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[02話] 悪魔召喚

今回もお読みいただきありがとうございます。

自分も書けるんじゃね?という一種の気の迷いによって書いてみたは良いものの、思うようにかけないものですね。

名だたる作者さんの才能と素晴らしさを日々感じています。

それからはハイハイに始まり、とにかく歩くための努力を始めた。

確か生後十ヶ月程になると歩き始めるのいうので、体がその準備段階にはいっているのは確かなはずだ。

とりあえずなるべく早くこの世界についてもっと情報を得たい。

それには本などの文献を読むしかない。

魔法は発達していても前世の様なテレビやスマホという情報ツールがこの世界にはないからだ。

何も知らない世界に放り出されるというのはなかなか不安なものである。

それから数カ月が経つと、立てるようになった。

よちよちながらも部屋中を歩き回れる程度には。

手すりに捕まって歩行練習をした甲斐があった。

自分の体でありながら成長の早さをしみじみと感じる。

何より、とりあえずの目標はこの世界の文字を覚えること。

できれば魔法なんかも見てみたいし、使ってみたい。

なんて言ったって前世では2次元でしか存在得なかった魔法という存在が、この世界には自分の手の届くところにあるのだ。

使えるなら是非使ってみたいと思うものだろう。


取り敢えず、何か本的なものはないか部屋中を見回してみる。

幼児向けの本が何冊かあるようだが、いかんせん文字数が少ない。


(そこまで勉強にならんな・・・)


せめて御伽話的なそれなりの文字数がある本はないのだろうか。

ネイサンは幼児向け絵本をペラペラとめくりながら少し考える。

セシリアが寝る前に読み聞かせをしてくれるお陰で話の内容は理解済みだ。

良い白い魔女と悪い黒い魔女がいてひと悶着ありながらも、最後は悪い魔女から人々を守るといった単純なお話である。


「あら、ネイサン様。御本をお読みになられているのですか?」


「・・・ん!ねいしゃん(ネイサン)こえ(これ)あちた(飽きた)!アリア、違うの!ちょらい(ちょうだい)!」


乳母であるアリアさんに新しい本を持ってきてもらえないか頼んでみる。

できれば文字数が多いやつが良いと願いながら。

それから、アリアさんが持ってきたのは魔女の別の本だった。

(・・・あ、コレ、シリーズ化されてるんだ・・・

ハ〇ー・ポッ〇ーみたいな位置付けかね?・・・)

だが以外にも今度は本は少し文字数が多いようにも思える。

その他に数冊アリアさんが持ってきた絵本を読んでもらいながら内容を理解し、文字に照らし合わせていった。

“文字を覚える!”という目的が単純だからなのか、この体の能力が高いのかは分からないがスイスイと文字が頭に流れ込み1ヶ月程で読み書きに不便することがない程度にこの世界の文字を理解した。

国が違えばまた違った言語があるだろうが今はとりあえずこれでいい。




―――――― 数ヶ月後 ――――――




それからというもの父ナイジェルの書斎と、家にある図書室(の様な部屋)を行き来する生活が始まった。

前世では本を自らすすんで読みたいとは思わなかったが、体が変わると嗜好も変わるのだろうか?

読んでも読んでも読み足りない、知識欲という新たな力を得てネイサンはひたすら本の山に身を投じていた。

読破するのにどれほどの時間を有するかはわからない。

だがネイサンはまだ1歳。人生はまだ始まったばかりだ。

この家にあるのは大半が魔術書の類いだが、それに加えて帝王学の全てという題の本が数冊、その他、歴史書や物語と言ったようなバラエティーだった。

(なるほど、「ハウツー薬草」「魔導師になるための基礎魔術」「上級魔術Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」「召喚術式(上)・(中)・(下)」「古式魔法(精霊編)」etc…なかなか興味をそそられるな!!)

