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双子×2のジャンルトリップ  作者: 仙葉康大
第三章
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SF 里山雷二郎の場合

 雷二郎らいじろうの頭の中では、会議が開かれていた。


「まず火力とスピードが違いすぎる」

「飛車角落ちで勝てる相手じゃない」

「次のジャンルに移りさえすればいいんだから、無駄な戦いは避けるべき。たとえ誰が犠牲になっても構わないじゃないか。あくまでこのジャンル内の争いだ。俺たちの生きる現実とは関係ない」


 抗議の声は多数あった。

 それでも、雷二郎は風二郎ふうじろうの提案に乗った。


 二機のエイジー47は、敵の放つビームを次々に相殺していた。

 一花いちかは目を細め、敵機に標準を合わせている。


「ライってやっぱり優しいよね」

「火星人を倒すのがエンド条件かもしれないと考えただけだ。それにここで奴らを倒さなければ、基地に戻っても基地ごと破壊されるかもしれない」

「照れ隠し?」

「うるさい」


 月面軍も地球軍もまだ退却が完了していなかった。しかし、そろそろ攻撃に回っていい頃合いだろう。


「兄貴、作戦を伝える。これから通信はずっと入れたままにしておいてくれ」

「撃ち落せ。月夜つくよ、お前ならできる。諦めるな、撃て撃て。おしい」

「おい、聞いてるのか?」


「はいはい、何でしょう?」

「一機ずつ落とすぞ。追尾型のビームは赤色、それ以外は青色だ。速度はこちらより出るようだが、小回りを効かせて逃げれば大丈夫だ」


 ビームをかわし、一息ついて、続ける。


「一花、敵の機体をナンバリングしろ」


 センサーに映っている光点に1から4までの番号がふられていく。


「このデータを共有し、一機を集中して攻める」

「同期及び共有、完了したよ」

「ナンバー3から撃ち落す。一番動きがとろい機体だ」


 ナンバー3はほとんど動いていなかった。攻撃もでたらめで、考えなしにビームを撃ちまくっている。

 エイジー47両機は、左右から挟撃し、敵の攻撃をくぐり抜け、ビームを浴びせた。黒い機体は呆気なく爆発した。


「やったぜ。楽勝」

「調子に乗るな、兄貴。次、ナンバー1を狙うぞ」


 ナンバー1はとにかく速かった。接近して近距離から攻撃するスタイルで、一番多く地球軍と月面軍の機体を破壊していた。


「来たよ、フウ君」


 ナンバー1が風二郎たちの機体に急接近した。後方からビームを連射してくる。風二郎は急旋回を連続で行って、攻撃を避けた。


「ライ君、逃げながらじゃ狙いが定まらないよお。当てるのは無理かも」月夜が訴える。

「分かった。こちらで仕留める。攻撃を相殺することに集中してくれ」

「は、はい」


「一花、やれるか?」

「やらないわけにはいかないじゃない。月夜の命がかかってるんだから」

「おい。俺もいるからな、バカ」


 方向転換を繰り返すエイジー47、それを追う敵に狙いを定めるのは、難しかった。


「兄貴、座標3―5―50に敵を誘導しろ」

「了解」


 雷二郎は、指示した座標を狙えるポジションに機体を移動させた。


「一花、俺の合図で撃て」


 どのタイミングで風二郎が敵を連れて来るか、手に取るように分かった。だてに十四年間一緒に暮らしてきたわけじゃない。


「今だ」


 一花の放ったビームは吸い込まれるようにナンバー1に命中した。コックピットに当たった。一発で大破だ。


「ざまみろ、タコ」

「ちょっと、フウ。タコっぽい外見してるかどうかなんて分かんないでしょ」

「火星人ってどうしてタコのイメージがあるんだろうね」


 雷二郎は操縦桿そうじゅうかんを手放して頭を抱えたくなった。


「お前たちは何でそうなんだ。緊張感のかけらを拾い集めろ、バカども」


 戦場は刻々と変化していた。退却は完了し、残っているのは火星人の機体ナンバー2とナンバー4の二機とエイジー47二機だけだった。


 雷二郎は機体の操縦に集中していた。敵機は無駄のない動きで、時に攻め、時にこちらの攻撃を回避していた。


「どうするんだ? こいつら上手いぞ」

「今、考えてる」


 雷二郎は眉間にしわを寄せた。


 上手の相手と勝負するときは、飲まれてはいけない。相手より自分の方が上だと思い込む。それが勝負の鉄則の半分だ。もう半分はおごりを捨てること。敵機には驕りがある。旧型の戦闘機には負けるはずがないという驕り。付け入る隙はそこだ。


「月夜、小型ミサイル、持ってるな」

「うん。まだ二発残ってる」

「充分だ。兄貴、敵一機を引きつけろ。一花と月夜はミサイルの発射準備をしておけ。俺の合図で発射だ。ターゲットはお互いの小型ミサイル」

「あー、俺、ライの考えてること何となく分かったかも」

「タイミングが命だ。兄貴は――」


 雷二郎たちの機体にビームがかすった。右翼がわずかに損傷した。

 これで最高速度は出せなくなった。一か八かに賭けるしかないのか? それとも作戦を変更した方がいいのか?


 迷っている間も敵は攻撃をやめてくれない。

 雷二郎はある言葉を思い出していた。それは将棋大会の決勝で雷二郎を破った相手が言った言葉だった。


「井の中の蛙は大海を知らない方がいい。泳ぐのが嫌いになるぞ」


 そいつは中学生になって半年でプロになった。


「ライ」


 背中を叩かれた。


「ライならできるよ。私が保証する」


 一花の方を見る余裕はなかった。だから余計に、きれいな声が耳に残った。


「すまん」

「こういうときはありがとう」

「ありがとう」

「熱いぜ、ヒューヒュー」

「フウ君、からかわないの」


 通信をつないだままだったことを思い出し、赤面する。


「おい、指示出すぞ。兄貴たちは座標5―40―30でUターンして、5―30―10へ向かってくれ」


 二機のエイジーはそれぞれ反対の方向へ飛んだ。後ろから敵機が迫る。

 あるところまで行くと、エイジー両機はUターンした。そして二つのエイジーはある一点を目指して互いの距離を縮めていく。敵はまだ追ってきている。


「今だ、ミサイル発射」


 二つのミサイルが座標5―30―10で衝突した。爆発が起こり、煙が綿あめのような形で滞留した。


「兄貴、煙の中へ突っ込め。三秒後、右に方向転換だ」

「アイヨ」


 エイジー両機は煙の中へ突っ込んだ。真後ろに敵機が迫っている。煙の中でエイジー両機はそれぞれ進行方向に対し右に軌道を修正。ギリギリで衝突を避けた。エイジーを追っていた二機は、急な方向転換についていけず、激突した。


 コックピットから見える宇宙には、星のように輝く文字が浮かんでいた。

 Congratulation.

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