に
駄目ね。私ったら、きっと愛に飢えていたの。
何が愛なのかって、わかってなかったのね。
私だけじゃないわ。
君だってそう。皆だってそう。
だれもが愛に飢えていて、だからだれも愛を知らなかった。
わかっていなかった。
この世界で本当に愛を知っていたのは、あの人だけだったのよ。
最初からそうだったんだ。
そうに決まっていたんだ。
だから人々はあの人に愛を求めた。
あの人の傍にいれば、愛がもらえると思っていた、愛が手に入ると思っていた、愛を知る日もやって来るのだと信じていた。
あの人だからこそ、そんなことはわかっていたのに。
愛を知っているつもりになったのよ。
偽物の愛を、偽りの愛を、愛だと勘違いさせたのね。
唯一、本当の愛を知っていたあの人が、もういなくなってしまったものだから、正しい愛に導いてくれる人だっていないんだわ。
皆がそれを愛だと信じれば、それが愛になったんだわ。
だから求めたのね。
愛とは違うものだって、愛と似た姿を持つそれを、求めたのね。
あの人のいなくなった、つまりは愛がなくなったこの世界で、私は瞳を瞑って愛を待っていたの。
叫んで、叫んで、叫んで、君に届くと信じて、君に届けと叫んで、私は愛を待っていたの。
愛してる。愛してる。
言葉に偽りはなくたって、真実と信じるそれが実際の真実とは違っていることを、あの人がいればだれも気付いただろう。
本物が隣にあったなら、気付いたことだろう。
けれど本物が存在しないなら、代わりの本物だって、本物になれるのよ。
それでも私の本物は、君の心には届かなかったのかしら。
馬鹿みたい。馬鹿みたい。