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蘇生の代償 01



『今回のは前回と見せたのを比べると、魔力を炎に変換するまでの過程が書き加えられています。ですから、発動するだけで炎を出せます。これなら皆さんでも簡単に魔法を発動出来るはずですから、やってみてください。』


そう言いながら空さんは全員にそのカードを配る。僕はそれを手に持ち、いつも通りのやり方で魔法を発動する。炎は出たが、一瞬で消えてしまった。それに加えて、疲労感が僕を襲う。


『皆さんなんだかお疲れのようですね。まぁ、自分の持つ魔力をごっそり持っていかれたから仕方ないですね。これの詳しい事については明日にします。今日はここまで。』


そう言って空さんは消える。あんた絶対わかってただろ。


そのあと移動して、いつものように昼食をとる。


昼食を摂り終えたあと、僕はいつものようにクエストルームに行く。しかし、今日は疲れているためかクエスト受ける気になれない。今日は自室でゆっくりするかな。


「あれ?今日は行かないの?」


クエストルームの前から去る時にエイミーに声をかけられる。


「今日はやめようかと思います。」

「いつも行ってるのに珍しいね。もしかして今日の授業のせいで疲れちゃったの?」


エイミーは笑いながら言う。


「まあ、そんな感じですね。」

「うーん、じゃあちょっと付き合ってよ。」

「今日は自室でゆっくりしようかと...。」

「ついてきてくれるだけでいいから。それくらいいいでしょ?」


たぶん、エイミーの中では僕が付いていくのは決定事項なのだろう。仕方がないから少し付き合おう。僕は頷く。


「じゃあ、こっち来て。」


そう言いながら空間転移装置の前に行き、生徒証明カードを出し、横の柱にかざす。僕もそれに続いてカードをかざす。僕が入ってしばらくたってから魔方陣が発動し、僕たちは飛ばされる。そこは何度も来たことのある街だった。


「どこに行くんですか?」

「ん?特に決めてないよ。」


付き合ってと言いながら、実は特に用事がないとはどういうことなのだろうか。


「用事がないなら、帰ります。」


僕は踵をかえす。


「ちょっと待って。確かに用事はなかったけど、ちょっと街を歩いて見たいなとか思っちゃって。でもね、一人で行くのはあれだし、一緒にいくの頼めるのハルトぐらいしか居ないしから。」


あたふたしていて、何言っているのか分からなかったが、大体のことは分かった。


「僕はただの道連れですか...。」

「う、うん。そんな感じ。」


僕はやれやれと思いながら彼女の所に戻る。


「それじゃあ、少し歩こう。」

「そうですね。」


僕たちは無言でしばらく歩く。


「そういえばさ。何でそんな口調なの?」

「くせ?だと思います。」

「せっかく友達というかある程度仲良くなったのにさ、何となくいやだっていうか。タメ口みたいなの出来ないの?」


しばらく考える。別にタメ口でも悪くないと思う。どちらかという、とそっちの方が距離が近くなったような感じがしていい気がする。しかし、今までの自分のイメージと言うものが変わるのにも抵抗があるし、そもそもすぐ変えられるようなものなのか。挑戦してみないと始まらないし...


「おーい。大丈夫?」

「はい、大丈夫です。」


エイミーが僕の顔を覗きこみ、そして笑いを抑えられなかったのか、クスクス笑いだした。何かおかしなものでも付いているのだろうか?


「だって、あまりにも真面目に考えるからさ。」


そう言ってエイミーはまた僕の顔を覗きこむ。


「んー。よく見るとハルトって結構可愛い顔してるよね。」


そんなことを言われるとは心外だ。男に言うなら、普通はかっこいいとかにして欲しい。


「ごめんごめん。怒っちゃった?」

「別に怒ってない。」


それから僕たちはまた無言で歩く。隣のエイミーはすごく楽しそうにしている。


「あれ見て!ハルトに似てない?」

「似てない。」

「そんなことないさ。君は僕で僕は君だよ。」


エイミーは変な顔のロバ?のぬいぐるみを使って言う。僕の真似だろうか?全然似てない。エイミーから見たら僕はかわいいはずだから、こんなブサロバが僕なわけがない。周りを見るといっぱいぬいぐるみが置いてあった。こんなところに居ては、手当たり次第人形を取って僕に似ているとか言い出すに違いない。だから、僕は急いでここから去る事にする。


「ハルト、ちょっと待って...きゃっ。」


エイミーの声がしたので振り替えると、エイミーがその場にぺたんと座り込んでいる。そして、男性がその場に座り込んでいるエイミーをすごい形相で見ている。その男は舌打ちをしその場から去る。たぶんエイミーがその男にぶつかったのだろう。


