学園生活初日
僕は目さます。辺りはまだ薄暗いが、僕は体を起こし顔を洗う。
僕は朝食を作ろうと思ったが、この部屋に朝食を作れるような設備は何もない。僕は辺りを見渡すが、ベッドと紙で出来たが1箱があるのみで他には何もない。
僕は仕方なく学校に行く準備をする。いつも持っておく物が書いている紙を空さんから貰ったことを思い出し、それをポケットから取り出す。
『準備すべき物
○生徒証明カード
○カードホルダー(箱に入っています。)』
紙にはそうかかれていた。僕は箱を手元に引き寄せ中を除き見て、カードホルダーらしき物を取り出す。
トランプよりも少し大きいくらいの名刺入れのようなものだった。僕はそれをポケットに入れる。
学校に行く準備万端出来たがこのままではお腹が空いてたまらない。この学園には確か食堂があったはずだが、お金を持っていないため利用できない。だが、部屋でじっとしているのも暇なので、僕は寮から出る事にした。
僕は一度場所を確認しておこうと食堂に向かう。
「ハルト、おはよう。」
「おはようございます、アイリーン先輩。
」
僕は後ろから声をかけられる。振り返るとアイリーン先輩がそこに立って、僕は挨拶をかえす。
「ハルトも食堂で食べるの?」
アイリーン先輩はそう僕に訪ねる。
「お金が無いので食べられないんです。」
「ちょっと生徒証明カード見せて。」
僕はアイリーン先輩に言われた通りに生徒証明カードを渡す。
「ここに数字が書いてある場所があるでしょ。これはAPといって、ここの学園内で使えるポイントよ。学園内ならこれを使って色々なものが購入出来るの。他にも近くの街くらいならこのポイントが使えて、使った分の代金は学園がお店に支払ってくれるのよ。」
アイリーン先輩は僕に生徒証明カードを返しながら言う。先輩の話によると、僕のカードに書いてあるこの数字がAPらしく、1000と表示されている。
「これでお金の心配が無くなったけど、ハルトも一緒に食べる?」
「喜んで。」
アイリーン先輩の誘いを喜んで受け、一緒に食堂に入る。
「好きなもの取って。」
僕はアイリーン先輩の言葉に頷き、料理を選ぶ。さまざまな料理があったが、僕は一番無難そうなパンと肉(ベーコン的な塩漬けとか色々されてそうなやつ)と牛乳を選ぶ。
「これにします。」
僕はそうアイリーン先輩に言う。
「じゃあ、いきましょう。ポイントならそこのゲートを通れば勝手に支払われるわ。」
そう言い彼女はゲートを通る。僕はゲートを通りポイントが減るのをしてからアイリーン先輩についていく。僕達は空いている席を見つけ座る。
「さぁ、食べて。」
僕はアイリーン先輩に促されて、肉を一口大に切って口に運ぶ。結構肉厚で美味しい。次はパンをちぎって口の中に入れる。外側は少し固いが、中はふっくらもちもちしていてとても美味しい。僕はそのあとガラスコップに入った牛乳を飲む。かなり濃厚だがしつこくなく、後味はさっぱりして美味しい。
「美味しい?」
「美味しいです。」
僕はアイリーン先輩にそう反す。
「それは良かった。」
アイリーン先輩はニコニコしながらそう言う。そんなアイリーン先輩の前には何の食事も置かれていないことに気付いた。。
「アイリーン先輩は食べなくて良かったんですか?」
僕は肉を切りながら質問する。
「それじゃあ少しだけ。」
そういいながら、僕が口に運ぼうとした肉を口に運んでいる途中で食べてしまう。
「結構美味しいね。」
彼女は肉を食べ終わり微笑みながらそう言う。
「ん?食べないの?」
「あっ、食べます。」
僕は突然の出来事過ぎてドキッとしたせいか、一瞬動きが止まってしまった。僕は残っているものをかきこむ。
「それじゃあ、もう行きますね。」
僕は何となく照れ臭くなって急いで外に出た。
─── 食堂 ───
ハルトがアイリーンをおいて急いで外に出るのを確認して、私はアイリーンに近づく。
「アイリーン食堂で食事とは珍しいな。」
私はそう彼女に声をかけ、コーヒーカップ2個を彼女と自分の前におく。
「たまにはそういう気になってもいいじゃない。」
彼女はそう言う。
「じゃあ、彼と『はい、あーん。』とかしてたのも気まぐれか?」
私がそう言うと彼女は何の前触れもなくコーヒーを口から吹き出した。そしてデーブルを拭きながらいう。
「み、みてたの?」
「うん、すごく仲良さそうだったね?」
「あ、あれはちょっとした気まぐれよ。」
「ふーん。」
アイリーンの反応が面白かったから少しからかう。そして私たちは時間が許すかぎり、他愛もない話を続けた。
─────────
僕はさっきの事を思い出しながら廊下を歩く。まさかアイリーン先輩があんな行動を取るとは思わなかったから、不意打ちをくらった気分である。
(くすくす...)
