夢にまで見たあの世界へ ミーチェ・クリスタ編
彼女はどこでなにをして、どういう風に育ったのか。
気になったからはぜひともチェックです。
私は、魔法使いへの道を志した。
小さい頃、魔女狩りと称し、私の母は殺された。
そのあと、父と共に王都へ行くこととなった。
「小さき頃のミーチェの記憶」
王都は、人が多くて苦手だ。
そんな話を、馬車に乗りながら父と話していた。
父は昔、王都で名の知れた冒険者だった。
母と結婚をして、田舎で暮らすこととなり。
私を、授かったのだ。
母は、魔法が使えなかった。
父は、『黒髪』だったので召喚術が使えた。
「ミーチェ、王都に着いたら何がしたい?」
「私は、魔法を勉強したい…」
「魔法か…」
父が黙り込むのも、無理もない
先日、教会が筆頭の元、村で魔女狩りがあったのだ。
母と、近所に住まう若い娘さんが焼かれたと言う。
教会は、魔法を嫌う。
昔、王都にも教会があったのだと言う
だが、王国の魔術騎士団に対して、反対行為や、差別などが酷すぎるため、辺境送りとなった、と聞く。
その、辺境付近にあったのが私たちの村だった。
村人たちは、教会を嫌った。
あいつらは、神の名の下食料を分けて欲しいなど、押しかけてくる連中だった。
「ねぇ、父さん。」
「なんだい?ミーチェ。」
「私、魔法使いになれるかな?」
「そこは、ミーチェが努力すればなんとかなるだろう!」
父は前向きだった。
王都についてから、家を探した。
宿に泊まりながら、父は住み込みで働けるところを探していた。
ある日、父が嬉しそうに帰ってきた。
「大通りの端にある、武器屋の親方が弟子入りするなら、住み込みでも良いと言ってくれたぞ!」
「父さん、剣とか作るってこと?」
「あぁ。そうだ、だけど最初は作れないと思うぞ」
父は呑気に笑っていた。
翌日、私を連れて父は大通りの端のほうへ向かった。
そこには、武器屋があった。
「おぉ、来たか!待っていたぞレイン・クリスタ君と、娘のミーチェちゃんだね」
やさしそうな人だ。
「親方、今日からお世話になります」
「いいってことよ、人手が足りてないんだ、弟子入りなら長い目で見れるからな」
この人が親方さんなのか...。
いい人そうなので、父も信用している感じだ。
「そういえば、ミーチェちゃんは魔法学校に通いたいんだって?」
「はい、ウチの娘は魔法を学びたいらしくて」
壁に背中をつけ、左手で右ひじを押さえながら、悩む親方。
「わしが、学費をもってやらんでもないぞ?」
「い、いえ。それは流石に...」
「いや、遠慮はしなくても大丈夫だ、ウチはかなり稼いでいるからな」
「そ、それでも...」
無理やり押し切ろうとする親方と、それは遠慮する父。
そのやり取りは、しばらく続いたのだ。
数日くらい、経ってから父は、親方が学費を肩代わりする代わりにその分、この工房で働く、という条件で交渉していたらしい。
そのことを聞いた、私は大喜びだった。
それから、学校に通うになった。
時の流れとは、早いものだと感じたのはその頃からだった。
学校は楽しくて、毎日残って勉強をしていた。
錬金術や、召還術などは性分に合わないため、勉強しなかった。
私は、図書室でとある本を見つけた。
『創作魔法の作り方』と言う本だった。
魔法は極めて高度なものだ、呪文をひとつ間違えただけで、威力が落ちたり、発動しなかったりもする。
その中でも、最高水準に位置するのが『創作魔法』別名、『固有魔法』だ。
私はいつか、固有魔法が使えるようになりたいと思い、勉強にあけくれていた。
魔法学校は4年制だった、そのあとに魔法学院があり、そこは3年制だった。
魔法学校での日々は、あっという間だった。
特に仲のいい、友達もできず、いつも図書室に篭って勉強していたからだ。
魔法学院に、上がったとき図書室が図書館になっていた。
とても大きな建物だ、これなら固有魔法について、さらに勉強できるのではないかと期待と胸が弾んだものだ。
朝起きて、学院へ行って講義を聞いて、図書館へ篭る毎日。
そんな中でも、私は他人に目をやることなどなかった。
皆、同じにしか見えなかったのだ。
同じものを学び、同じものを習得し...。
私は、特別なものが欲しかった。
