閑話 ルビィとネオンの俺の日常
ダイジェストです。
省こうと思ったのですが、要望があったので、差し替えさせてもらいました。
俺の名前は真上悠
ある日の深夜目が覚めて買い物帰りに変な女に絡まれ、なんだかんだしてたら身体から力が抜けてアスファルトと密着ウェーイ!
これまた、そこに現れた変な男に足を折られてマジかよ!?気絶!?
目が覚めると目の前に広がる大草原に骨折したまま放置プレイ。
何とか移動したら可愛いウサギさん発見!足8本!ここ異世界じゃね?
ウサギに指を食い千切られ、草原に放火して、目覚めたらグラマラスな勇者と無口な魔王様の娘が俺を迎えていたのだった…どうなる俺!
早く元の世界に帰らねば!
「と、あらすじ風に、頭で簡単に整理してみたが、とんでもない事態だよな…これ。」
「……?」
俺を見つめる少女。魔王の娘ネオンディアナだ。
「ああ、ごめん独り言だ…って言っても通じないんだよな?」
「……?」
首を傾げるネオン。こういう仕草って可愛いな。
見た目的にまだ中高生くらいか?
いや異世界だ、こう見えて400年くらい生きてる可能性がある。
………
今日はルビィに俺が目覚めた辺りにあると思われる荷物を、探しに行って貰うことにした、俺はその間家で留守番だ。
ベッドで寝たきりなのも暇なのでネオンに手伝ってもらいながらリビングへ移動。
俺の寝ている部屋は2階の一室で、階段を下りるのに相当苦労した。
松葉杖代わりにルビィのロングソードをうまく使い屋内を移動。
後で帰ってきたルビィに相当怒られたけど…
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「おおっ!無事だったか!」
帰ってきたルビィが持っていたのは、俺が無くしたと思っていた私物の数々だ。
俺が目覚めたであろう場所から、いとも簡単にルビィはそれらを見つけて帰ってきた。
ちなみにバッグは燃えた枯草の近くにあったみたいだ。
色々と小物の入ったバッグとコンビニ袋
袋の中には、ペットボトルのお茶、缶詰が4個と、袋麺(5個入り)、ゴミ袋…
あ…タバコが無い…。
まぁ、仕方ないか、コレを機に禁煙だな。
ルビィとネオンは興味深々に俺の私物を見ている。
……
『なあ!ユウ!これ!コレはなんだ!?』
興奮状態で俺に詰め寄るルビィ、意識通信しているので額に触れている指に力が入っているのがわかる。
ちょっ!落ち着け!痛たたたた!額に指が刺さる!
えっと、コレは「カンヅメ」俺の世界の保存食だ。
1個開けて食べようぜ、ルビィ俺が抑えてるから、その輪っかを…そう!こっちに押し上げてみてくれ。
意識通信によって片手が塞がってるので、俺の補助を受けながら缶詰めのプルタブに指を掛けるルビィ。
パキャッ
っと音を立て開封。
直ぐさまネオンが匂いを嗅いでいる。
お姫様、オマエは犬か…
『お!おぉ!開いた!?のか?』
嬉しそうに目をキラキラさせながらこっちを満面の笑みで見るルビィ。
こういう子供っぽいのもギャップがあって可愛いな。
まだ焦るなよー、そのまま輪っかを持ちながら蓋を剥がすんだ、ゆっくりな、勢い良くやると汁が跳ぶから気を付けろ!
真剣な顔でゆっくり蓋を剥がすルビィ。
あれ?ネオンどこ行った?さっきまでクンクンと匂い嗅いでたのに…
『取れた!取れたぞ!ふふっ。』
鬼の首を獲ったかの如くプルタブを高々と上げる…とても嬉しそうな表情だ。
さて、俺から早速1個…頂きますかな。
あんむ…んむ…んむ…ぱぁーっ!
うまい!やっぱり缶詰めはヤキトリでしょ!
2人に安全を証明するためにもまずは、俺がヤキトリを1個食べる。
この、なんとも言えない柔らかさと、添加物たっぷりのタレが堪んねぇよな。
そんな美味しそうに食べてる俺を、見ているルビィ…
分かりやすく口を半開きにして、指を咥えている。
漫画かオマエは。
『私も!私も食べて良いか?
