高校ヤンキー列伝 番外編 満員電車チョップ事件
私のお友達
なおと君やまさし君
私も含めて
おバカトリオが繰り広げる
ドタバタ
で ございます
高校二年のある日の出来事
私 他の高校にも
友達 多かったんです
大概は
街でケンカして
仲良くなった
という奴ばかりなんですが
その中でも
なおと君とは
家もわりと近く
よく遊んでいました
なかなか
面白いやつで
その当時
題名は忘れましたが
スパイ映画で
靴にナイフが仕込んであり
踵を蹴ると
爪先から
ナイフが飛び出す
というシーンが
ございました
その映画を見まして
いたく感動した
なおと君
自分の靴に
一生懸命
細工をいたしまして
ナイフ
仕込んだわけです
しかし
如何せん
高校生
しかも
おバカな不良高校生のする事ですから
踵を蹴れば
爪先から飛び出す
などという
高度な細工は到底不可能
なんとか
靴底のゴムを削りまして
無理やり ナイフ
仕込んだ
というか
嵌め込んだわけです
ある時
私となおと君
駅の近くを歩いておりましたら
コラッ
なおと
ええとこで会ったな
今日こそ殺したる
という品のない大声
見ますと
4人のヤンキー野郎
おい なおと
あいつら誰やねん
(またかいとちょっとうんざりの私)
中学の頃から敵対しとる学校の奴やわ
うっとおしい奴やねん
仕方ないの~
いっちょ
叩き殺すかい
(ポケットの中でメリケン握りしめた私)
おい なおと
右側のでかいの
俺が潰すから
お前は真ん中やれ
後二人は 出たとこ勝負や
いくで
まて ケンタ
ちょっと待ってくれ
おぅ
お前ら
ちょっとだけ待て
用意あんねん
(4人組に向けて大声でタイムを要求するなおと君)
と 言ったと思うと
なおと君
歩道の車止めに
座り込みまして
靴を脱いで
何やら
ゴソゴソ始めました
おい・・・
なおとよ
なんで靴脱ぐん?
臭い靴下
あいつらに食わそう
っちゅう作戦か?
それとも
水虫痒いん?
(唖然とする私)
さすがに
ケンカの直前に
相手の前で靴を脱ぐやつは
見た事がございません
相手のヤンキー4人組も
唖然として
なおと君の不思議な行動
見ております
靴を脱ぎ
なにやら
靴底をゴソゴソしておりました
なおと君
よっしゃ
もういけるで
お前ら
待たせて悪かったな
(ちゃんと謝る律儀ななおと君)
見ましたら
靴の爪先から
ナイフが出ております
なおと・・・
それ 何?
カッコええやろ
スパイみたいやろ
これで
蹴りまくったんねん
今日こそ殺したんで~
まぁ・・・ええけど
靴に仕込む意味わからんわ
手に持った方がよくね?
コラァ
クソなおと
下らん事
ごちゃごちゃやりやがって
やかましいんじゃ
お前ら全員
スパイナイフの餌食じゃ
刺し殺したら
ププッ
スパイナイフって・・・
やめてくれ なおと
ププッ
笑かさんといて
プププッ
(腹を抱えて笑う私)
おりゃ~
必殺の蹴りをくらわんかい~
ププッ
必殺の蹴りって・・・
ププッ
それ
普通の果物ナイフとちゃうん?
