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[01話 ] 転生したらしい

初めまして。美形主人公を書いてみることにしました。


斉藤さいとう かなめは平凡な容姿に良くも悪くもない平凡な学力で、ただ平凡に会社でサラリーマンとして働く平凡で平凡なただの男であった。

ただこの男ある種、神がかり的な才能があった。

斉藤さいとう かなめはとてつもない不幸体質であったのだ。

入社するやいなや会社が倒産したのは数え切れない。

齢36歳にしてもう10社が倒産して今は11社目の会社で働いているのである。

一年働いた会社は長くもった方だな・・・なんて考える始末。

自分もう40手前であるのにあまり安定しない生活だ。であるため、もちろん結婚などしていないし、ここ何年かは自分のムスコも刺激の無い生活をおくっている。何とも悲しい日々だ。

生活のほとんどは就活をしているのではないかと思える。

それでもきちんと会社の入社できる辺り運が良いのか悪いのか分からない男だ。

だがそれだけではない、たまたま入ったコンビニでコンビニ強盗に遭遇したこともある。

道を歩けばひったくり、スリ。

車を運転すれば当たり屋に。

筋金入りの不幸体質。

もうこの体質に36年間も付き合っていればもう修行僧の域など突破し、今や仙人である。

心が何が起きても動じない。苛つきさえもしない。

すられてもいいようにお金は全然持ち歩かないし、そもそも寂しい独身の身だ。

せいぜい会社の行き帰り、財布に五千円入っていれば大金だ。

最近じゃ千円はいってるかいないかである。

そんな彼だが、今日は珍しくスリにもひったくりにも遭わ無かった。

それはそれでなんだか気持ちが悪い。

このあと何倍にもなって返ってくるのではあるまいな?と思いながらも、考えすぎかとその考えを消す。

なんだか今日は行けそうな気がして電車で帰ろうとしていた。

普段ならば人混みなど避けるというのに。

人がいればいるほど危険因子は多くなる。今までの経験上そうあった。

あの時、朝から不幸の濃度が薄かったのは、そういうことであったのだと冷静になって考えればいくらでも予感できた。

あの時は調子に乗っていた。そう。まさに運が悪かった。

あの時気づいてさえいれば…何ていうタラレバだ。



帰宅ラッシュ、電車のホームには帰宅を急ぐ学生や会社員の姿がごった返す。

斉藤は不意に選択を間違えたかなと少し後悔した。

不幸体質な自分のことだ、この人の多さではどんな不幸が降りかかるとも限らない。

いつもならば一駅くらい歩いて帰るのだ。

この日は何故か電車で帰れる気がした。

それが間違いであったと気付く頃にはもう手遅れであったのだが。

漠然とした心配を抱きながらも、電車を待っているとき、持っていた鞄が急いで駆けてきたサラリーマンによって吹き飛ばされた。

その時今日の会議で使った資料が飛び出す。

(・・・つくづく運が悪いな・・・)

電車がもうすぐ着くというアナウンスを聞きながらも、ばらまかれた資料を急いでかき集める。

立ち上がって、さて、と思った矢先、集め損なったのかその紙を踏んだ。


そして滑った。


そして・・・・転んだ。


斉藤は心のどこかで「ああ・・・」という何か一種の予感というのか諦めというのを感じた。

体が線路側へ投げ出されるのがわかった。

横目で電車が迫るのを確認する。

どこかで女性の悲鳴も聞こえた。

そして一瞬の衝撃と痛み。



どれ位の時間が経ったのだろうか。

斎藤要さいとう かなめは真っ白い何もない空間にただ浮かんでいた。

そしてどことなく温もりのある黄色、緑、赤、黒、白の淡い光を放つ球体、(仮にオーブと呼ぶとしよう)オーブが体の周りをひらりふわりと漂っている。


(・・・なに?どういう状況だ?・・・

・・・確か、会社の帰りで、駅に・・・

俺死んだ・・・よな?・・・

これって世で言う天国とかいうところかな・・・?

