今日の1ページ ~青春~
今日も1日は過ぎて行く。
なんとなく、過ぎて行く。
「これから部活じゃん」
「それなー」
こうして私と瑠璃は部活へ向かう。毎日同じ会話を繰り返していることなんて、全然気にしていない。
「お願いします」
「お願いします」
体育館の入り口で声を揃え、早足で荷物を置く。
「こんにちはー」
「ああ!こんにちわ!」
先輩はいつも元気に挨拶を返してくれる。
いつも通りの部活が始まる。
瑠璃は生まれつきスポーツに恵まれている。
といっても、きっと大人たちは「努力の量が違う」などと言うのだろうけど、私とは根本的な何かが違うのだろう。
それに比べて私は何も出来ない。学年が同じなのだから入部した時期も同じはずなのに、瑠璃はどんどん進んで行ってしまって、今にも追いつけないところまで行ってしまいそうだ。
私は瑠璃が大好きだ。
私にはないいろいろなものを持っている。
そんな瑠璃がどんどん遠くへ行ってしまうのを目の当たりにして、内心とても焦っている。なんて誰にも言えない。
「ありがとうございましたー」
「ありがとうございましたー」
声を揃え、礼をする。部活終了の挨拶だ。
「麻希ーかえろー」
「おーう」
はたから見たら素っ気ない会話でも、長年一緒にいた私たちは通じ合える。自慢の親友だ。
汗臭い身体を気にすることもなく、気怠さと少しの解放感に包まれながら学校を後にする。いつもの道を歩く歩く歩く。
犬の話、学祭の話。くだらない会話を時間を気にせずに弾ませることができるのは、家の遠い生徒の特権だ。
「麻希、あのさ」
「んー?」
「最近部活どう?好き?」
「まあまあかな。」
「そっか」
「瑠璃は?」
「あたしもまあまあ。」
「だよねー」
きっとほかの部員に尋ねても、同じような答えが帰ってくる。
「でも」
瑠璃が遠くを見つめて口を開く
「頑張ろうと思えるようになってきたかな」
「そっか」
「うん」
瑠璃は続ける。
「あたしね、正直、人間関係とかもうめんどくさいじゃん。でもバレーはやりたいから。誰にもなにも言わせないくらいうまくなりたいんだよね」
瑠璃らしい。負けず嫌いの瑠璃らしい答えだった。
「なんだよそんな真面目にー」
「うるさいなーもう」
顔を見あわせて、声を上げて笑う。
「瑠璃ががんばってるとこ好きだよ。私も部活めんどくさいとかいうけど、なんだかんだ本気になってる。」
きっと追いつけないかもしれない。途中で投げたしそうになるかもしれない。でも、私は瑠璃を応援するよ。そう気持ちを込めて。
「がんばろうね」