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「少尉!島根少尉!」
か細く弱々しい声が、刑務所内の細長い廊下へ小さく響いた。
思わず、足を止める壱晴。
対面するは軍の機密機関、諜報部2課の緑川であった。駆け寄ってからの、すかさず敬礼も忘れていない様子。
「ッ!自分は国防軍HANK諜報部2課の緑川奏太であります!」
「声小さっ」
自分に比べてまだまだ若々しい10代のあどけない少年。髪は肩まで伸ばしっぱなしの黒髪で、なにやら防御力の高そうなレインコートを着用している。
「今井死刑囚の処罰は如何致しましたか?
」
「最後まで抵抗しやがったから、サクッと殺したよ。」
その言葉にパッと明るくなったと思うと、緑川はピョンピョン跳ね出して、壱晴に抱きつかんばかりの勢いではしゃぎ出した。
「計算通りです島根少尉!あなたなら殺れると信じてました!これら一連の流れは全て僕のシナリオに沿ったものだったんです!」
「はあ?」
突然、少年は地面に蹲ったかと思うと、土に棒で絵図を描き出した。それは島根壱晴少尉が「陽炎の爆破魔」今井冬馬を捕縛してから殺害するまでの事柄を、時系列に沿ってピッタリと描き写して見せた。
「...お前、謀ったな。」
「あれ?いけないことでした?10年以上逃げおびせたテロリストを処罰したのだから、名誉なことでしょ?」
この後、島根少尉の怒りの拳骨がまだ若々しい少年の旋毛を擦り殴ったのは言うまでもない。