でも周りに何も無いし、中間地点みたいなところがあるのかな?・・・)


長年の不幸体質で鍛えあげられた強靭な動じない心で斎藤は割と呑気に考えていた。

そういえば全裸だ。なんて少し恥ずかしいなと思ったくらいだ。

意識がぼんやりとしたものからはっきりと自分の取り巻く世界をだんだん認識できるようになると、周りを漂っていたオーブが体にふわりとくっつき、それから数回肌を行き来してから馴染み始めた。

それは、完璧に体に浸透してしまった。

そのオーブの正体がよく分からないが悪いものではない気がした。

すると、体が何やら光を放ち始める。

体の奥がじわじわと熱くなり少し呼吸が苦しくなる。

なにかの力が溢れ出すような変な気分だ。


(何だこれ・・・)


数秒後、何が変わったのか目に見えるものがまるで変わり、ただの白い空間であった世界が草原と目の前の大きな神殿へと姿を変える。

なんだか不思議な感覚であった。

その神殿に行かなくてはならないようなそんな気がして、その建物に足を踏み入れた時、体が大きな力によってふわりと浮いた。


「・・・斎藤さいとう かなめ・・・」


目の前に明らかに女神と思しき神々しさのブロンド美女が現れる。

だが、あまりの大きさから顔がドアップである。

神という存在は人に対してみんなそれくらいの大きさがあるのだろうか。

そう言えば鎌倉の大仏も大きいもんなと斎藤は思った。

名前を呼ばれたのだから何らかの審判が行われるのだろう。

斎藤は妙に納得し口を開く。


「・・・俺、死んでますよね?・・・出来れば天国に行きたいなと・・・思うんですけどどうですか?」


目の前の大きな女神に提案する斎藤の鋼の心は健在だ。


「・・・これは貴方を天界に導くものではありません・・・」


声が頭に直接響く。

正に神託が降りたかのような女神の声に少し圧倒されながらも、その女神の声に自分は天国に行けないのかとがっかりする。


「・・・あ、俺もしかして地獄の方ですか・・・冥界ですか・・・あー、参った~」


実の所あまり実感が湧いていない。

死んだのだという事実や神にあっているという事実が突拍子がなさ過ぎて夢でも見ているようなのだ。

だからこんなに呑気でいられるのかもしれないと斎藤は頭の端で考える。



「いいえ、いいえ。斎藤さいとう かなめ・・・

あなたは生前酷く不幸の神に愛されていました。

我々神は人界においてあまり干渉してはいけないものなのですが、不幸の神はあなたに何かを見出していたようです。

・・・・・・本人によると、あなたが苦労している姿を見るのがひどく楽しかったそうです。」


・・・随分とドSな神がいたもんだ。

俺の不幸体質はそれが原因かあ・・・

斎藤は少し思うところはあったが口に出すまいとポーカーフェイスを貫く。


「私はそのお詫びに参りました。

不幸の神に愛されたあなたは手違いで寿命より早く死を迎えてしまったのです。

これはこちらの偏った神の愛が原因です。

平等に“神の試練”を与えるべき不幸の神があなたに試練を与えすぎたのです。

その結果、あなたは命を落としてしまった。

我々神はあなたに罪滅ぼしとして第2の生を与える事にしました。」


「・・・ん?・・・俺死んでますよね?