私が食べても大丈夫か!?呪われないか!?』
大丈夫だ、旨いぞ。
呪いってなんだよ?ヤキトリ食って呪われるんなら日本人皆呪われてるわ。
恐る恐るヤキトリを食べるルビィ
最初は目を伏せながら強張った顔でヤキトリを口に入れ、モグモグと咀嚼しているうちに爛々と眼を輝かせはじめる。
『ふぉぉ!こんなの初めてだ!凄い!旨いぞユウ!』
ルビィさんや、色々と想像しちゃうので言葉選びは気を付けて下さい。
てかネオンにも分けてやれよ!?
一人で全部食べるなよ、勿体ない、貴重な保存食なんだからな。
そんなやり取りをしていると、背中をトントンと突かれた。
振り返りネオンを見ると腕を組みながら「ふふん。」と鼻をならしてドヤ顔だ。
その眼下には蓋を全て開けていた缶詰が三個……
うおーいっっ!!!!
なんで全部開けてるの!!!
「???」
俺が驚いてる事に、首を傾げるネオン。
全部開けちまったんなら食わなきゃだな…
仕方ないので夕飯は缶詰パーティーになった。
ルビィのヤキトリを貰おうと手を伸ばすも、缶詰を庇うように後ろを向かれて断念。
ネオンのシーチキンを摘まもうと手を伸ばすもパシッと叩かれた。
俺缶詰食ってないよ?
パンを齧りながら缶詰に夢中な2人を眺める。
「まぁ…喜んでもらえてなによりか…」
……
夕飯を食べ終わった後、俺はある作業をしていた。
「ふぅ…。出来た!」
袋に入ってたメモ帳とボールペンで作った、会心の一枚。
「あいうえお」表である。
おおぉっー!っと拍手してくれるルビィとネオン。
ネオンとルビィに表の文字を指さしながら、発音する。
「ゆ・う」
「…」
「ユ・ウ」
ネオンは言葉を喋れないので真剣な顔で口をパクパクさせながら頷く、ルビィはどこか違和感があるが上手いこと発音してくれる。
「ね・お・ん」
「…」
「メ・オ・ン」
「ね」
「…」
「メ」
なかなか難しい。
同じようにルビィにも亜人語と魔人語の表を作って貰った。魔人語は日本語より文字が多い。亜人語は文字が少ない。ネオンは魔人語しか分からないみたいなので、一緒に亜人語を覚える事に、今後ネオンとは筆談を試みようと思う。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
異世界生活も2週間が過ぎただろうか、ネオンがあっさり日本語と亜人語を書ける様になる。正直早すぎる。
頭の回転が違うのか、今では俺に亜人語と魔人語を教えてくれている。
こちとら骨折治療の為、ほぼ寝たきり生活環境で勉強してたのに…。
今日はルビィが物資の受け取りだかで、日の出前から出掛けている。山の麓まで行くと行っていたが、そんなに遠いのか?俺なんて四つん這いでそこまで行こうと思っていたのに…
(ルビィはいつもどれくらいでかえってくるんだ?)
俺の喋ってる事も理解してるが、日本語のカタカナや漢字にも興味があるみたいで、未だに筆談を続けている。
(££¢€なら日が沈む前に$¢¥¤)
魔人語で返ってくると解読に時間が掛かる。
「えっと…ふだん?なら日が沈む前に…かえってくる?か?」
ネオンは亜人語と魔人語をランダムに使い、俺に対して返してくれる、コレが想像以上に混乱するが、なかなか為になる。おかげさまで文字くらいは大分読めるようになった。
(昼飯どうする?)
(なんてよむの?)
