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第六章238

「もうちょっと自分を認めてもいいんだぞ?」


 気が付けばそんなことを口走っていた。デリケートな問題であると気が付けど、よくよく考えれば彼女からは内面など色々と聞かせてもらっている仲である。

 深い仲であれば、こういったことも指摘するべきだろう。


「自分を認めて、ですか……?」


「あぁ、フィリピーヌたちがしてくれてることは結構な重労働だ。一々礼を言われるようなことじゃない、なんて謙遜するものじゃない。礼は素直に受け取ってくれていいし、何なら報酬をねだってくれた方がこっちとしては気も楽なくらいだ」


「あぁ、なるほど……」


 俺の言葉にフィリピーヌはほんのりと笑みを浮かべる。

 そこには卑屈さはなく、ただ嬉しいという感情だけを見て取ることができた。


「これでも随分とマシになったとは思っているんですよ。昔のように自分を守るため過剰に虚勢を張ることもなくなりましたしね。何よりあなたがいますから」


「俺がいるから、っていうのは……」


「勿論、あなたが私のことを認めてくれているのを理解しているから、私も自分のことを以前よりも認めることができるようになったということです。ただ、無意識の部分ではまだ癖が残っているようですけれど。罪悪感も全て消えるわけではありませんしね」


 そう答えるフィリピーヌはしかし、悲壮感に顔を染めていることはなかった。たしかに今までしてきた自分の罪を忘れることはせず、受け止めてはいるのだろう。

 けれど、そこにはただ顔を背けることなく過去を受け入れ、乗り越えようとしている姿勢が見て取れた。ならば、俺としてはそれを支え協力するだけだ。


「改めて、ありがとうございます。あなたのおかげで私はまだここに居られます」


「フィリピーヌが救われたいと願ってくれたからだよ。それに気づくことが出来なければ、俺も手を伸ばすことができなかったからな。こちらこそ救わせてくれてありがとう」


「……そういうことを本気で言うから、なんでしょうねぇ」


「これくらいで皆が慕ってくれるなら、いくらでも本気で言うさ」


「自覚しても本心でそう言えるあたり、相当ですよ」


 まったくもうと苦笑しているフィリピーヌだったが、何だか楽しそうだった。釣られるようにしてこちらも笑ってしまい、何故か二人で少しの間笑い合う。 

 何にせよ、誰であれこうして笑い合える世界になってほしいと思う。だからこそ必要な教義として、こんな文言も一緒に掲げてもらおう。


 自らを愛し大切にすること。


 とても大事なことだ。けれど度が過ぎてもいけない。

 この項目にもやはり、今までの教義と同じように注釈を入れる必要があるだろう。

 しかし、自惚れ過ぎないよう自戒もすること。

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