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刑務所といえども、一旦外に出れば見物客用の出店なども立ち並んでいる。
「へへ。まあまあ、団子でも食べましょうよ少尉。カネないので有限価格ですけど!みたらし有限で三本下さいな!」
そう言って、みたらしをほうばった緑川を島根は疑心暗鬼な眼差しで見つめていた。有限価格で三本210円。まあ、まあ、それはいいのだが。さりげなく奪われた自分のカードを使われたのだが。まあ、それはいい。
しかしなぜ職歴も担当部署も違う、顔合わせもしていない、噂に聞くだけの諜報部のエースが。なぜ突然自分に近づいてきたのか、
それが気になって仕方なかった。
「なぜ、俺に近づく?」
ド直球な質問。しかし、緑川は言葉を返すのに間髪いれなかった。
「そりゃ、陽炎の爆破魔を殺した張本人だからですよ!」
そして、きゃあきゃあと騒ぐ。しかし島根は疑いを解かない。
「回りくどいのは嫌いだ。言え。本当の理由は?」
それを聞くと急にきょとんとして、少し真顔になった挙句、静かに喋り出した。
「うちらの親玉いるでしょ?大総括アルガレイ=ギルバロック。」
そんなクエスチョンを付けられなくとも、この世界を生きる者なら誰もがご存知の存在だ。人間の事情により一方的にサーヴィスが終了し、この世界に取り残されたAIやNPCを統率した。そしてHANKという軍隊を創立し治安をも統一した人物。それがアルガレイ=ギルバロック。北マルボリー出身の軍人。または、世界議会のメンバーでもある。
緑川はハッ、と口を大きく開けて言った。
「あれ、ぼくたち二人で殺しませんか。」