第六章237
山道を進み始めてから数度目の襲撃。魔物たちがかわいそうになるくらいの惨状が、ものの数分で出来上がることにも慣れてしまった。
捨て置くのは勿体ないし、何よりこのまま放置して大量の腐敗した死体だらけにするのはまずい。そういうこともあり、剥ぎ取りなどの作業もしっかりと済ませる。
大量の素材であろうとも、商会の用意してくれた収納スペースを拡大された法具である馬車や鞄のおかげでしっかりとしまい込める。これらの素材を手土産にするのもいいかもな。
ちなみに、剥ぎ取りはフィリピーヌが指揮を行い、その部下たちがやってくれている。最初は俺たちでやろうと思っていたのだが、戦闘を任せきりにしている以上、自分たちにも道中の仕事をさせてほしいと言われては断れなかった。
移動中に身体を休めることはできているだろうし、手持無沙汰なのはたしかだろう。何もすることがないというのも、精神衛生上よろしくないことはわかる。何より、何もかも任せきりで自分たちは休んでいるだけというのは居心地も悪いだろうからな。
そういった理由もあり、素材の回収は完全に彼女たちに任せている。
それに、彼女たちに任せたほうが回収するまでの時間がずっと早いのだ。個々人の技術を考えれば、クロエに任せたほうが一番丁寧で早く終わる。しかし全体で見れば、人数が多いというのもあるがフィリピーヌの指揮する部下たちの方が手際良く終わらせていた。
戦闘中もずっと全体を把握するように見ていたフィリピーヌが、戦闘が終わった瞬間から人員を振り分け、解体、運搬、残った死骸の埋め立てなどを取り仕切る。もともと部隊として動いていた彼女たちは、指示通りに動くという習慣が身についており、的確な指示のもと淀みなく作業を終わらせてくれるというわけだ。
やはり彼女が身を置くべき役どころは、エメリーヌのように人を動かす立場だろう。そう考えれば、最終的にビオローナに残る選択は間違っていない。
問題は彼女の処遇を、国がどのように下すかだ。ただ、被害を受けていた部下たちがそもそも彼女が罰されることを望んでいないのだから、それほど心配することはないだろう。
俺たちがビオローナを救うことができたときには、彼女は国を救ってくれた存在を連れてきた英雄になっているだろうしな。そういう意味でも、絶対に救わなければならない。
「素材の回収は無事終了しました。いつでも出発可能です」
「あぁ、ありがとうフィリピーヌ」
「いえ、自分にできることをしているだけですから。それに、目的地へつくまで何度こんなことがあるかもわかりません。そう何度もお礼を言ってくれなくてもいいのですよ?」
彼女の感覚からすれば、当たり前の言葉だったのだろう。
しかし、それは無自覚に自らを軽んじるという当たり前だった。長年のうちに心にへばりついてしまった、彼女の中での常識。
俺にはどうにもそれが、痛ましく思えてしまった。