それってどういう・・・?」


「・・・はい、貴方の肉体はひどく損傷を受けています。

あなたの元の肉体では生命活動が出来ない状態です。

ですが、魂はまだ天界に来てはおりません。

ので、魂はまだあなたの意識の元にある。

輪廻の途中で私が個人的に空間をねじ曲げ、擬似空間を作り出しています。

人間の魂ではそれに耐えきれないので私の神域の保護下において一時的に保護している状態です。

先ほどの貴方の霊魂に吸収されたオーブは私や神々の神力(しんりょく)の断片。

それを体、いや正しくは魂ですが、に宿すことによって輪廻の途中でも耐えられるように致しました。」


「・・・・・・あ、はい。ん・・・?」


女神の説明を聞きながらよく分からないながらも頷いておく。


「・・・詳しく説明をすることも出来ますが今はいいでしょう。

輪廻転生の流れを一時的にいじっている為、この空間に長い間とどまる事は出来ないのです。

今はあまり時間がありません。

時期が来たらまた会うこともありましょう。」


女神はそう言うと大きな手で斎藤の体を包み込む。

なにか暖かいものに包まれると、本来の斎藤要たるその形をとった自分の魂。そしてそのものの形が崩されていく。


斎藤さいとう かなめ・・・あなたは神の恩情を受け取りますか?」


大きな力の渦に巻き込まれ、魂と一つになった自分の意識が段々と遠くなる。

飲み込まれる意識の中、斎藤さいとう かなめはかろうじて「・・・は・・・い・・・」と返事をしたのだった。


「肯定を確認しました。

これより斎藤 要の霊魂を転生させます。

あなたは同じ魂と記憶を持って別の世界で生を受けます。

以前のようなことが起こらないよう我々神の加護を等しく与えます。

あなたの体には先程与えたオーブ、我々の力の断片が宿っています。

これはあちらの世界でもきっと役に立つでしょう。

それでは“不幸の神”をお許しください・・・

どうかあなたの第2の生にたくさんの幸運があらんことを・・・」




♢ ♢ ♢




「・・・・・・ン・・・ネ・・・ネイサ・・・ネイサン・・・」


男は何かに語りかけられるままに目を覚ました。

そこにはブロンドの美女がこちらをのぞき込んでいた。

艶やかな唇に、あくまで清らかそうな白い肌。

通った鼻筋。

どこかで見た海外のモデルのようでいて、王族のように気品がある。

そしてどこからとも無くドスドスと乱暴な足音が聞こえてきた。


「ブラデネル=ブルース公!!いけません!!

ライジェル様っ!!!」


配下らしき者に静止されながらも、1人の偉丈夫はそれを振り切ってバンッという大きな音を立ててドアを開ける。

部屋の中には健やかにベビーベットに横たわる男の愛らしい息子と親愛なる妻がいる。


「アナタ来たのね・・・ああ、アナタ見て。

私達の天使よ・・・。

なんて美しい子なの・・・」


「ああ、そうだね、美しいブルーサファイアの瞳と綺麗なブロンドがまるで本物のエンジェルだ・・・」


赤ん坊をのぞき込む美女とその横で彼女の肩を抱いている男もまた美形であった。

色素の薄いブラウンの髪に彫りの深い顔立ち。

男らしいキリッとした偉丈夫だが、今でもさぞモテるのであろうと思われる石膏像の様な完璧な美形である。


「・・・ネイサン・・・パパだぞ・・・」


「・・・ママよ・・・ネイサン・・・」


(・・・ネイサン?・・・パパ・・・ママ!?・・・)