私が大笑いしております間に
靴の爪先からの果物ナイフ
ビュンビュン
振り回しながら
蹴りをいれ続ける
なおと君
とにかく
4人組に向かって
蹴りをいれまくっております
さすがにアホたれ
4人組
ビビって逃げ回ります
この場合
どうやら
手にナイフを持って
振り回すより
相手に与える恐怖
大きいようで
アホたれ4人組も
いっぱしのヤンキー
ですから
ナイフくらいは
慣れていると思うんですが
かなり
ビビっておる様子
なかなかええやないか
なおと
アホども めっちゃビビってんで
やったれやったれ
わははは
(のんびりと高見の見物を決め込んではしゃぐ私)
おお前ら はぁはぁ
逃げんな ふぅふぅ
おおとなしぃ
はぁはぁ
スパイナイフの へぇへぇ
餌食に はぁはぁ
なならんかい
(蹴り回って息の上がったなおと君)
なおと
もう終わりか
えらい息上がってんで
ヘロヘロやないか
わははは
タバコ 止めた方がよくないか
(おもしろがる私)
ちょ ちょっとタンマ
休憩や
はぁはぁ
(スタミナ切れのなおと君)
ヘタレなおとが
勝手に踊って
勝手に沈没しやがったで~
アホは仕方ないの~
今日のとこは許しといたるわい
今度会ったら殺すから覚えとけ ボケッ
(捨てゼリフを残して去っていく4人組)
おいおい
なおとよ
あいつら 帰っていったで
なんやねん あいつら
今やったら
お前はヘロヘロで
座りこんどるし
後は俺一人やんか
普通はかかってくる場面ちゃうか
ま 俺は簡単にはやられんけどな
(鼻っ柱の強い私)
あいつらな
ええカッコしとるけど
大人数でしかケンカ
ようせんねん
ヘタレやからな
今かて
なんやかや言うても
俺はナイフ持っとるし
お前かておるやん
結局ビビってんねん
おもろな
俺様のメガトンパンチ
見せれんかったやんけ
お前のスパイナイフだけやな
活躍したの
ププッ
カッコええやろ
スパイナイフ
めっちゃ苦労してん
ププッ
ええから
もうナイフしまえよ
ププッ
みんな見てんで
恥ずかしいやんけ
プププッ
そんな 愉快な
なおと君です
ある時
なおと君と
なおと君のお友達の
まさし君と
私の三人で
なおと君の家で
夜中に
お酒飲んで遊んでおりまして
そのまま泊まって
翌朝
おい
いつの間にか朝やん
よう寝たな~
お前ら 腹減ってないか?
(かなりの空腹を覚えている私)
なんか食いたいな
味噌汁と焼き魚がええな
(オヤジっぽいまさし君)
あのな
ケンタ
まさしも聞いてくれ
この前のアホたれ
おったやろ
ほら 駅前の4人組
ああ
スパイナイフ事件な
なになに?
スパイナイフ事件ってなに?
(興味津々のまさし君)
あとで教えたるわ
笑えるで
ところで
あのアホたれがどうかしたんか?
いやな
ちょうど今三人おるからな
いっちょあいつらの学校
乗り込んだろか
思てな
お前な
三人って
学校乗り込んだら
ヤンキー全員出てくるんとちゃうんかい
(痛いのはきらいな私)
そんなもん
この三人ならいけるわい
(後先を考えないおバカななおと君)
俺 行ってええで
相手何人でも平気やで
(さすがになおと君の友達だけあっておバカなまさし君)
まあな~
要は駆け引きやからな
アホどもかて校内で大暴れはできんやろうしな
少人数で行って
俺らの根性
見せつけたら
名前も売れるしな
チャンスかもやで
行ったるかい
(損得勘定で策謀を練るずるい私)
よっしゃ
行ったるかい
なおと
スパイナイフは
やめとけよ
だから
スパイナイフってなに?
ここで
景気づけのため
まさし君に
スパイナイフ事件の顛末を
お話しいたしまして
二人で大笑いいたしました後
無謀にもたった三人で
敵対校に乗り込もうという
バカさ加減
私 なおと君 まさし君
でございます
じゃ行くかい
ケンタ
お前の単車で
サンケツして行こや
(サンケツというのは三人乗りの事です)
俺の単車
この前転けて
オイルパンに穴開いてん
今入院中やで
(修理に出しているのを入院と言いました)
え~
なんやねん
単車なかったら
行かれへんやん
(電車という移動手段を知らないまさし君)
仕方ないな~
俺の単車で行く?
あほか
なおとの単車
モンキーやんか
サンケツであんな遠くまで無理やて
だいたい
モンキーでサンケツする事自体が無茶やな
(いつでも冷静な私)
どないすんねんな
よう歩かんで
(やはり電車を知らないまさし君)
電車でええやんか
30分かからんで
(常識人の私)
そうやな
電車やな
けど木刀とか持っていけれへんで
(準常識人のなおと君)
向こう着いたら
なんか調達しよや
なんなとあるやろ
(行き当たりばったりにもほどがあるまさし君)
とにかく
俺にはスパイナイフがあるから
木刀もバットもいらん
(スパイナイフ靴を履く気満々のなおと君)
俺もメリケンあるからえ~わ
まさしだけやな
なおと
お前んちに何かないか?