何段にも積み重なる魔術書の山。

きっと文明レベルはそこまで高くないのだろうから本は貴重品だろう。

だがこの家にはそれなりの本数がある。

やはり高貴な家柄だという事か。

つくづく運が良い。

その恵まれた環境に感謝しながら、日がな1日魔術書を読んで過ごした。

ネイサンの小さい体に不釣り合いな分厚く大きな本をめくる度、自分の知らない世界の知識が蓄積されていくのがわかった。

ネイサンはこの家にある魔術書関連の本だけでなく、本という本を全て読破する頃にはあっという間に2歳になっていた。

拙かった言葉も今は流暢に話せる。

一日の大半を書斎と図書室で過ごしながらも、新たにわかったことがある。

それは上に兄が居ること。

15歳年が離れているらしく、王都の学校で学んでいるようだ。

この世界では18歳が成人らしい。

そう考えると前世の世界とあまり大差は無いように思える。

学び舎に至ってはきっちり大学のような高等学園制のものがあるらしく、これもまたなかなか進んだ文明であることがうかがえる。

もっとも、そうした学園で学べるのは金持ちのぼんぼんくらいなのだろうが、詳しいことは2歳の身では情報を得られるすべはない。

ただ、魔術が発達している時点で前世の世界とは違った発展の仕方をしたのは確かだろう。

兄は寮に住んでいる為まだ会ってはいないが、後一歳で成人を迎える兄が居るのに自分が2歳となると色々考えるものがある。

(・・・・俺の両親セシリアとナイジェルはいったい何歳なんだ・・・・・)

美形の両親の元に生まれたのだ、兄もこれまた美形であるに決まっている。

ただ、兄は極めて優秀であるらしい為、ありがちな家督争い云々は巻き込まれずに済みそうだ。

家のことは優秀な兄に任せて自分は早々に辞退するとしよう。

そして自分が住んでいるこの国が王都アトラパレスという比較的豊かな都であること。

豊かな都の力ある貴族、それも家を継がなくても柵の無い次男に生まれ落ちるなどやはり最高にラッキーだ。

せっかく剣と魔法の世界、憧れのリアルRPGが身近にあるというのに、家を継ぐだの覇権がどうのと煩わしいことにはなるべく巻き込まれたくない。というのがネイサンの今の気持ちだったのだ。


しばらくして魔術書を熟読し、知識を詰め込むだけ詰め込むと、ネイサンはとりあえず基礎魔法から実践して見ることにした。

今の自分が魔法を使えるかどうかさえもわからない。

だが好奇心には勝てない。

(本を読んで理解をするのに、それから話せるようになるまでが長かった。意外と時間を取ってしまったな・・・)

しかし、ネイサンはまだ2歳と10か月になったばかりである。

いそいそと部屋を出ると、廊下を移動し、階段を降りた。

この屋敷無駄にデカイのだ。


「あら、ネイサン様どちらに行かれるのですか?」


「うん。少しお散歩に行きます。」


庭師ガーデナーのスチュアートさんがぜひ薔薇を見にいらしてと言っていましたよ。それからバラの棘にはお気をつけくださいね。ネイサン様の愛らしい指、またはお顔に傷がついたりしたら!・・・・・やはり私も行きま『だ、大丈夫だよ!僕沢山気をつけるから!アリアさんの言う事ちゃんと聞いてるよ?』