と「昼飯」の漢字を指さすネオン
(ひるめし。ちゅうしょく。おひるごはんのことだ。)
(なるほど、らーめんがたべたい)
(このまえぜんぶたべただろ)
笑いながらネオンに筆談した紙を渡す。
先日ルビィが狩りに出ている時ネオンと2人で、こっそりとインスタントラーメンを食べていた。具材も適当に野菜やら獣肉やらを炒めて上に乗せ、異世界風タンメンをネオンと堪能していたんだが、タイミング悪くルビィが帰ってきた。
目を見開き、あんぐり口を開けたまま、俺とネオンの食べているラーメンを指差しワナワナと震えてる姿は正直可哀想に見えた。
ちなみに、ネオンはその光景を横目で見ながらラーメンを啜っていた。
その後ルビィが半泣きになりながら俺とネオンに怒って、暴れて大変だった。
結局その夜ラーメンを食べさせると約束して、俺は命を取り留めた訳だが、結果として、夜のラーメンパーティーによりストックが無くなってしまった。
それからもネオンは何かとラーメン食べたい!を口にする。相当お気に入りだったようだ。
ラーメンって作れるのかな?小麦粉と水と卵と、あとなんだ?かん水だっけか?うろ覚えの知識で作ると悲惨な事になるからな…ちょっと試作を幾つか頑張ってみよう。
(ちーずがまだのこってるから、このまえつくったオニオングラタンスープにしようか。)
(それでいい ゆうのごはんおいしいから)
香辛料の類はかなり揃っているので、後は記憶を頼りに元の世界の味付けを頑張って再現する。
と言っても、ネオンに配合を伝える簡単なことしか出来ないが、俺の味付けは2人にとっては美味しいらしく、かなり好評だ。
俺の怪我も大分良くなり、骨折した足も歩けはしないが立てる様にはなった。
ルビィ曰く、骨はくっつき始めてるから走ったりしなければ大丈夫らしい。
ま、未だに内緒でルビィのロングソードを杖代わりに使っているのだが…
……
「おそくま(な)ってすまま(な)い!いまかえったぞ!」
イマイチ発音が怪しいルビィ。
大量の荷物を台車に載せ帰ってきた。
「お帰りルビィ。お疲れさま」
ルビィは日本語会話が殆ど出来るようになっていた。
発音がアレだが……どうやら読み書きが苦手のようで未だに悪戦苦闘している。
に、しても頭の回転が違うのか。覚え早すぎる。
「ゆうに、たも(の)まれたもも(の)を
じかいもってきてもらうことみ(に)ま(な)ったぞ」
まぁ、ヒアリングは結構大変だが、最近は慣れてきた。
「そうか!次回が楽しみだな。
なぁ、ルビィ日本語じゃなくて亜人語で話してくれよ、ネオンが喋れないから、発音の覚えが大変なんだ。」
「なるぼど、そうだな分かった。聞き取りは大事だものな。
さて、ネオン!荷物の搬入に付き合ってくれ。
ユウはメモ帳を綺麗にして終わり次第、昨夜捌いた肉を下ごしらえしておいてくれ。」
スッと立ち上がりルビィの手伝いに向かうネオン。
俺はメモ帳に書かれた文字を綺麗に消す。
最初はボールペンを使っていたのだが、ルビィが慌てて俺を止めた。どうやらこの世界では紙が凄い高価なモノらしく、恐怖の勇者ルビィでも手に入れるのは、なかなか難しいらしい。
ネオンとの筆談には細く削った炭を使い、消しゴム代わりにパンを使う。紙が破れてどうしようもなくならない限り再利用する、限りある資源てやつだ。
……
家の炊事全般はネオンに任せているみたいだ、たまにルビィが料理することもあるらしいが、言わずもがなだ…
てか、最初の消し炭みたいな食べ物も、ルビィが手を加えなければ美味しく食べられたはずだ、まぁ良い思い出として水に流そう。
ネオンの作る煮込み料理は絶品だ。
野菜でも肉でもラーメンでも何でも合う素晴らしい味付けだ。
俺の料理の味付けも好評だ。
煮込みにしろ、焼きにしろ、ハーブや塩コショウの加減、柑橘系の果物を使って臭みを取り除く等、こっちの世界では画期的みたいで2人からのお墨付きだ。
ルビィの焼き料理は残念だ。
野菜でも肉でもパンでも何でも生焼けだったり焦げたりする。
素晴らしい料理オンチだ。
なので最近ではネオンと俺が味付けと仕上げ担当、ルビィは材料の調達と仕込み担当、ってことで纏まっている。
そんなこんなで、いつの間にかこの世界にも慣れ始めてきた俺は、2人との距離を縮めていった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
…ある朝。
ルビィが顔を真っ赤にしながら階段から降りてきた、額に汗を浮かべ息も荒い。
どこかボーッとしていて眼の焦点も合っていない。
ゲホゲホッと咳き込み、おでこに手を当てながら深いため息を吐いている。
風邪か?