ん~
出刃包丁なら・・・
やめとけやめとけ
ヤバすぎやて
(やはり常識人の私)
俺 出刃包丁でもええけどな
(マジで答える恐ろしいまさし君)
あかんて
お前は犯罪者か
傘でも持て 傘でも
仕方ないな~
傘にしとくわ
途中なんか探すし
そんなこんなで
話しもまとまりまして
三人で
駅へと向かったわけです
しかし
なにぶん
時間が悪うございました
ちょうど
朝のラッシュ時
通勤 通学の時間
でして
駅も電車も満員
駅員さん
詰め込むために
乗客の背中
押しております
さて
ホームで
おいケンタ
こんなん
乗れんで
もう帰ろや~
単車直ってから
出直そや
(諦めのいいまさし君)
アホか
切符まで買うて
やめれるかい
しかし
まいったな~
私 キョロキョロと
周りを見回しまして
思案しておりましたところ
いいアイデア
浮かびました
あの当時の電車
エアコンのない車両も多く
季節は秋とは言え
まだまだ残暑も厳しい上に
満員ですから
電車の窓
全て全開になっております
おい
お前ら
俺についてこい
そう言いまして 私
手近な窓から
侵入
試みたわけです
はいは~い
緊急車両が通りまぁす
皆さん
ちょっと道 譲りましょうね
助け合いですよ
コラッ
おっさん
同じ日本人同士
譲り合いの心
持たんかい
ボケ アホ カス
(私の誠意溢れるお声かけ)
お~ ケンタ
やるやないか
入りよったで
じゃ 次俺な
ゴラッ
おのれら
ちょっとどかんかい
俺様が通るんじゃい
(ただの無法者のまさし君)
よっしゃ
俺も行くで
どけどけ~
邪魔すると
スパイナイフが
唸るで~
今 出せんけど・・・
最後のなおと君
窓から入ろうてしましたところ
なんと
正義感に燃えた
オヤジが一人
なおと君の足にすがり付き
引っ張り始めました
こら お前ら
なんちゅう事すんねん
みんなの迷惑や
ちゃんとドアから乗らんかい
(波平さんばりのハゲ頭を光らせて怒るじじぃ)
なおと君
足にすがりつかれて
体半分 車内に入った状態で
立ち往生して
もがいております
友達の一大事
でございます
義を見てせざるは
勇なきなり
と申します
仁義 礼節 愛 正義
でございます
まさし君
車内から
なおと君の腕を引っ張ります
コラッ
タコ親父
離さんかい
ドタマ かち割んど
(友達思いの優しいまさし君)
私も負けてはおれません
ハゲ親父の頭めがけて
怒りの空手チョップ
食らわします
コラッ おっさん
チョップ チョップ
これでも食らえ
チョップ チョップ
(思い切りハゲ頭に手刀を繰り出す私)
痛い痛い痛い
コラッ 青木(なおと君の名字)
やめんか
こいつらにもやめさせろ
え?
青木?
このハゲ・・・誰?
(戸惑って一瞬チョップを繰り出す手が鈍る私)
あかんケンタ
あかんあかん
やめてくれ
先公やねん
こいつ俺の学校の生活指導や
頼むわ
これは非常にまずい
私とまさし君
満員の乗客に紛れまして
ゴソゴソと
別の車両へと
逃げて行ったわけでございます
その後
なおと君
先生にて
車外へと引きづり戻されまして
見事
停学 と相成りました
もちろん
当日の 他校への殴り込み
未遂
とあいなりました
これこそ
満員電車チョップ事件
として
私達の間で
後々まで語り継がれる事件の
真相でございます
えっ?
殴り込み ですか
それはまた別の機会にお話し
いたしましょう
若い活力溢れる
青春のひとこま
でございました
高校ヤンキー列伝 番外編でした
このシリーズ
まだまだ 書いていきたいと思っております