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第一話 シェナローゼ・リーノ・レンベル

まだまだR15はないと思います。

保険にはしないつもりでいきますがまだまだです。


…最後まで読んでいただけると恐縮の限りです。

 



 突然だが、私の話をしよう。


  あまりにも突飛な体験をしている、私の話を。


  まず私という人物を語るならば、もうひと世紀前と、もうひとつの世界のことについて話さなければならない。私には、もうひとつの人生があった。地球という世界の中の日本という国で生きた、少女の人生が。


  それは記憶かもしれないし、知識かもしれないし、単なる思い込み、勘違いかもしれない。更にいうなら多重人格の末の病気かも。


  しかし、幼児の戯言と片付けるにはあまりにも膨大な記憶に知識、である。


  人文科学、社会科学、自然科学、医学 医療 体育、家制…挙げたらキリが無いが、異常な概念の多さだ。───────この世界にはない、概念の。



  あちら(日本)での私は、十八歳の高校生だった。正確には卒業後までの記憶(知識より記憶と言ったほうがしっくりくるので以後記憶と仮定する)だから、まだ高校生といえたかは分からないが。


  そこそこ幸せな人生を送っていた。


  母子家庭ではあったが貧乏というわけでもなく、普通の中流家庭。学校では成績も首席はキープしていたし、容姿は可もなく不可もなく普通。そのおかげか恋人はひとりいたし、バイトではしごかれたけど対人関係も悪くなかった。合間の時間にら趣味に没頭できた。


 うん。そこそこ、というより、本当にのんびりとした幸せな人生だった。


  しかし、そこから先の記憶はない。


  私はその時点で死んでしまったのか、はたまた事故か病気かで植物状態にあるのか。

 確かめようもないので、とりあえずあちらでの私についての説明はこの程度しかできない。十八まで生きた小娘の話しか。



  では次にこちらでの私について、話そうか。

  こちらでの私は困ったことに二歳の幼児らしい。


  先ほど、あちらでの私を小娘と表記したが、こちらでは幼児だった。

  …笑えない。

  全くもって笑えない。


  冗談じゃない。

  何が悲しくてもう一度赤ちゃんからやり直さなければならないのか。しかも異世界で。最初はそんなふうに悲観したりもしたが、それも半年までだ。生まれてから一度も泣かなかった私は、それはそれは不気味がられた。 まあ、当然の反応だろう。


  私だってしかめっ面の赤ん坊なんか生まれたらしばき倒してでも泣かせる。


  その時はまだ混乱と意地があったからか、絶対泣かなかった。情緒不安定になっても、異世界の小娘のプライドが邪魔して泣けなかった。…折れず育てていた両親の理性に感激するばかりだ。


  だがそんな生活も勿論長くは続かず。不気味な赤ん坊は、どこか病気なのではと、父が心配し医者をよばせて調べられた。


  (再度)生まれてから、6ヶ月と2日のことである。これはまずいとさすがに焦った私は、泣いた。医者相手におじさん怖い、と泣いた。もしこのまま捨てられでもすれば生きていけぬと思い直し、プライドなんかかなぐり捨てて、それはもう幼児らしく泣いた。


  父は不思議がり、しかしどこか安心した様子で私を宥め、医者は「おっおじさ⁉」と変な方向で固まっていた。後から私と一緒に父に慰められていた。

  まぁ、そんなこんなで、二歳児の私は異世界でなんとか生きている。


  (ちなみに医者は若くて茶髪オールバックの整った顔立ちの人物だった。断じておじさんではない。彼の名誉の為、一応ここに記しておく)









 ─────────────……


 



 そして四歳を迎えた今現在、はいはいから二足歩行ができるようになり。言葉もたどたどしいながら喋れるようになった。


  いつも私の隣にいる乳母のメランダは、かなりの美人さんで優しくて気立ての良い人である。白い布で一纏めにした髪からは、いつでも石鹸の爽やかな香りがする。


  「…めぇ」


  「はい。なんでしょう、シェナお嬢様」


  メランダのことだ。

  初めてメランダ、と呼んだとき、幼児のお口は上手に機能してくれなかった。メアンア、と言ってしまうのだ。諦めた私はメランダのことを『めぇ』と呼ぶ事にした。メランダもにっこり笑っていたので承諾したと受け取った。


  そしてシェナ、とは私のことだ。

  最初は首をひねるばかりだったが、しばらくして自分の名前だと判った。シェナは愛称で本名は『シェナローゼ・リーノ・レンベル』というらしい。長い。レンベル公爵の愛娘、らしい。シェナは。


  「めぇ、ご本」


  「はいはい。本をお読みになりたいのですね。本当にシェナお嬢様は勤勉ですねぇ」


  そう言ってメランダは私を抱えて書庫まで連れて行ってくれた。別に抱えてもらわなくても歩けるとぐずってみるのだが、いつもメランダはにっこり笑うだけで放そうとしてくれない。過保護だ。


ハイハイしか出来ない赤子では仕方ないけど。


「はい、着きましたよ。──あら?」


  がちゃり、と大きな扉を開いた先にあるぎっしり並べられた本棚の間に赤くなびいた髪が見えた。どうやら今日は先客がいるらしい。


「これはこれは奥様、珍しいですね。書庫にいらっしゃるなど。何かお探しですか?」


  メランダが私を抱えたまま、すっと近寄ると、あちらも私達に気が付いたようで、即座に顔をしかめた。


「…特に用はないの。たまたま立ち寄っただけ。それよりメランダ、貴方まだその子供の世話をしていたの?放っておきなさい、と命じたはずだけれど」


「奥様、これは旦那様のご命令にございます。私どもは旦那様にご息女の世話を仰せつかっておりますので、これを投げ出すことなど不可能にございます。お許しくださいませ」


「…ふん。構いやしないわ。気分が悪い。もう部屋へ戻るわ。湯あみの準備を」


「かしこまりました」


  最後にこちらを一瞥すると、お母様は赤い髪を広げ出ていった。なんだったんだ。今日は一段と機嫌が悪かったな。そしてメランダ。分かってはいたけどやっぱり腹黒いな。さっきの言葉は存外に「てめえの命令なんざ聞くかぼけ。私の主は旦那様だけだわ」と言っていたようなものだろう。お母様ぷんぷんだったぞ。


  だけど上を見上げるとメランダの憐れんでいるような目が見えた。

  あれ?なんで?お母様を憐れんでるの?


  「…めぇ?」


  「っ、シェナお嬢様。申し訳ありません。…その、奥様に悪気はないので、お気になさらないであげてください。私はメイドに湯あみの準備を命じて参りますので、少々こちらでお待ちいただけますか?」


  「うん?分かった」


  「ではすぐ行って参りますね」


  メランダが静かに出ていくのを見送ってから私は先ほどのやりとりについて頭を巡らせた。お母様が私を嫌っている理由は知っている。新米のメイド同士が話していたのを聞いたから。それによると、どうやら私の容姿が原因らしい。


  お母様は真っ赤に燃えるような紅色の髪色にラベンダーのような紫色の瞳。

  お父様は深い海のような藍色の髪色に淡い湖のような水色の瞳。


  対して私は、真っ黒な髪色に真っ黒な瞳。

  そう、シェナは全く両親に似ていないのだ。顔面は、日本の時の私と比べると驚くほど整っていると思うのだが、それよりも問題は髪色に瞳らしい。



  ……そのせいで、私が一歳と二ヶ月の頃、妙な噂話が流れ出した。





問題点や違和感、良かった点など、下らないことでも構いませんのでメッセージ頂けると、泣いて喜んで土下座します…。

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