過ぎていく日々
『マジックカードは魔力を扱える人が魔法を手軽に扱うために作ったものです。普通私たちが魔法を使うときは頭の中で術式を組み立てないと行けませんが、これを使えばバカでも使えます。』
僕は今授業を受けている。
『この方法がいつから使われはじめていたのかの記述はどこにも残っていませんが、魔法が使われ始めたころから使われていたと考えられています。』
今は魔法の術式設計の勉強をしている。
『初めてのマジックカードの原型と言われているのはこれです。』
そういって1切れの紙を取り出した。その紙に何かが書かれている。
『ここにあるのは炎を表した記号です。これに燃える具体的なイメージと魔力を注ぎ込むと炎が発生します。』
そう言ってその紙を空さんは燃やす。
『このように、この記号を使ってマジックカードは作られています。記号やイメージなども、魔力を持つ者にとっては現実に影響を及ぼす力となります。今日はここまでにしておきます。』
そう言い空さんは消えた。
今日はこれで解散である。僕は立ち上がりエイミーとリオと中庭に行くそして昼食を取る。これはもう既に習慣になっている。
「今日の授業は面白かったね。」
そうエイミーは言う。
「俺はいつも通りのつまらない授業だったけど。」
とリオが返す。
「僕は...、おもしろかったですね。」
「そうでしょ。あれって、自分の考えた事を現実にすることが出来るってことだよね。」
「ハルトはまたエイミーの味方かよ。」
「単純におもしろいと思っただけですよ。」
僕も会話に加わって昼食をとる。やっぱり一緒に食べる人がいた方が食事も美味しくなるし楽しいだろう。
食後はクエストを受けるためにクエストルームに行く。
「受付さん、カード支給ありのスライム狩りでお願いします。」
クエストというのは生徒への課題のようなもので、それを終えると報酬としてAPが貰える。スライム狩りって言うのはその一番簡単なクエストである。スライムは分裂するらしく、頻繁に狩らないといけないらしい。だから基本的にいつでも受けられるクエストである。
支給ありっていうのは、ある程度のマジックカードが支給されるもので、クエストが終わると使っていない分は返さないといけないが、自分の出費0でクエストに出られるシステムである。その代わりに報酬は少なめである。僕は自分のカードホルダーを見る。きちんとパンが2個あることを確認する。その後僕は支給のカードを受けとり魔方陣に入りクエストを開始する。
森へ着いたらそのまま進んでいく。しばらくするとスライムを確認することができる。炎のカードを使いそれで作った炎をスライムにぶつける。するとスライムが居たところにはスライムの結晶が残る。これを5個集めるのだ。
その後僕は進んでいき川にたどり着く。その川の上流に向かって歩くのだ。すると大きな木のある場所にたどり着ける。そこの根本に少女が居ることを確認する。僕がそこでその少女の肩を軽く叩くと、少女は目をさます。
「おはよう。」
その少女は僕を方を向き、少しだけ笑ってくれる。僕はそれをみてホッとする。僕はカードホルダーから2個パンを取り出して、その1つを少女に渡す。そしてそのパンを二人で食べるのだ。
ゆったりとした時間が過ぎていく。急に少女が自分の方に近づいてきた。
「どうかしたのですか。」
僕はそう聞く。少女は何も言わずに僕の頬に手を触れさせる。その手はひんやりしていて少し気持ちいい。そう思っているとき、何を考えたのか急に僕は頬を引っ張ってきた。
「痛い。」
僕がそう言うとその少女は手を離す。僕も仕返しをしてやろうと思ったが、頬を引っ張るのは少し気が引ける。代わりに手握ってゴリゴリしてやった。
少女はあわてて手を引き、涙目になりながら上目遣いでこちらを見る。手加減したはずなんだけど、そこまで痛かったかな?僕はそう思いながらパンを食べる。
もうじき暗くなるだろう。僕は立ち上がり少女に別れを告げる。そして、カードホルダーの中から帰還用のカードを取り出し念じる。次の瞬間僕は校舎の中のクエストルームに戻っている。
「お疲れ様でした。」
受付の人が挨拶してくる。僕はその人にスライムの結晶を5つ渡し、APをもらう。APが増えたことを確認した僕はクエストルームからでる。
「今日もお疲れ様。」
アイリーン先輩が声をかけてきた。
「アイリーン先輩もクエストお疲れ様です。」
「いや、今日は私はクエストいってないの。」
「えっ、そうなんですか?」
僕たちは会話を続ける。
「うんそう。それじゃあこれからいつもの所に行かない?」
「いいですね。」
そして、僕とアイリーン先輩はいつもの店へ行く。店に行きテーブルの所にアイリーン先輩と座る。そして、アイリーン先輩と今日あった事を一緒に話し合って楽しむ。
「そういえば、いつも先輩を見かけないと思いましたけど、クエストに行ってたんですね。」
「その事はごめんね。言ってた方がよかったわね。」
「別に大丈夫です。楽しいから一緒に居たいと思って探しただけですから。」
そんな会話をして僕は楽しむ。しばらくし、グラスが空になったので、僕たちは外に出る。上を見上げそこにある月を見て、僕はあの夜の事を思い出す。どうして、あの森の中に居たのだろうか?僕を刺したあの少女は誰なのだろうか。そう思ったところで確かめようもない。それに、確かめたところで意味なんて無いのかも知れない。
「ハルト、どうしたの?」
「少し考え事をしていました。」
僕はそう言いながら、過ごして先の方に進んでいったアイリーン先輩に少し駆け足で追いつく。
あの夜からだいぶ経ち、今は自分なりに充実した日々を送っている。こんな日々がこれからも続いていくのだろうか?