乳母のアリアに早速見つかり声をかけられたがなんとなく魔法の練習だとは言わないでおいた。

アリアさんは少し、いやかなり心配性なのだ。

・・・母のセシリアよりも。


二歳児の小さな身体からだにはあまりにもこの屋敷は広すぎだ。

ちょっとした冒険である。

広間サルーンを抜けると外へ駆け出した。

ブラデネル=ブルース家は広大な敷地を有している。

ブラデネル=ブルース邸の門前ロータリーを真横に過ぎると、庭師ガーデナー自慢の薔薇園オランジェリーが見えてくる。

その薔薇園オランジェリーとロータリーの間を抜けて少し入ると噴水が置かれた広場ガーデンコートがある。

そのだだっ広い噴水広場ガーデンコートの空間でネイサンは火属性の基礎魔法である火炎弾ファイヤ・ボールと炎そのものを出現させる照炎ヴァレストを行使してみる。


呪文スペルは確か・・・猛る炎よ我が道を照らせ、出でよ!照炎ヴァレスト!」


ネイサンが唱えるとなんとなく前に構えていた手の上にボワッと炎が出現する。


「おおおっっ!!熱くない!!!不思議!!!」


いかんせん炎のサイズがでかいので、小さくできないか試みてみた所これは魔力量で調節ができそうだ。

魔力量調節は少し難しくて、何となくこんな感じかと息を吸い込む感じで魔力を引き上げてみるが集中しないとスムーズに出来ない。まあ要練習だ。

続いて火炎弾ファイヤ・ボールも行使してみる。

これも問題なく使えた。

それから一年かけて頭に叩き込んだ魔術の数々を片っ端から試していく。

中級程度ならどれも遜色なく、そして全属性をそれほど苦労せず発動することがてきた。

高位魔法は大規模なものが多いためここで実験することはためらわれたが。

(前世では何属性持ちとか聞いたりしたけど、この世界にはそう言うのないんだろうか?)

ネイサンは全属性魔法が大した負担もなく使えたことに少し驚いたがそんなものかと納得した。

ひとつ言えばいちいち呪文スペルを唱えるのが大変であるということくらい。

魔法基礎学の本を読んだ時に適正については触れられていなかったが、それが当たり前な知識であるからだ。

もちろん誰しもがネイサンのように全属性魔法を行使することが出来るなんてことはそうそう無い。

光属性は持っているが闇属性はない、火属性と風属性は持っているがそれ以外は使えない、ということはもちろんある。

人間の身で全属性を行使することは、それだけで魔力効率が下がる上、魔力の枯渇が激しく身体への負担が計り知れないのだ。

属性が増えれば増えるほど使える魔術の幅が増える。その反面、燃費が悪くなるのだ。

複数属性持ちは存在するが、大概は苦手属性などが存在し、宮廷魔道師など実力ある魔術師は1属性に特化して魔法を鍛える傾向がある。

そもそも人間の身では魔法の習得にも時間がかかるものなのだ。

であるから、ネイサンのその瞬間的な魔法の習得と身体負荷のない全属性持ちというのは最早人間業ではない。

それだけ魔術の処理速度が速く、魔力の親和性が異常に高い。

それは精霊や神、己の存在自体が魔力の結晶や魔力現象である者達、世界の魔法災害そのものであるドラゴンの類いであるかの様である。

まるで呼吸をするかのように行えているというのが明らかな異常なのであった。

輪廻転生の途中で神の力の断片を欠片ずつ受け取っていることがネイサンの能力を底上げしていたのだ。

そもそも、魔法を発現させるには空間内にある元素物質に含まれた魔力元素に自身の魔力を干渉させる必要がある。

その定義は理解したのだが、いかんせん呪文スペルを唱える必要性を見いだせないでいた。

呪文スペルを告げることで具体的なイメージを作り上げ、それをもとに脳内イメージ化された魔力を体外に放出することによって人間は魔法を使う。

だが、簡単に言えば練り上げた魔力を起こしたい事象に作用させるつまり、こうなれ~と思いながら対象に見合った属性魔法を放てばそれで魔法が発現するという事。

それに呪文スペルを唱える必要性が分からなかったのだ。

(・・・これって呪文スペル必要か?・・・)