さっき僕を追い越した女子生徒が僕の顔を見て少し笑った気がした。気付くと僕は廊下で立ち止まっている。僕はさっきからそこまで面白い顔でもしていたのだろうか、自分の頬をを叩く。そうしてるうちに教室に着く。
教室にはほとんどのクラスメイトが揃って席に座っていた。
僕の隣の席はまだ空いていたが、すぐに女子生徒が入ってきて座った。
『はいはい、みなさんおはようございます。』
その声と共に空さんがいきなり現れ辺りを見渡す。
『全員揃ってますね。今日はマジックカードと呼ばれるアイテムの使い方について説明します。』
といって一枚のカードを皆に配る。
『これがマジックカードです。魔法っていうのは基本的に難しく、なかなか扱いづらい物なのですが、これを使えば、相応の魔力を持つ物なら誰でも魔法を扱うことが出来ます。』
「あわわっ。」
空さんが説明を終える前に隣の女子生徒のカードが燃え炎を放つ。
『エイミーさん、話終える前に始めないで下さい。あのように、魔力を込めると魔法が発動して魔法が発動します。魔力の込めかたですが発動って思って念じたり、自分の手から見えない力を送り込むつもりでやすると上手く行くようです。まぁ、皆さんもやってコツをつかんでください。』
空さんの説明を聞いた僕は貰ったカードに力を注そぐイメージをする。するとカードが光ったあとすぐ燃えて、そこに火の玉が現れてしばらくして消える。
『皆さん上手く行きましたね。これが基本的な攻撃魔術です。次はこれを渡します。』
そういって空さんはカードをもう1枚くばる。そこにはパンの絵が書かれていた。
『これは物を絵に変えて保存するアイテムです。いつでも取り出す事が出来ますが、使いきりです。』
僕はさっきと同じようにイメージをしながら魔力をこめる。するとカードが光って、その光の中からパンが現れる。
『購買とかで売っている物はだいたいこの状態なので、これだけは覚えてかえって下さいね。それでは次は今日渡す最後のカードです。』
渡されたカードには何も書かれていなかった。
『これはさっきと逆に中に物を保存するカードです。保存したいものにカードを向けて魔法を発動させると保存出来ます。私がこの机に要らないものを用意したので、適当に撰んで保存してみてください。』
僕は机の上にあった白いワンピースを選び手にとり、それにカードを向けて魔法を発動させる。すると、ワンピースはどんどん中に吸い込まれていき絵になった。これなら色々な物を保存する時にスペースに困らなさそうだ。
『今日はこれらを扱う練習をしてもらいます。カードはまとめて前に置いてあるので好きなだけ取って練習に使って下さい。ああそういえば、マジックカードは持ってきたカードホルダーの中に入れてくださいね。』
そう言うと空さんは消えた。たぶんそこにはいるのだろうが僕達には見えない。僕は言われた通りにカードを何枚かとって練習し、強くイメージをしなくても魔法を発動できるようになった。
『皆さんに昼になったので今日はここまでにします。最後にパンのカードを今日の昼食として渡します。』
空さんの姿は見えなかったが、そんな言葉が聞こえてきて僕達にパンのカードが配られる。その後、すぐ解散となったので、僕は昼食に誘うために前の席の男子生に声をかけてみる。しかし、男子生徒は振り返って少し会釈するだけでそのまま去ってしまった。
「よっ。」
僕は急に後ろから肩に手を置かれ振り返ると僕の隣にいた男子生徒がいた。
「あれ、ふられちゃったの?」
「違うよ、昼食に誘おうと思ったんですよ。」
僕は彼にそう言う。すると彼は僕の顔をじっと見てうなずきながら言う。
「本当に髪真っ黒だな。」
「めずらしいの?」
「たぶんな、俺は他にみたことねぇし。」
そう彼は僕に笑いながら言う。
「俺の名前はリオ。」
「僕はハルトです。」
そして、互いに自己紹介する。
「中庭で一緒にパンを食べようぜ。」
彼は僕にそう言う。それに対して僕はもちろんと答える。
僕達は中庭に行き、適当な場所に座ってパンを自分の手の上に出す。
「リオはどうやってこの学園に入ったのですか?」
「どうやってって魔法が使えて、この学園に入ることを希望すれば入れるぜ。」
「えっ、本当?」
驚いた。魔法さえ使えたら誰でも入れるらしい。
