても美味しくないよぉ?コイツ偏食だから!」

ひー面白、とツッコミつつも抱腹絶倒しているノン。何か変なこと言っただろうか。

それと、偏食かどうかで美味しいかどうかって決まるのだろうか。

食べてみなくちゃわかんないでしょ。

あとなんかマニアック・ラヴァードが完全に私を恐れた目で見ているのは何故なんだろう?

「はっ早く!早く倒してしまって!」

コスプレおば様の中でコイツはもうトラウマレベルの生き物認定されたらしく、早く倒せと催促が飛んでくる。

んー、まあ苦痛を与え続ける趣味なわけでもないが…

チラとノンにアイサインを送れば、肩を竦めてからウインクが飛んできた。

倒して良し、のゴーサインが出たし、倒してしまおう。

「ノン!」

「オッケ〜合わせるよぉ」

剣撃と打撃のクロス技、狙う先は顔面。最後まで狙われていなかった部位をわざわざ攻撃するのは、ラヴァードたちにとっての魅力でノンはおろかコスおば様にすら負けたからとか、そんな私怨が入ってるわけじゃないよ?別に。

選ばれなかったことなんてほんっとうに気にしてないよー!!

重々しい二撃が顔面に直撃。

ただでさえ消耗していたのに、ジョブ的に攻撃力が異常な私と、筋肉にものを言わせたノンの高火力の連撃に耐えられる訳もなく。

あっさりと倒れ落ちたマニアック・ラヴァードを眺めて、急に今自分がこれを倒したという事実に現実感をなくした私は手をぐぱぐぱと開閉する。

回復魔法以外では用無し、単なる金蔓と呼ばれていたのに、今はしっかりこんなのと対等以上に戦ってるのか…

「ど〜しったの?おば様もう帰っちゃったよ?逃げるみたいに。

相当こたえたみたいだねぇ、求愛行動!何十年かぶりの春だったと思うのに〜ww」

クスクスと笑っているノンを呆けながら眺め、思ったことをそのまま口にする。

「本当にありがとうね、ディオ」

「はっ!?」

急に地声に戻って驚かれた。

急に地声に戻らないでほしい。心臓に悪い。

耳が赤いが熱でもあるのかな?

「…熱?」

顔を覗き込もうとしても徹底して逃げられる。心配してるのに何故。

ま、いっか。

「ねえノン、これ食べれるかな」

「…いやだからラヴァード食べようとしないの〜!」

通常運転に戻った。

明日はどんな冒険があるのか。

一日でも早く、ノンの対等まで追いつけると良いけど。

お付き合い頂きありがとうございます!

ちょいちょい進展していきますのでよろしくお願いします!

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