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双子×2のジャンルトリップ  作者: 仙葉康大
第三章
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SF 里山風二郎の場合

 先発部隊に追いつくまでの間、二人はお説教をくらっていた。


「まあまあ。かっちゃん。こうして追いつけたんだから。燃料だって余裕あるし」

「そういう問題ではない。貴様は日頃から上官に対する敬意が足りないのだ」

「あ、あの、かつら司令。私のせいでもあるので、ごめんなさい」

「もういい。とにかく、戦闘が始まったらまず敵のエイジーを叩いてくれ。しょせんコピー機だ。だが油断するなよ」


 通信が切れた。


「よし、これでやっと四人そろうな。月夜つくよ、ライたちと通信できそうか?」

「今はまだ無理だけど、通信可能圏内に入ったらできると思う」


 アラート音が鳴った。


「こちら先発部隊。敵を確認。三十秒後、戦闘を開始する。敵機数はおおむね予測通りだ。作戦に支障なし」

「了解。敵のエイジーは撃たなくていいぞー。無視しとけ」味方にアナウンスしてから、風二郎ふうじろうは深呼吸した。


 手汗をぬぐう。操縦桿そうじゅうかんを握りなおす。

 これから殺し合いが始まるんだ。


「フウ君、私も怖いよ。だから一人で怖がらないで。二人で、一緒に、怖がろう」


 さっきまで落ち込んでいたのに、月夜は笑っていた。


「サンキュー、月夜」


 前方ではすでに火花が散っていた。カラフルな光線や、小型ミサイルが飛び交っている。エイジー47は加速しながら戦闘域に突っ込んだ。


 風二郎は先程までの緊張から解放されていた。


「何だこりゃ。シミュレーション機の方が動きも攻撃も数倍速かったぞ」

「桂司令、私たちのだけ、難易度マックスにしてたみたいだよ」


 右前方で戦闘機が爆発した。

 緩んだ雰囲気を締めなおす。


「通信はまだつながらないのか?」

「やってるんだけど、混戦してるみたい。もう少し待って」


 戦闘機が飛び交う中、まばたきする一瞬の間に、二機のエイジーがすれ違った。


「やった。つかんだ。月夜、フウ、あんたたち無事?」

一花いちかちゃん。大丈夫だよ。そっちは?」

「こっちなんて最悪。もうちょっと遅くに来てよね。まだ朝食も食べてないのよ」

「私たちはご飯食べてから来たよ。宇宙食食べたんだよ。あんまおいしく――」

「何悠長(ゆうちょう)に話してる」


 雷二郎らいじろうの怒鳴り声が聞こえた。


「ライはいつも通りイライラしてんなー。じゃあ、いつも通り作戦をどうぞ」

「いったん戦闘域から抜けるぞ。座標12―50―10あたりに行け」

「了解」


 戦闘域を抜け出そうとしたとき、上から赤い光線が雨のように降り注いだ。風二郎は瞬時にシミュレーション機の猛攻を思い出した。操縦桿をミリ単位の精密さでもって素早く動かし、かろうじて攻撃を回避した。


 自分がまだ死んでいないことを確認し、息を吐き出す。

 月夜は絶句していた。

 今の攻撃で地球軍も月面軍も半数はやられた。


「ライ、大丈夫か?」

「何とか、避けた。それより上を見ろ」


 頭上には黒い球体が漂っていた。地球軍の大型宇宙空母ライカと同じぐらいの大きさだ。


「何だよ、こりゃ」


 球体の宇宙船から黒い機体が四機、射出された。


「とにかく離れるぞ。さっきのは無差別攻撃だ。あの黒いのは地球軍でも月面軍でもない」


 アラート音が鳴り響いた。モニターに桂が映る。


「無事か? 帰投きとうしろ。敵う相手じゃない。全機退却だ」

「おいおい、かっちゃんよお。聞いてないぜ。何なんだ、あれは」

「火星軍だ」

「火星にも人が住んでるんですか?」

「何を言っている? ヒューマンじゃない。火星人だ」


 風二郎はため息をついた。


「地球は火星人にも喧嘩を売っていたのかよ」


「違う。火星と地球は交戦関係にはない。あいつらにとってこれは一種の遊びだ。私たち人間が虫を殺すのと同じだ。火星人の技術力はお前たちも知っているだろう。そのエイジー47だって火星軍が開発したものを我々が真似ただけだ。奴らはエイジー47を何段階も改良した戦闘機に乗っている。いくら君たちが優秀でも勝てっこないのだ。即時退却しろ」


 黒い機体は次々とビームを放ち、地球軍や月面軍の戦闘機を撃ち落していく。


 火星人たちの母船である球形の宇宙船が光りだした。次の瞬間、きらめく粒子を残し、消えてしまった。テレポートしたのだろうか。ともかくこれで、火星側の戦力はたった四機の戦闘機だけとなった。


「野郎、なめやがって」


 風二郎が地団駄を踏んでいると、隣からカチッという音が聞こえた。同時にエイジー47が緑色のビームを放った。ビームは、火星人の奴らが放った赤いビームに当たり、爆発した。


 さっきのカチッと言う音、あれはトリガーを引く音だった。風二郎は機体のコントロールを担当しているから、標準を合わせてビームを放ったりする余裕なんてない。となると、ビームを放ったのは――。


「月夜、お前」

「私、少しの間だけど地球軍の人たちとお話したり、一緒にごはん食べたりしたから。死んで欲しくない」

「そうだな」


 風二郎は味方全機にアナウンスを入れる。


「しんがりはエイジー47が務める。皆は攻撃の回避と退却に専念しろ」


 反対の声がいくつも上がった。


「大丈夫だ。心強い味方が一機いるから」


 回線を切り換えて、雷二郎たちにつないだ。


「あい、月面軍の方針は?」

「そちらと同じ、全機退却だ」

「ライ、お前の方針は?」


 一呼吸の間があった。


「兄貴たちと同じだ」

「よし。じゃあ、火星人を殲滅せんめつするってことでいいんだな」

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