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双子×2のジャンルトリップ  作者: 仙葉康大
第六章
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ジャンル5 ファンタジー

 歓声が吹き荒れていた。


 風二郎ふうじろう雷二郎らいじろうは円形闘技場の中心にいた。闘技場を丸く取り囲む客席には、巨人、ドワーフ、エルフ、杖を持った魔法使いなど多様な種族が座っている。


「どうやらジャンルジャンプしたみたいだ」

「なあ、ライ。俺何もしなかったけど、エンド条件達成したのか?」

「ああ。前の世界のジャンルは、多分、恋愛だったんだ。それより今はこの世界のことだ」


 雷二郎は自身の服装を確認した。からし色のローブに、革靴。風二郎も似たような恰好かっこうだったが、ローブの色が白だった。


「ジャンルはファンタジーか? 一花いちか月夜つくよが見当たらないな」


 歓声の中でもはっきりと聞きとれる大きな声が闘技場全体に響いた。


「次に西入場ゲートから登場するのは、剛力兄弟と恐れられているドワーフの二人、ガンエンとデイシンだー」


 声のする方を見ると、金髪頭の青年が客席から身を乗り出し、杖をマイクのようにしてしゃべっていた。その横に月夜、一花、そして王冠を被ったかつらがいた。四人の席は、ロープで他の席とは区切られており、周りには甲冑かっちゅうに身を包んだ兵士が立っている。


「月夜も一花もお姫様みたいにドレス着てるぞ」

「推察するに、みたい、じゃなくて、本物の姫なんだろう。この世界では」


 二人の正面に見えている西入場ゲートから歩いて来たのは、二人のドワーフだった。巨大なハンマーを持っている。ドワーフの身長は普通なら人間よりも少し低いぐらいだが、目の前のドワーフはどちらも六メートルを優に超えている。


「巨人かな?」

「さっきドワーフって言ってただろ」

「ドワーフには見えないなあ」

「ごちゃごちゃうるさいぞ、人間」

「お前らの一回戦と二回戦の試合は見た。大したこともねえのに運だけで勝ち上がりやがって」


 ドワーフたちの上から目線の高圧的な態度に、風二郎と雷二郎は肩の力を抜いた。


「こいつら、何か小物くさいぞ。何とかなるんじゃね」

「奇遇だな。俺もそう思ったところだ」


 ドワーフの目が赤く染まった。一触即発のその時、再び解説者が話し始めた。


「四人ともストーップ。待ってくださいよー。三回戦からは試合の前にこれまでの戦いをダイジェストでお見せしますっ。では視覚魔法お願いしまーす」


 空中にいくつもの立体映像が浮かんだ。風二郎と雷二郎、透明な翼を持つ女剣士二人の姿が映った。


「二回戦の風二郎、雷二郎ペアは相手の攻撃を紙一重でかわす、躱す。三十分以上躱し続けました。一撃も当てられず力の差を思い知ったか、エルフの剣士クレアとアリスは敗北宣言。ギブアップしました」


 映像がドワーフ二入に切り替わった。相手は黒装束を着た老人二人だった。


「一方、ガンエンとデイシンの二人は開始早々ハンマーを振り落し、魔導師匠のコンビをノックダウン。二人は冥土送りにされてしまったー」


 ガンエンとデイシンは腕を高らかに振り上げ、「ウオオオー」と雄たけびを上げた。歓声もいっそう大きくなった。


「なあ、ライ。やっぱりこいつらすごいんじゃね?」

「俺もそう思っていたところだ」


 雷二郎の頬を一筋の汗がつたった。闘技場の頭上には大きな太陽が輝いている。


「ではでは、Aブロック三回戦を始める前にカツラ国王、そして見目麗しき姫君お二人に一言ずつコメントを頂きましょう」


「三回戦からはさらに白熱した戦いを期待する。しかし、くれぐれも王国の英雄ソフランの名を汚すような振る舞いはするではないぞ。戦士に求められるのは強さだけではない」

「あ、あの、フウ君、頑張ってね」

「ライー、私への返事忘れないでよ」

「おおーっと、姫君のお二人は風雷コンビを応援しているようだー」


 ドワーフの二人は何度もハンマーを地面に振り下ろしていた。


「さっさと試合を始めやがれ」とガンエン。

「まったくだ。人間共の目にはどう映るか知らんが、あのブスな姫たちのことなんてどうでもいいんだよ。こっちはとっとと優勝して王になりたいだけっていうのに」とデイシン。

「ガッハッハ。王になったら姫はぶっ殺して、新しい女連れてこようぜ」


 風二郎と雷二郎の目つきが変わる。


「では、準備はよろしいですかー。試合、開始」


 解説者がそう言った瞬間、ガンエンは凄まじい風を受け、闘技場の端の壁に叩きつけられた。あまりに風圧が強く、体が壁にめり込んだ。持っていたハンマーが後から音速で飛んで行き、ガンエンの腹に叩きつけられた。


 一方、デイシンは空からの閃光に打たれた。雷だった。落雷は空を砕くほどの音と共に、三度デイシンの体を焼いた。巨体が倒れると、焦げ臭い匂いが闘技場全体に広がった。


 そして、風二郎と雷二郎はそれぞれ片手を前に突き出していた。

 一瞬のうちに起こった出来事に、観客は静止した。しかし静寂も束の間、熱狂的な歓声が闘技場の外の森にまで轟いた。


「圧巻です。瞬殺です。なんということでしょう。一回戦、二回戦の優雅な戦いぶりから一変。風神と雷神の力をフルに使ってきました。勝者は、風神と雷神の血を八分の一受け継ぐこの二人、風二郎と雷二郎だー。歓声は鳴り止みません。これはとんだダークホースだ。王様どうでしょう?」


「期待以上であった。しかしおごるでないぞ。いくら娘たちが貴様らのことを気に入っとるといっても、娘たちと結婚し、次代の国王となるのは優勝者じゃ」


「あくまでルールはルール、ということですね。では、姫君のお二人にも感想を伺うかがいましょう」

「フウ君もライ君もすごかったよ」

「全員倒して優勝しちゃえ」

「はーい、ありがとうございました。では、勝利者インタビュー行きますよー」


 杖が二本、客席から飛んできて、二人の前に刺さった。魔法をかけられた杖はマイクの機能を持っているのだ。


「えー、戦い方をガラリと変えてきましたが、どうしてでしょうか? やはり一回戦、二回戦の相手は女性でしたから、手加減していたのでしょうか?」

「いや、あのおっさんドワーフ共が月夜と一花のことをブスとか言いやがったから、ぶっこ――」


 雷二郎が慌てて風二郎の口を封じる。


「一回戦、二回戦の相手に対し手心を加えていたわけではありません。今回の試合では、持久戦になると不利だと判断し、先手必勝で決めさせてもらいました」

「コメント、ありがとうございました。さて皆さん、次の試合も注目ですよー。今回の優勝候補の竜人族の二人と、西の大陸の賢者二人の対決です。はりきっていきましょう」


 風二郎と雷二郎は闘技場から退場する際、通路で二人の男とすれ違った。一人は、赤い鱗で全身がおおわれていて、背中に大剣を担いでいた。もう一人は、黒い鱗で全身が覆われていて、長槍を持っていた。二人とも頭が竜のそれだった。赤い方が、竜の鼻孔びこうから黒煙を吐いた。


「楽しみにしてるぜ。お二人さん」と赤い方。

「兄者、余計なことをしゃべるな」と黒い方。


 風二郎と雷二郎は悟った。先程解説で紹介されていた竜人族の二人だ、と。この二人には勝てない、と。

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