無意識であるがネイサンはある種の空間掌握スペースグラスプ能力スキルがあるらしかった。

自身が認識している領域内で起こった事象を本能的に理解しそれを再現、また新たにその空間に事象を発現させる事も可能だ。

その能力スキルと人間にして全属性持ちと言う神の加護によって、魔法作用による事象さえ理解していればあとは魔力込めて、はい、解決!というなんともチートな男であった。

本来であるならば、呪文スペルを唱えることによって人間は魔法作用による事象を空間に宣言オーダーする。

呪文スペルに乗せられた魔術式によって魔法石の類を持って媒介した自身の属性魔力が引き出される。

そうしてようやく魔法が空間に作用することが出来るのだ。

だがネイサンはその必要が無い。

全属性持ちという出鱈目な魔力本質を持ちえているため、全魔法に対応可能な力を既に持っている。

それに加えた特殊能力ユニークスキル空間掌握スペースグラスプ』によって事実上、念じて魔力を放てば魔法が発言する仕組みになっていた。

したがって魔力媒介も必要が無いのだ。

試しにある程度の高位魔法を無詠唱で発言できるか試してみようとネイサンは思った。

基礎魔法は唱えなくてもできる気がした。何となくだが、その感はあながち間違っていなかった事はすぐに分かる。

高位魔法だと話は別だ。難易度も高くなってくるし、使う魔力量も多くなる。

もしかしたら出来ないかもしれなかった。

(水属性魔法であれば危険ではない・・・か・・・?火属性の高位魔法だと、辺り一面焼け野原になるとも限らんしな。

水の攻撃魔法ではなく気候変動系ならば・・・)

本来ならば長い詠唱がある「豊水の魔道書(アクアディンゲン)」という雨を降らせる高位魔法だが。


「・・・豊水の魔道書(アクアディンゲン)


ネイサンは空に手を振り一回スっと撫でると、空に大規模な魔方陣が出現し、青く一瞬発光すると途端に雨が降り出す。


「・・・うん。いけんな。」


この「豊水の魔道書(アクアディンゲン)」、水属性の気候変動系の魔法では最高位の魔法であるだけに雨は王都全土に降り広がった。

この突然の雨に理解できるものには激震が走ったのだ。

豊水の魔道書(アクアディンゲン)」を行使するということは水属性魔法師の最高位級の魔道士ということ。

それが王都にいるということを知らしめたのだから。

ネイサンがそのことを知るのはまた少しあとになるのだが。



そして最後に闇属性魔法の召喚魔法を行使してみる事にした。


「・・・しかし何を呼び出せばいいのかわからないな。危険も伴うとか書いてあったし、体は子供だし魔物に食われるとか・・・

うーん。その時はなんか魔法をぶっぱなしてみよう。」


(無詠唱で顕現するなんてあっさりしすぎててロマンがなあ・・・

ここはしっかり手順を踏んでおきたい。)


ネイサンは魔法陣を書き終えると手をかざして呪文スペルを唱える。


「・・・闇に蠕く者よ我の命に従いその真たる姿を示せ。

召喚獣顕現クリシン・エピファネイア!」


すごく強いのが出たらいいなあなんて純粋に心のどこかで思ったかもしれなかった。

だが、召喚魔法を行使するために書いた魔法陣に濃度の濃い闇が溢れ出し始める。

漆黒の霧が2mほどの高さにまで上がり、その闇が一気にパンッと霧散する。

するとそこには明らかに上位存在と思われる人型の何かが顕現していた。

その闇の濃度の濃さにネイサンは少し後悔する。

(手に負える相手じゃなさそうな・・・・少し失敗したかね・・・?)


「・・・数万年ぶりに我を顕現せしめたのはお前か・・・?」


「・・・わあお・・・うわあ・・・そうです・・・

おれ・・・あ、僕、です・・・」

(なんか凄そうなの呼び出してしまったなあ。)


一応人型をとってはいるが身長は遥かに高く2m近い。

洗練された出で立ちに、この世のものとは思えない美しさを有した容姿。

黒い鱗のようなものが身体を覆い、さしずめ黒い衣類のようなっているが、胸元ははだけ胸筋が露出している。

(なんてうらやま・・・・いや、俺だって将来有望だ。

ナイジェルだって大男だったじゃないか。うん。)