「学園長に紙を渡されなかったか?あれさえ発動できれば、書類を書いてその上に手をしばらく置くだけで手続き完了だぜ。」
「確かにやりましたね。」
ということは僕も正式な手続きを踏んでこの学園に入ったらしい。
「リオはどうして学園長に入ることにしたのですか?」
「俺は幼い時に魔法で人をケガさせたからかな。そういうハルトはどうして学園に入ったんだ?」
僕は言おうか悩んだが、別に隠すような事ではないと思い話すことにする。
「森で迷っていたところを助けてもらって、住む場所を提供してもらう代わりに学園に入ったんですよ。」
「なんで森の中にいたんだ?」
「それが記憶に無いんですよね、それ以前の記憶が無いんです。でも、全然気にしないで下さいね。」
僕はそう言いながらパンにかぶり付き、同じくリオもかぶりつく。僕たちはその後ゆったりと昼食を取る。
「リオ、今日はこれから暇ですか?」
「ごめん今日は用事あるからパスだ。」
これから学園を見て回ろうと彼を誘ったが、用事があるのならしかたない、ひとりで回ることにした。
中庭から出て適当に進む。体育館みたいな建物があったので僕は立ち止まって中を見てみることにする。中では何人かの生徒が魔法を使っていた。ひとりが魔法を放ち、もうひとりがその魔法を打ち落としたり魔法の壁を作ってそれを受け止めたりしている。そのすべてが素晴らしい物で僕はまね出来なさそうだと思った。
「何をしているの?」
集中して見ていると、急に後ろから声をかけられる。振り返ると女子生徒がいて、僕の顔をじっと見る。
「ああ、隣の席の人かぁ。」
「ハルトです。」
僕はその女子生徒に自己紹介する。
「私はエイミー、よろしくね。」
「よろしくお願いします。」
僕は軽く返す。
「さっきから何してるの?」
「上級生の魔法を見てます。」
僕が答えると彼女は僕の隣に寄ってきて窓を除きこむ。
「すごいね~。」
「すごいですね。」
「ほら、あの人の魔法かっこいいよ。」
「確かにいいですね。」
先輩たちの魔法を見て感想を言い合って楽しむ。しばらくして、突然魔法がやんだ。魔法の打ち合いが終わるらしい。するとすぐに生徒が出きて、僕はその中に見知った顔を見つける。
「ハルト、ここで何をしているの?」
とその人物は声をかけてくる。アイリーン先輩である。そして、彼女は隣にいるエイミーをチラッと見る。
「先輩たちの魔法を見ていました。」
「それで、隣にいる子はクラスメイト?」
その質問にエイミーが答える。
「エイミー、彼のクラスメイトです。」
アイリーン先輩はそれを聞いて少し考えるように自分の額に手をあてる。
「じゃあ、魔法が終わっちゃったし彼を連れていっていいかしら。」
そう言ったアイリーン先輩はエイミーの答えを聞かないまま僕をひぱっていく。
「アイリーン先輩待ってください。」
僕はアイリーン先輩に抗議するが、聞いてくれない。
そして連れてこられたあのドリンクバー。
「氷結レモン2つ」
アイリーン先輩は勝手に頼む。そのあと席に着く。
「一体どうしたんですか。」
「別に大したことじゃないのよ。単純にハルトを誘ってここに来たかっただけ。お金は私が払うから。」
「それにしても、別に生徒証明カードで呼び出してくれてもいいじゃないですか。」
「それはそうだけど...。」
彼女はなんだか不機嫌そうだなと思っているところにグラスが届く。僕はそれを飲む。口の中に入ると、シャーベット状になってそのあと口の体温で溶ける。ほのかにレモンの香りがするものいい。
「それより、あの子だれ?もしかして彼女だったり?」
「そ、そんなわけないじゃないですか。」
飲み物を味わっているときに、いきなりそんな事を言われてシャーベットを吹き出しそうになる。
「今日はじめて話したんですよ、そんなわけないじゃないですか。」
「だよね。あはは」
「そうそう。あはは...」
何だかよくわからない空気になった。訳もわからず二人で笑いあう。
「まあ、飲みましょうよアイリーン先輩。」
「そうね。」
そうやって二人で飲み干して学園に帰り、お互いの部屋に帰る。僕はその前に購買によってパンを買う。30ポイントだったがこれは高いのだろうか。僕はその買ったパンを自分の部屋で食べる。やることもないので、僕はベッドの上で横になっていたが、意外に疲れていたのかいつのまにか寝てしまった。