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双子×2のジャンルトリップ  作者: 仙葉康大
第三章
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ジャンル2 SF

「パイロット雷二郎《らいじろう》、パイロット一花《いちか》。聞いているのか。次の訓練はより実戦に近い、リハーサルともいえるものなのだぞ」


 天井が光っている。ホールには、ミリ単位で狂いのない隊列が組まれてあった。百×百の隊列だ。二人は、列の一番前に立っていた。


「朝礼で寝ぼけるとは言語道断。いくら両名が特級パイロットであっても、許されないことである。罰として、その場での腕立て百を命じる」


 壇上の男がそう言った。

 雷二郎と一花は顔を見合わせる。


「どういうこと? 私たちなんでこんな場所に」


 一花の言葉の途中で雷二郎が口を開いた。


「腕立ては二人で二百回ということにしてくれ。一花は体力のあるほうではない。今日一日の訓練に支障が出るのは、そちらの望むことではないはずだ」

「パイロット雷二郎の提案を承諾する」


 雷二郎は目で一花に合図した。

 結局、一花五十回、雷二郎百五十回の腕立てを行った。


「よろしい。では解散とする。各自持ち場へ急げ。故郷を取り戻す日は遠くない」


 人々が四散した後、一花は雷二郎に礼を言った。


「ありがと。ねえ、これって」

「ああ。次のジャンルに行けたみたいだな。さっきの様子と俺たちが着てるこの服からして、ここはどこかの軍隊の基地みたいだな。軍隊が出て来るだけじゃよく分からんが、時代物やラブコメでないことは確かだな」


「また何かと戦わなくちゃいけないの? そういえば、今回のエンド条件とゲートヒントは? ていうかあの本は?」

「第二図書室に残したままだ。持ってくるべきだった。くそ。まあいい。それより何か体に違和感ないか?」


「あ、そう言えば、腕立てふせそんなにしんどくなかったかも。私、普段は十回しただけでもヘトヘトになるのに。どうしてだろう?」


 ホールを出ると、通路の透明な壁面から、外が見えた。真っ暗な空には星が宝石のように輝いていた。その中でも一際目立つのが青い星だった。地球だ。眼下には大きなクレータがいくつもあった。そこは地球の重力の六分の一の世界だった。


「ここ、月? ということは」

「SFだな。サイエンスフィクション。少し不思議にしてはやりすぎだが」


 一花と雷二郎は月基地ルナ2、第二万三百五十四通路で、初めて見る宇宙の光景に立ち尽くした。


=========================================


「着陸失敗。アンコントローラブル。原因はパイロット両名の操作ミスです」


 ビービービーと鳴り響くアラート音に、風二郎《ふうじろう》と月夜《つくよ》は目を覚ました。

 二人は飛行戦闘シミュレーション機の中にいた。シミュレーション機の上部が開いた。二人をのぞき込んだ人影を見ると、月夜は悲鳴を上げた。


「桂《かつら》先生、駄目。変な液体かけないで」

「先生だと? ふざけているのか? パイロット月夜」


 人影は桂竜馬(りょうま)だった。緑の軍服を着ており、襟にはいくつもバッジがついている。


「落ち着けよ、月夜。ゾンビじゃないよ。どうやらジャンルが切り替わったみたいだ」


 風二郎と月夜は丸型のシミュレーション機から出て、辺りを見回した。フロアにはシミュレーション機が五十台ほど並んでいた。


「教えてくれよ、かっちゃん。俺はいったい誰で、あんたは誰なんだ?」


 桂が片手を上げると、白衣を着た人たちが二人を取り囲んだ。


「意識の錯乱が見られる。医師たちによるチェックを受けろ」


 医師たちは二人にペンライトで様々な色の光を当てた。


「異常ありません」と医師の一人が言った。

「今ので何が分かったんだよ」


 風二郎は声を荒げたが、桂は冷静だった。


「さて、パイロット風二郎。君は記憶喪失のふりをして先程のミスをごまかすつもりなのかね。それとも本当に分からないのか?」

「もの覚えはよくない方なんだよ。知ってるだろ、理科と社会が苦手なの。数学はもっと苦手だけど。そういえば、月夜も暗記は得意じゃなかったよな?」

「フウ君、そんなこと言ってる場合じゃないよ。あの、ここはどこなんですか?」


 桂は左右の眉がくっつくほど額にしわを寄せた。


「パイロット月夜まで何の冗談だ? まさか本当に。シミュレーション機の方もチェックしろ。二人とも質問に答えろ。頭を整理しろ。名前は?」

「里山《さとやま》風二郎だよ。面倒くせーな。こんなときライがいてくれたら上手くやてくれるんだろうけど」と風二郎は床を蹴った。


「雪岡《ゆきおか》月夜です」

「よし。年齢と職業は?」

「十四歳。学生だよ」

「ノー。間違っている。年齢はその通りだが、職業が違う」

「もしかしてパイロットなんですか?」

「そうだ。だが月夜、確信を持って答えていないようだな。何を操縦するのか言ってみろ」


 二人は首をかしげた。


「ついて来い」


 三人はシミュレーション室を出て、動く歩道に乗った。


「あ、これ知ってるぞ。空港にあるやつだ」

「私たち、飛行機のパイロットなのかな?」


 桂は第三部隊隊長に連絡を取っていた。


「ああ。そうだ。記憶が飛んでる。使い物にならないかもしれない。それはできない。オンタイムで進める」


 三人はブリーフィングルームに入った。


「ブリーフィングって?」

「説明とか指令とかを意味する言葉だよ。ほらあっちで何かそれっぽいことやってるよ」


 中では何人もの部隊長が命令を受けていた。部隊長たちは入って来た桂に敬礼した。


「すげえ。かっちゃん、偉いじゃん」

「それよりこれを見ろ」


 桂が壁に埋め込まれたモニターをタッチすると、画面に銀色の戦闘機が映った。二人は流星のように宇宙を飛ぶ機体に見とれた。


「わが地球軍で最高速度を誇る戦闘機、エイジー47だ。専属パイロットは君たちだ」


 風二郎と月夜は絶句した。


「そして普段から口をすっぱくして言っていることだが、私のことはかっちゃんと呼ぶな。桂司令と呼べ。月基地への攻撃はもう明日に迫っているんだぞ。しっかりしてくれ。どうだ? まだ何も思い出さないのか? このままだと月面軍に負けてしまうぞ。どうすればいいんだっ」


「こっちのセリフだ」

「ねえ、フウ君おかしいよ。ライ君と一花ちゃんは? 二人はどこ?」


 三人が混乱している今も大型宇宙空母ライカは月へ向かっていた。

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