「エイミー大丈夫?」


反応がない。肩をそっと叩くとやっと反応してくれた。


「えっ、あっ、ごめなさい。」


少し笑顔がぎこちない。急にエイミーが自分の頬を叩く。


「大丈夫。だから、はい。」


そう言いながら手を出し、僕はそれを引いてエイミーを立ち上がらせて、そのまま僕らは静止する。


「ふむ、ハルト少年個々で何をしているのだ?」


振り替えるとシンシア先輩がいた。僕たちは急いで離れる。


「そういうシンシア先輩こそ何をしているですか?」

「ここに用がある。」


そう言ってぬいぐるみがたくさん置いてあった店を指差す。何の用事があるのかと思っていると、シンシア先輩は手に持っていたぬいぐるみを見せてくれた。


「ちょっと破けてしまってここで治して貰うんだ。」


見せてくれた傷は小さく、少し綿が飛び出ているだけで自分でも直せそうだ。だが、その事をぬいぐるみをいとおしそうに見つめる先輩に言うことはできなかった。


「まあ、ハルトも遅くなる前に帰った方がいい。互いを見つめ合うくらいのこと道の真ん中でしなくても出来るだろう。」


そういい、シンシア先輩は店に入っていく。


「ハルト、帰ろう。」

「うん、そうだね。」


変な空気になったし、だいぶ遅くなってしまったから僕らは学園に帰る事にした。


「また、誘ったら付き合ってくれる?」


学園に着いてすぐエイミーがそういう。


「もちろん。」


僕はそう答える。


「じゃあ、また明日。」

「また明日。」


僕たちは別れる。


「私、今日みたいな感じのしゃべり方のハルトの方が好きだよ。」


そんなことをエイミーは後ろを振り返って言う。僕は、振り返らずに手を振ってそのまま自室に戻った。



──── 森(夜) ────



私は夜の森を光で照らしながら歩く。ねっとりした空気がまとわりついてきてとても不快であるが、それでも私は森の奥へと進んでいく。奥へと進んでいくにつれて、私は空気中の魔力が段々濃くなっているのを感じとる。


さらに歩くと、私は前方に魔獣を視認する。魔獣の方もこちらに気付いたようで、ものすごいスピードで走ってくる。私は光の剣を作り上げ、それをその魔獣が走ってくる魔獣に向かって一振りする。そして、その剣から光の刃が飛び出し、その魔獣を切り裂く。切り裂かれた魔獣はその場に倒れ霧散する。私は魔獣が倒れた場所に行き、結晶を拾い上げる。


「......!?」


私は誰かに呼び掛けられた気がして後ろを振り向くが、当然ながら誰も居ない。きっと気のせいだろうと思い、拾った結晶を見る。それは魔力が濃いせいか、いつもと比べて少し大きいく感じる。


「ジェイコブ。」


私は使い魔のジェイコブを呼び出す。


「何でしょうベン様。」


そう言うと魔方陣が現れ、そこからジェイコブが飛び出す。


「これ、要るか?少し前に欲しがってたよな。」

「ベン様ありがとうございます。」


結晶を渡すと、ジェイコブはすごく喜ぶ。そして、じっくりとその結晶を観察して言った。


「いつもより少し大きいですね。」

「やはり、ジェイコブもそう思うか。」


その結晶はジェイコブから見ても少し大きいらしい。たまに魔力が濃い時に大きい結晶が取れることはある。今回もきっとそうだろうから気にすることはない。だが、魔力が濃い原因を探らなければいけない。


「それじゃあもう少し歩くから。ジェイコブは戻ってもいいよ。」

「ベン様お気をつけて、それでは。」


そう言ってジェイコブは消える。そして私は森の奥の魔力が強いと思われる方向へと進んでいく。しばらく歩くと他の場所とは違ってとても魔力が濃い場所にたどり着く。頭上には木の葉がなく、ぽっかりと空いていて、空が見える。そこから月の光りが差し込み、辺りがよく見えるため、光で明かりを照らす必要は無さそうだと思い私は明かりを消す。


私はその場所のある一点から魔力が吹き出しているのを感じる。かなり勢いがあり、魔力が濃いのはこれが原因と考えられる。私はそれを塞ぐために式を組み立てて、それを魔力が吹き出している所で発動する。吹き出した魔力で蓋を作り魔力の流出を防ぐ。吹き出す魔力が強くなればそれを防ぐ蓋も強くなり、吹き出す魔力が無くなれば、消えてなくなる。とても単純な造りだ。


私は魔法がきちんと働いているのを確認してから学園がある方へ向けて歩きだす。数メートルくらいしか歩いてないが、木々の隙間から明かりが見える。森の奥に進んでいたつもりが、戻ってきてしまっていたらしい。だが、学園からあんなに近い所で魔力が吹き出しているのは不思議である。今までこのようなことを何回か経験したが、全て森の奥の方で起こっていた。

それに加えとても小規模であり、処置をしなくてもすぐに収まった。原因をしばらく考えたが分からなかったので、そのまま自室に戻ることにした。



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