「ルビィ?風邪か?昨日あんな事があったんだから、今日は狩りなんか行かないで、家で寝てろよ。」
まだちょっと発音に違和感があるが、練習中の魔人語でルビィに話しかける、横に居たネオンもコクコクと頷く。
「風邪??」
「いや、風邪ひいたんじゃないのか?そういう症状で、身体が怠かったり、寒気がしたり、熱あったり、ないか?そういうの?」
ポカンとしながら俺の事を見ているルビィ。
なんだろう弱っているルビィがちょっと色っぽいというか、なんというか。
「そう…か。コレが風邪なのか。初めての体験た。」
超人ルビィは風邪をひいたことがないらしい。
それじゃぁ、なんで風邪ひいてんだ?
と疑問があるが、それに思い当たる事が昨夜あった。
……
昨日はルビィが大事に飲んでいる酒、新樽の開封があった。
程良く熟成されたブドウ(?)酒で、ルビィは新しい樽を開けるのが一番好きだという。
半年くらいに一度の新樽開封とあって、俺も少しワクワクしながらネオンと2人でオツマミを適当に作っていた。
「やはり新樽は、疲れた身体に染み込む瞬間が一番旨いのだ!少し身体を動かしてくるとしよう!」
とか言って外に出て行ってしまった。
もうじき日が暮れるのになぁ…。
「はぁっ!たぁっ!でやぁっ!」
外からルビィの掛け声が聞こえると、爆音と共に空に光が飛んで行くんだが、まぁ気にしないでおこう。
そんなこんなでルビィが疲れて戻って来るまでネオンと料理を進めていると、珍しく外から聴き慣れない音がする。
ポツ…ポツ…
雨?か?
一応この封印の地にも雨は降るが頻度が低い、そしてすぐに止んでしまうらしい、しかしその少ない雨量でこの大草原が保たれているのだから驚きだ、環境もあるが元の世界の植物とは造りそのものが違うのだろう。
ザーっと外から雨の音が響く…
シャワーの様に降り注ぐ雨、こんな雨の中、外にいたら大変な事になるが、ルビィは平気だ。
雨が降り始めると、自身に結界を張って、全く濡れないのだ。
結界万能すぎるだろ。
そうこう考えていると、玄関の扉が開きルビィが帰って来た…
何故かびしょ濡れで…。
「うぉい!!なんだそりゃ!?」
「!!!!!????」
俺とネオンが驚きながらルビィを見る。
そりゃそうだ、ルビィは結界を張って濡れないハズなのに、玄関に立つルビィはびしょ濡れなのだ、肩を小刻みに震わせ、頭の上からバケツの水を被ったかの如く髪の毛や衣服は身体のラインにピッタリ貼り付いている。紫がかった唇をアワワワと震わせながら口を開くルビィ。
何があった!?
「エエエエナを、つつつ使いすぎて、エナ切れれれ…結界がははは張れなくて、さささ寒い。」
「……」
あ、ネオンが珍しく呆れてる…。
確かに呆れてしまう状況だが、このままじゃ風邪ひくんじゃないか?
「まぁ、状況は分かったから早く着替えてこいよ、見てるこっちが寒いわ。」
はうぅぅ。
っと唸りながら階段を駆け上がるルビィをネオンと見送る…
「ネオンも大変だな。」
「……」
力強く頷くネオン。
……
とまぁこんなことがあった訳で、今ルビィが風邪をひいてるのは自業自得というか、当たり前というか。
「あの後、調子に乗って酒飲むから悪化したんだろ?」
「いや、酒はこの件とは別だ。」
キリッと言い切るルビィ。
ここまで来るとアルコール依存症だな。
えっと、食料は今日の分は何とかなるから、狩りは別に行かなくても大丈夫か…
それよりルビィに早く良くなってもらわなきゃだな。
病人食って何が良いんだ?