斎藤要さいとう かなめ改め、ネイサン・ブラデネル=ブルースはそこで一瞬にして理解した。

そしてはっきりと思い出したのだ。

あの時の女神とのやり取りを。

どうやら俺はネイサン・ブラデネル=ブルースという人物に転生したらしい。


それからというものネイサンはブロンド美女、(自分の母親だが)に抱かれたり乳母に世話をされているうち、今の現状を徐々に理解していった。

母の名はセシリア・ブラデネル=ブルースと言うらしい。

父はナイジェル・ブラデネル=ブルース。

使用人と思われる者達が彼らの名前を呼ぶうちに理解した。

そして異世界の言葉であるはずなのに、脳がそういう物として処理するらしく何故か言葉がわかる。

ここは前世とは明らかに違う異世界であり、魔法という違った文化が発展している事。

文明レベルは中世ヨーロッパあたりだろうが、魔法によってそれなりに高レベルな生活水準であること。

そして、ネイサンが生まれたこの家はそれなりに裕福であるということもわかった。

父ナイジェルのことを誰かが「ブラデネル=ブルース公」と読んでいるのを聞いたことがある。

使用人もいる。

公爵という事であるなら、なかなか高貴な身分であろう。

元の世界の知識で言うなら貴族階級では最高位にあたる。

そう、頭では色々理解しているのだ。

情報は限られてはいるが、周りを観察すれば情報は手に入る。

ただ一つ問題があるとすれば、自分が赤ん坊であることだ。

意思を伝える手段が口から出る「あー」やら「うー」くらいか、短絡的な怒りや悲しみでしかない激情を泣くことでしか表せないこと。

徐々に表現できる感情は増えるだろうが今はこれが限界だ。

ああ、せめてハイハイができるようになれば世界をもっと見れるだろうに。

毎日が食っちゃ寝食っちゃ寝生活で、最初はその怠惰な一日を満喫していたが、流石に毎日だと退屈だ。

赤ん坊の体に40歳手前になる男の精神が入っているのだ。

退屈に思っても仕方あるまい。

精神自体はおっさんであるため、あまり泣かないネイサンの姿に乳母や母のセシリアは心配していたようだが体は至って健康だ。

赤ん坊があまり泣かないのは感情が欠如しているように感じるようで、セシリアは名のある医師に相談したりしているようだ。

なんだか申し訳ない。

泣いた方がいいのかと少し考えたが、悲しくもないのに泣けるほど演技派ではない。

どうしようかとネイサンは考えたが泣くことができないならせめて笑っておくかと投げやりに考える。

それから数カ月が経過した頃、今まで喃語を繰り返すばかりであった口がしだいに回るようになってきた。

試しにセシリアを呼んでみる。


「あー、うー!ぅーまっ!まーま!!」


(あ、いけるかも。)


「まーっ!まんま!まー!!」


セシリアに訴えるべくベビーベッドをタンタンと叩いてセシリアの気を引いてみる。

どうにかして屋敷の中や、せめてこの部屋の中でも動き回れるようになりたい。

ハイハイの練習にまでこぎつけたいのだ。


「あー!う!まー!まっま!まー!!」


セシリアはその様子にベッドへ飛んでくると、ネイサンを興奮気味に抱き上げた。


「ネイサンっ!!!今なんて!?ママって言った!?もう1回呼んで!ほら!ママと呼んで!」


「あーう!まんまっ!」


今度は思いのほかまともな発音ができた。

その満足感からネイサンはドヤ顔を、と思ったがそんな高等技術はない。ただ微笑むだけになる。

だが、それが良かったらしい。


「・・・ああ、ネイサン。微笑むだけで世界が華やぐ。

本当に美しい私の天使。我が子ながらその美しさにため息すら出るわ・・・

声までもが澄んでいて、小鳥の囀りの様。」


セシリアは興奮冷めやらぬ様子でネイサンに頬ずりを繰り返す。


「あぁーう!あうっ!」

(何このうっとうしさ!ベイビーしんどっ!)


小さい手でセシリアの頬を僅かに押し返しながら、心の中で叫ぶのである。

ネイサンはまだこの時点では気づいていない。

両親が美形であることは間違いなく認識しているが、まだ赤ん坊である自分の容姿を確認していないからだ。

ネイサンは知らない。国宝級の美形に生まれ落ちたことを。

運良くこの国の王に使える四大貴族の1柱ブラデネル=ブルース家の次男に生まれ落ちたことを。

この世界でネイサンは、前世での不運を倍に返したような幸運男に生まれ変わっていた。

これがあの女神の加護によるものなのかただの偶然のものなのか未だ知る由もない。


何分初めてなもんで、どれ位の文字数で短くてどれ位で長いのかわからないですがキリが良いところまで書いてみました。

よし井です。宜しくお願いします。

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