再度目覚め
僕はコーヒーの匂いを感じて目を覚ます。体を起こそうとするが何かでベッドに縛り付けられているのか起きられない。どうしてベッドに縛り付けられているのだろうか、昨日の記憶をふりかえる。そう、僕は狼と戦っていたのだ。
(あれは夢だったのかな?)
そう思ったが、そんなことを考えてもこの状況を解決することなんて出来ないだろう。そこで僕は体を動かせる範囲で周囲の状況を確認することにした。そこは誰かの部屋らしい、机と椅子が並んでいるだけの飾り気のない部屋であるが1つだけ例外があった。僕の隣の席に置いてあるかわいい犬のぬいぐるみである。
(何だかこちらをずっと見ているきがする...)
そんなことを考える。
「目が覚めたのか」
いきなり女性の淡々とした声が聞こえてきてひどく驚き、返事が出来ない。そして彼女は僕に質問する。
「単刀直入に聞く昨日は森で何をしていたんだ?」
彼女は僕が森の中に居たことを知っていたらしい。僕はそれに対して
「わからないです。」
と答える。
「魔獣と戦っていたではないか。何故あんな夜中に戦っていたのだ。」
「魔獣?」
「昨日お前が戦っていたではないか。」
「魔獣っていうんですかあれ。」
僕を襲ってきた狼は魔獣と言うらしい。
「それで、あそこで魔法を使ったのはお前だな?」
彼女は僕が魔法使ったのだというが、僕にそんな覚えはない。そもそも魔法って言うのはゲームか小説の中しか存在しないものである。僕は念のため質問する。
「魔法ってなんですか?」
そういうと女性は僕の頬をつねって少し怒ったように言う。
「魔法は魔法だ!お前が昨日の魔獣を倒すのに使ったあれだ。」
「魔法って魔法ですか?」
「そうだ、魔法だ。そしてお前は昨日魔法を使って魔獣を倒した。」
彼女によると僕は魔法を使って倒したらしい。
「魔法を使ったのは問題ではない。お前が使った魔法を私は見たことがない。あの魔法は何だ?」
僕は魔法なんて使えないし、言っている意味が分からなかった。
「いっている意味がわからないです。」
僕は仕方がないからそう答えた。
「本当にわからないんだな?」
彼女は諦めたようにそう言った。僕も頷く
「そういえば聞くのを忘れていた。お前は何者だ?どこから来た?」
一番大切であろう質問をされた。僕はそれに答えようとする。
「.......。」
何故か答えられない。誰でも答えられるであろう質問を僕は答えられなかったのだ。
「あっ、ああっ...。」
頭のなかをかき回されているような感覚を覚える。
目の前にあった景色も歪み混じりあい、自分が何処に居るのかも分からない。そして僕はまた意識を失った。
───女子寮2階廊下───
私の名前はアイリーン。
今日から私も第2学年に進級である。すごく嬉しいし、とてもわくわくしている。そして私は親友のシンシアの部屋に向かっているところである。初日ということでシンシアと一緒に学校に行きたくて今から誘いに行く所である。登校と言っても寮が敷地内だからほとんど意味ないんだけどね。そんな事を考えながら私は彼女の部屋に向かう。
「お前は何者だ?どこから来た?」
部屋の前に行くとシンシアの声が聞こえたが私は気にせず扉を開ける。そこには見知らぬ少年がベッドに魔法で拘束されている姿があった。彼女は何をやっているのだろうか。
「あっ、ああっ...。」
その時、少年の口からことばが発せられるが様子がおかしい。少年の顔からは血の気が引き、瞳孔は開き、目の焦点は合ってない。
私には何が起こっているのか分からなかったが、私はとっさに動いていた。シンシアの頬を叩き、そして押し倒す。その後少年を拘束していた魔法を解き、混乱している彼を抱き寄せる。彼に何があったのかはわからないがひどく震えている。
「あ、アイリーン...。ちがう、これは。」
私はそう言うシンシアを睨み付ける。するとシンシアはひどく驚き、逃げ出してしまった。私はそんなことは気にもとめず必死に少年を抱き寄せる。私はそうしなければならない、そうしなければこの少年が壊れてしまう。私はそう思ったのだ。
「ごめんね...。」
私の口から自然とこの言葉がこぼれる。そして、私は彼の震えが止まるまで彼を抱き寄せていた。