手は黒い爪が鋭く光り、そこだけが唯一悪魔然としていた。

どうやら悪魔らしいその真紅の瞳と唇に僅かに覗く牙。

悪魔という存在ならばその存在が上位のものであればあるほど美しくその麗しい容姿でもって人を惑わすという。

(・・・やばそう・・・)

闇そのもののような漆黒のオーラをまとって、それはこちらを赤い瞳で見つめていた。


「・・・我を従えたいと言うならば我の願いを一つ聞くが良い・・

我が主に相応しいと認めたならば血の盟約に従って其方に仕えよ・・・・うっっ!!!!?」


悪魔がネイサンを見るやいなや驚いた顔をしたが、ネイサンは悪魔の凶悪な姿と物騒な言葉にそこまで意識が回らない。

上級魔法系と言ってもそのほかの魔法は普通に魔法を行使するのと大差なかかった為、少し毛色の違う召喚魔法も苦労せず使えるものだと甘く見ていた。

そうか、“召喚魔法には魔物のレベルによって身体の一部を献上することを求められる事もある”って書かれていたっけ。

この世界に来てそんなに時間が経っていないうちからこんな舐めた態度で臨んでいてはすぐ死んでしまいそうだ。

今だって血を寄こせと割と物騒な事を言われている訳で、ほら見ろ、と頭の中の前世の自分が呟いた気がした。

どうにかなるだろうと、一瞬頭によぎった懸念を振り払ってしまったのは少し反省せねばなるまい。

せっかく神様がくれた第二の人生だ、長生きしなくては。

世の中甘くない、前世でさんざん痛い目を見てきたじゃないか。

前世ではドSな神様のお陰で、不幸に愛された数奇な人生であったネイサンもこの世界では不思議と幸運に恵まれている。

しかし、この世界で幸運が続いているからと言って気を緩めていてはいけないな・・・とネイサンは改めて気を引き締めるのであった。


「・・・血の盟約って・・・物騒だなあ・・・」


「・・・悪魔との契約が何も差し出さないですむほど悪魔は甘くはないですぞ・・・召喚主よ・・・」


「・・・血をあげればいいのか?」


「・・・目でも心臓でもかまいませんし、“美しい生娘を”と望む仲間も居りますが、我はわざわざ肉体をさばかなくてはならないのは・・・・いかんせん手間がかかりますので好きではありません。

それを好むものも居ますよ、と言うことです。ただ貴方様の小さき身体では色々と酷かと・・・」


「・・・・生娘か・・・まあ、無理だな・・・。

でもまだ俺・・・僕・・・二歳だし、血自体あんまりとられると死んじゃうんだけども・・・・

まあ・・・はい。飲んでいいよ。」


ネイサンは着ていたブラウスの袖をまくって手をさし出した。

首筋を晒すなんて真っ先に殺されそうで怖すぎるし、そもそも絵面が色々危ないだろう。

内心、腕をもがれたりしないかとびくびくしながら差し出したわけだが、それは杞憂だったらしい。

その大きな悪魔が、少し引くほど恭しく膝を曲げ、人差し指に牙を突き立てる。

もちろんそれなりに痛い。我慢できないわけじゃないが。

吸われる感覚も分かるし、指を舐められてる訳なので気持ちも悪い。

(これが綺麗な女型悪魔だったらさぞ眼福だろうに・・・・)