パッと思いつくのは「おかゆ」なんだが、米が無いからなぁ…。
離乳食みたいなパンをミルクに浸してグチャグチャにしたやつでも食わせてみるか。
「んで、酒はこの際置いておいて、今の状況はどんな感じだ?」
「ユウとネオンが分身している以外、なんの問題はない。」
「してねぇよ。問題あるわ、いいよもう、温かくして寝てろ。」
ネオンがルビィのおでこに手を当ててみると、驚いた様に目を丸くする、結構熱があるのだろう、顔が真っ赤なルビィはネオンの手が冷たくて気持ち良いのか、ちょっと幸せそうな顔をしている。
「ネオン、ルビィをベッドに寝かせて、水で冷やしたタオルを絞ってから、おでこに乗せてくれ、それと朝の水浴びはさせないで、身体拭いてやってくれ。その間に俺は適当に飯作ってるから。」
頭の上で大きく手で丸を作るネオン。
分かりやすいOK合図だ、どこで覚えた。
ルビィを連れて二階に上がるネオン、ルビィはフラフラとおぼつかない足取りでネオンに付いていく。
ルビィがあんなに苦しそうなのは初めて見たな…。
やっぱり勇者だの三榮傑だの言われても、超人じゃないし風邪だってひくし、怪我もする普通の女の子なんだな。
当たり前か…
さて、さっと料理しちゃいますかね。
俺の足も大分良くなってきた、まだ引きずる感じだが歩ける様になったので、今までネオンに任せてきた立ち仕事もお手の物だ。
暖めたミルクに細かく千切ったパンを放り込む、よくかき混ぜ、トロみが付いてきたら塩コショウで下味を付け、細かく刻んだホウレンソウみたいな葉っぱを一緒に煮込む…
昨夜食べようと思って作った、お摘まみの余りの乾パンを手で砕きながら振りかけ、その上にチーズを乗せる。オーブンに入れてチーズに焦げ目が付いたら出来上がりだ、即席パンリゾット!
パンリゾットを溢さないように、慎重に階段を上がりルビィの部屋の前に立って考える。
さてさて、ここで部屋の扉を開けるとネオンがルビィの身体を拭いてる現場に鉢合わせて俺の命が危ないんだよな。
分かってるぜー、フラグフラグ。
扉をノックしても結界の効果で中には聞こえないので、指2本分くらい開けてから声を掛ける。
「おーい、飯出来たぞー。タイミング大丈夫か?身体とか拭いてないかー?」
「大丈夫だ、入って良いぞ。」
ふむ。フラグ回収無しか…
パンリゾットを持ちながら部屋に入る。
部屋に入ると、女の子の香りというか、ルビィの匂いというか甘く脳天を突き抜ける心地よい空気が俺の鼻腔を刺激する。
おっふ、たまんねぇな。
女の子ってなんでこんな良い匂いしてるんだろ?バレない様にいっぱい嗅いでおこう。
すーはーすーはー。
「…。」
「ありがとうユウ。良い匂いだな。」
「そうだろ?だからもう少し吸わせてくれ、すーはー」
「…?」
「何を言ってるんだ?」
ハッ!しまった!つい我を忘れて口に出してしまった!
これはマズイ流れか?
恐る恐る2人の顔を確認するが2人とも会話が噛み合ってないことにしか気付いていないようだ。
とりあえずルビィが寝ているベッドに腰掛ける、ルビィはゆっくりと起き上がり、俺の作ったパンリゾットを眺めている。
「ま…あ…食ってくれよ、病人食なんて碌に作った事ないから保障はしないけどな…熱いから、よく冷やして食えよ。」
「では、いただきます。」
両手を合わせて軽く一礼。
その作法は俺のマネなのか、何故か最近2人とも同じようにして、一礼する。
ふーっふーっと
スプーンに掬った1口を赤い顔で冷やしてるルビィ…
「一応ミルクとか、消化良さそうにな葉っぱとか入れて煮込んだから、噛まなくてもいけるぞ?」
ふーっふーっ
「コショウが辛いなら作り直すけど、って」
ふーっふーっ
「早く食えよ!猫舌か!」
「あ!いや、よく冷やして食えと言われたのでな。
あぁ…頭が少しクラクラするぞ。」
もう…どうした?
風邪をひくと馬鹿になるのか?思考が完全に単純というか幼稚というか。
「ほら貸してみろ」
ルビィのスプーンを取り上げパンリゾットを1口掬い、ふーっふーっと冷やしてルビィの口に持っていく。
「あーん。」
「なっ!」
「!!!」
「なんだよ2人ともその反応は、ほら、あーん。」
ネオンとルビィが顔を真っ赤にし口をポカンと開けたまま、俺を見てる。
ルビィが赤いのは熱のせいだけど、ネオンはなんで赤いんだ?
