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エピローグ 里山風二郎の場合
「期末テスト前のこの時期に面談するのはなあ、一つはテストに向けて尻叩くため、もう一つは不安定な子のケアをするためなんだが、どうだ? 何か悩みはあるか?」
桂はクラス名簿を見つめていた。
「帰って来てまた期末テストかよ。しかも一度受けたやつ」
「何か言ったか?」
「いいえ、何もございません。悩みもございません」
桂は頭をかいた。
「お前は一見、何も悩みとかなさそうに見えるけど、お前らの歳で悩みのない奴なんていない。ここで言っておくのも手だぞ。秘密は守るし」
風二郎はかつて自分が言ったことを思い出していた。
「いや、もう考える人は止めたから大丈夫。これからはボールを蹴る人になるよ」
桂は口を開けたまま、じっと風二郎を見た。
「サッカー部に入るってことか?」
「そういうこと。俺の面談は終了。次、雷二郎だろ? 呼んでくるよ」
出て行こうとしたら、呼び止められた。何を言われるかは分かっていたので、先手を打つ。
「分かってるって。数学はちゃんと勉強するよ。桂先生」
「あ、ああ。ならいいんだが」