端から見たらあらぬ疑いがかけられそうな怪しい絵面に内心白目をむきながら、大悪魔を見ていると悪魔が何やら淡い光を放ち始めた。

すると淡い光が悪魔を包み、数秒経つとその出で立ちが先程とは変わっている。

漆黒だった髪も少し金色混じっていて、深紅の瞳と金色のオッドアイになっていた。

感じる圧力や魔力量も増大している感じを受ける。何というか、さらに洗練されて前より強そうな感じだ。


「・・・・・おおう・・・・・・・?」


「・・・・私はこれより貴方に血によって縛られる。血は人間の力、生命力そのもの。

あるじの荘厳たる鮮血のお力にて、先程軽く進化いたしました・・・」


「ええっ!?進化したの!?」


「はい。それが出来るほど主の力の根源は上質であると言うこと。

強い力をお持ちなのですね・・・さすが我が主となるお方。

おそらく何らかの上位存在から加護を受けているとお見受けします。

至高なる主、私は貴方の忠実なる下部しもべです。上位悪魔は美しいものが好きです。

中には美しい召喚主マスターでなければ認めない召喚主殺し(マスターキラー)と呼ばれる者も居るくらいです。それは私も例外ではありません。

その中でも我が主は飛び抜けて美しい!!!!!完璧です我がきみ・・・・嗚呼、私のご主人様・・・・」


「・・・ああ、そ、そう?」


うっとりした目で見てくる悪魔に気圧され、引きつった笑顔を浮かべる。

今にも飛びついてきそうなその大悪魔を牽制しつつ、そういえば名前を聞いていなかったことを思い立つ。


「・・・あ、なあ、名前とかどうするんだ?」


「は、主がお好きなようにお呼び頂ければ、それが私の誉れ高き名前になります。どうぞ、お名前をお与えください。」


「んー、じゃあアルテッツァね!アルテッツァ!今日からよろしく」


大悪魔が自分のものになった満足感から、そしてこれから何か特別なことが起きるような予感から、ネイサンは心躍る心情そのままにアルテッツァに微笑むのであった。


「っっは!!!我が美しの君、このアルテッツァあなた様の奴隷にございます!!!!!」


何やら興奮した様子のアルテッツァにとうとう抱きしめられ、その凄まじい力によりネイサンは思う。


「・・・・ぐぅえっっ・・・・あー・・・大悪魔の主人、しんど・・・・・」





皇帝ルシファー級の悪魔が一体。

悪魔上位種の突然変異によって生まれる強悪な力を持った最上位悪魔個体。

皇帝ルシファー級>君主ベルゼビュート級>大公爵アスタロト級……

と高位3階級が上位悪魔とされ、それ以下を3階級ずつに分け中級悪魔、下級悪魔と分かれている。

その中でも、アルテッツァはネイサンに召喚された時点では君主ベルゼビュート級であったが、その後ネイサンの血をもって皇帝ルシファー級へ進化した。

皇帝ルシファー級の悪魔は歴史上確認されたという記述がない。

ただ君主ベルゼビュート級のさらに上位の存在が存在するらしいと言う伝説のような存在であり、事実上、君主ベルゼビュート級が最高にして最強とされていた。いままでは。

アルテッツァの顕現によってその存在が白日の下に晒されたわけである。


皇帝ルシファー級になり得たのは主の崇高なお力の賜物です。皇帝ルシファー級になりますと、魔王でさえ、取るに足らない存在になりますので世界が数を制限しているのです。

実際、悪魔の中で君主ベルゼビュート級でさえ数えるほどしか居ないかと思われますが。

しかし、主のお力をもってすれば私と同等の力を持った君主ベルゼビュート級を召喚し進化させることは可能かと。

私が存在を確認したのが5000年前ですので今どうしているのか・・・召喚をご所望であればいくらか手段はございますが。」


とアルテッツァは言った。

皇帝ルシファー級は故意に作り出すか、何かしらの原因で突然変異しない限り生まれないと言うことだろうか。

しかしネイサンは今日の所はアルテッツァを従え屋敷に引き返した。

ネイサンは考えていた。

たぶん、アルテッツァは力は強大だが比較的話の通じる方の悪魔だろう。

もっと傲慢で傍若無人な性質を持った悪魔を召喚してしまう可能性もある。

アルテッツァがいる限り、死ぬほどの脅威ではないだろうが事は慎重に運ぶべきだろう。




セシリアは我が子の恐るべき才能を興奮気味に夫に話していた。


「ネイサンったらまだ2歳なのに魔法を使えるのよ!!!!?