「ほら早く食えよ。今日は特別だからな!はい、口開けて、あーん。」
「とっ!特別っ!!うぅ…いや…心の準備が!その…こういうのは…だな。……お互いの……んむ」
「……!!!!」
なんか面倒くさいから口に突っ込んだ。
ネオンは眼を丸くしながらハッと開いた口を手で押さえながら、嬉しそうに俺とルビィを交互に見る。
「うまいか?塩っぱくないか?」
「お、おいしい…でござる。」
「はぁ?」
ついに頭に菌が廻り始めたか?ござるってなんだよ。
てかネオンも何だ?その反応。
「ほら、もう1口、あーん。」
「あのっ!そのっ!だな!私もユウの事はまだ知らないこととか、なんだ!アレだっ!嫌いでは無いのだ!いや、違う!が、その、いきなりというか、経験もないし、ネオンも見てる…あ、違うんだ!えっと…んむ」
話が長くなりそうなので、またパンリゾットを1口突っ込んでみる。
「……!!!!」
おおーっと口を開けネオンが、拳を握りながら俺とルビィを煽るように見てる。
「いや、お互いの事はこれから知っていこう!ユウ、その…あの…末永く宜しく頼む!」
「は???末永くも何もコレしか作ってないんだ、無くなったら終わりだぞ?何言ってんだ?」
話が噛み合わない、何か嫌な予感がするが、もしかして俺この世界の地雷踏んだか?
「こんな、剣しか取り柄の無い、顔に傷もある。しかし、それでもユウは私のことを普通と言ってくれた、そう、覚えている。ふふふ。初めてだったからな。覚えているとも。」
なんかルビィがモジモジしながら、ブツブツ言出したぞ、マズイ、早く状況把握しなければ!
「なぁ、ちょっと待ってくれ!おい!ネオン!どういうことだ?」
「……?」
サラサラっと紙に何かを書いているネオン。
「……」
はい。っとネオンが俺に筆談した紙を渡す。
(異性から食べ物を食べさせて貰うのは、結婚の誓いの儀式、ユウ今ルビィに求婚して。ルビィそれを受けた。2人結婚、おめでとう。)
「って!うぉぉぉっっい!」
まてまてまてまて、おかしいおかしい!
地雷レベルじゃねえぞ、コレ。
結婚!?アホか!?
ルビィも受けてるんじゃねぇよ!
あ、でも、結婚てことは、ルビィは俺のモノ?あの身体が?マジか!?いいのか!
いやいやいやいや…落ち着け俺!
なんで看病してただけで結婚の流れになるのか分からん!むしろ誤解状況で結婚とか詐欺じゃねぇかよ。
さぁ、どうする俺!このまま結婚か!?俺の対女性スキルはそんなに高くないぞ、というか結婚とかハードモードクリア出来る気がしねぇ。
よし、もったいないが!誤解を解こう!
いや、待てよ、コレを逃したら…俺は…
いやいやいやいや…だから誤解なんだ、そうだよ!
いやしかし、だがしかし。
頭の中をグルグルと巡る想いにパンクしそうな俺。
「な、なぁユウ。私は…な…その…まだ…あ…あ……うまく……いや…やれるか…その…」
「…。」
(大丈夫だよルビィ。ユウがなんとかしてくれるよ、おめでとう幸せになってね。子供は何人予定?)
サラサラ筆談しながらルビィの頭を撫でるネオン。
こりゃあかん。
暴走状態の2人を止めよう!そうしよう!よし、決めた!
俺は結婚をやめるぞルビィィィyyyyy!!!!
「あのー…。2人とも良いですか?」
「…。」
「は、はい!」
期待に満ちた瞳で疑う事無く俺を見つめる2人。純粋無垢なそんな瞳に正直耐えられない。
俺は元の世界の看病の仕方、プロポーズの意味は無かった事をやんわりと伝えた。
ネオンはガッカリした顔をしていたが、ルビィはホッとした顔でベッドに潜っていった、少し残念そうだったのは気のせいって事にしておこう。
ともあれ、文化の違いは恐ろしい。
意識していない何気ない行動で人生決まるのは勘弁だ。
翌日2人とも、いつも通りになって安心した。
ルビィはさっそく酒を飲んでいたが元気そうなので、特に止めはしなかった。