魔法学院を卒業してから、私はしばらく、魔法学院での講師の仕事に就いた。
生徒たちに、魔法の講義をする以外は図書館に篭るためだ。
あれは、とても有意義な3年間だった。
図書館の、書庫を漁り終えた頃には父の借金は返済が終わっていた。
もともと、私の為に王都に来たのだ。
せめて老後くらいは、見守ってやらねば。
その夜、私は父に相談をした。
「父さん、私はもう魔法を習得したし、そろそろ田舎でのんびり過ごそう?」
「確かに、それもいいけどな。ミーチェは、もう、王都でやりたいことはないのかい?」
「私?それはもうないよ。図書館で得た、知識はすごい。けど、ここでは何の役にも立たない」
私の言うことがよほど難しいのか、父は下を向いて悩んでいるようだ。
「本当に...もう、いいのかい?」
「えぇ。もう大丈夫だよ、お父さん。」
「そうか...。時間というのは、あっという間に経ってしまうな」
「そうだね...。」
ここに来て、勉強をした日々。
気づけば、もう10年もの時が経っていた。
「父さん、もうのんびりすごそうよ」
「それもいいな」
「ここからずっと、西のほうに行ってさ二人でのんびりと」
「うん、そうだな...」
父は、涙をこらえていた。
私が、大きくなるにつれ、父は老いていく。
そんな父を、放っておくことができない。
「本当に、大きくなったものだ...母さんを、思い出すよ...」
「うん。ここまで育ててくれてありがとね、父さん」
「娘の夢の為に、王都に来て働いて。楽しくなかったって、言うのはうそになるな。とても充実した日々だったよ...母さんが魔女狩りにあって、一番つらい思いをしていたのは私だったのかもしれない...」
「父さん...つらかったね...」
私はベットに腰掛ける父さんを抱きしめた。
私の腕の中で、泣く父さんは今まで、溜め込んでいたものをすべで話ていた。
翌朝。
「今までご苦労だったな」
「親方、お世話になりました」
「少ないが、持っていくといい」
「ありがとうございます」
店の前で馬車に荷物を載せていると、親方が見送りに来てくれていた。
「どこまで行くか、わからないが、何かあったらすぐ戻ってこいよ」
「わかりました。本当にお世話になりました」
そう言って、馬車に乗り込んだ父。
王都を後にして、西を目指して旅にでた。
道中、魔物や山賊に襲われたが、昔のようにか弱い私じゃない。
いざとなったら、父を守れるようにとこの10年勉強していたのだ。
もう二度と...家族を奪わせはしない。
半月くらいの父との旅、ダスク地方に入り山々の間を抜けた。
小さな村についてから、私たちの新しい生活は始まった。
私は、村で治療師を。父は、冒険者ギルドに勤めた。
それから3年ほど、時が経ってから。
父が、森の中で大きな木が生えている、開けた土地を見つけたらしい。
近くに川があり、いいところだと嬉しそうに父は語った。
「なら、その木を家にして、そこに住む?」
私の申し出に、父は二つの返事をした。
ひとつは、私が一緒にくること。
ふたつは、自然に触れながら楽しく生きて欲しいと。
父は、自分事より私の事を気にしてくれる。
もう、そんな歳でもないのに。
魔法で、木の内装部分は切り抜けた。
そこから、何往復したことか。
馬車に木材などを、積み込んで川岸を往復した。
家ができたとき、父はもう60歳だった。
朝早くに起きて、山菜や薬草をよく集めてきてくれてたっけ。
しばらくしてから、父の容態が悪くなった。
私が、薬を作って治そうとしたけど...ダメだった...。
父が亡くなってから、何年経っただろうか。
あれからもう、130年くらい経ったかな...。
父はいい人だった、できることならもう少し長生きして欲しかった。
そんなことを思いながらも、夕方から父の墓参りをしていた。
気がつけは、夜になっていた。
そろそろ、もどらなければな...
家が見えてきたとき、人影が見えた。
薄暗い中、その背中に声をかけた。
「そこで止まれ!!!」
――ミーチェ・クリスタ編―― 完。
夜眠れなくて、ふと思いついて書きました。
本編のほうを読んでいないかたには、最後の最後以外は理解できると思います。
こちらを読んでから、本編も読んでくださるとありがたいです。