それも召喚したのが皇帝ルシファー級の悪魔!魔導書をよく読んでいたからさすが私たちの子だとは思ったけれど。

それも皇帝ルシファー級を顕現できる魔力量を持ってるなんて・・・・・・ネイサンったら本当に天才よ!!!!

本格的に学ばせるべきじゃないかしら?!あの歳で文字も読めるし書けるのよ?」


「・・・・・そうだな・・・・。ニコラスの所へ入学させるか・・・・。

あそこなら高等科にニコラスも居る。そこの幼等科に行かせてみるのも良いだろう。」


「・・・でも、あそこは全寮制よ!?あなた、私、ネイサンと離れるのはまだ早いと思うわ。」


「・・・・学長に話を通しておけば、あの子であれば初等科に飛び級できるかもれん。

飛び級という特別手当があれば通いと言う例外も認められる・・・・ように話してみよう。

私もネイサンと離れて暮らすのは気が引けるしな。

なんて言ったってネイサンはあんなに美しく生まれてしまった。寮なんて心配でならん。

男で生まれて本当に良かったと心から思うよ。女の子であったならと考えただけで・・・・」


「・・・・そうねあなた・・・・。

私たちに天使を授けてくださったのだわ・・・・あの子は私たちが守らなくては。」


セシリアとナイジェルはネイサンが床についた頃、蝋燭の明かりの下で静かにそう決めたのであった。



♢♢♢



寝室では、月明かりが幼いネイサンの横顔を照らしている。

ゆっくりとしたまどろみの中でぞっと寒気を感じて目を開けるとアルテッツァが横に立っているのだ。


「・・・・うっわああああ!!!!!アルテッツァ!!!!まだ自室に戻ってなかったの!!!?

隣の部屋がアルテッツァの部屋だって行ったろ?」


アルテッツァは自らの主の美しさに陶酔しながら静かにベッドの横の椅子に座る。

セシリアが良くそこに座って絵本を読むのだ。


「・・・・・我が主のおそばにいてこそが私の幸福でして・・・」


「・・・はあ?・・一晩中そこに居る気か?」


「はい。悪魔は睡眠を特に必要としませんので。」


まるで何か問題が?とでも言う様にこちらに視線を向けてくるアルテッツァ。

だが、ネイサンは間髪を入れずに言い放った。


「だめ、自室に居ろ」


その言葉にアルテッツァは、さも絶望したかのように膝から崩れ落ちると、手を合わせて祈るように寝所の上にいるネイサンを見上げて言う。


「何故ですか!!!?おそばにいられないなら私干からびて死んでしまいます!!!!

主は私に死ねと申されるので!?その神々しいお姿をこの目に焼き付けたくぞんじます!!!!

どうかどうか!!!!!!!」


「やだ、寝苦しい」


「・・・・我が主よ・・・・・」


数十回の攻防の末、とうとうネイサンが折れた。と言うよりは眠くて面倒になった。


「あー・・・・・わかった、もう何でもいい・・・・寝かせてほしいから、せめてあっちのソファに座っててくれ」


ネイサンの命令にアルテッツァは渋々と行った形で部屋の向かい側のソファに移動する。

ネイサンは移動したのを確認するとふっとため息をついてまた目をつむった。

明日は自室に入ったらアルテッツァが入って来れないように結界張っとこう。

心の奥でそう決意し眠りに落ちるのだった。

(・・・・はー・・・・悪魔の主人しんど・・・・・)



悪魔の序列について知識が不十分であったため色々と調べて見たのですが、宗教によって違ったり、いろいろな説がありまして訳が分からなくなりました。

奥が深いですね悪魔・・・・天使も色々ありそうでしたが今は悪魔で十分です・・・・

精霊についても勉強中です。難しい。

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